クルーズ船を起点とし総合的なエンタメを提供
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは、自社で展開されているサービスや事業概要、皆様の業務領域についてお教えください。
小出:商船三井客船は、クルーズ船「にっぽん丸」を運航している会社です。船の運航のみならず、クルーズを利用いただくお客様のホテルやレストラン、現地ツアーなど、エンターテインメントを総合的に提供しています。私は入社して長らく営業を担当した後、商品企画やマーケティングなどの業務領域にも携わるようになり現在に至ります。
清水:商船三井自体は貨物輸送を中心としたビジネスを展開しています。商船三井傘下には複数のグループ会社が存在しており、それらが展開する事業セグメントの1つとして客船事業があります。客船事業において、実際に船を運航するのは商船三井客船ですが、グループとしての成長や管理を支援しているのが商船三井です。
清水:私は2年前に経営企画部へ配属されたことを機に、商船三井客船とコミュニケーションを取りながら今後の客船事業の方向性を考える業務に従事していました。2022年4月より商船三井客船へ移ったため、今日は前職での取り組みを振り返りながらお話ししたいと思います。
平野:私は現在、三井住友カードのデータ戦略部という部署に所属しています。データ戦略部は「Custella Analytics」というキャッシュレスデータを活用した分析支援サービスを提供したり、三井住友カードの会員様に向けて企業様のプロモーションを行ったりする部署です。
ターゲットとなる「富裕層」の見直しと発掘が課題
MZ:Custella Analytics活用以前、客船事業においてどのようなマーケティング課題があったのでしょうか。
清水:グループ会社のビジネス成長を支援する立場として、商船三井では事業の将来をマクロ的な観点から予測する必要がありました。将来のマーケット像や顧客層を捉えるためのデータやアプローチ方法は常に探していましたね。
小出:元々自社でのマーケティングを10年ほどやっていたため、ある程度ターゲット顧客のイメージは持っていました。ただ「そもそも我々の考える顧客像は市場に合っているのか」「もしかすると独りよがりなのではないか」という懸念があったのも事実です。
コロナ禍の影響も少なくありません。レジャー産業が壊滅的な状況にある中、年に何度も乗船し、我々を支えてくださるお客様はいらっしゃいます。しかしながら市場がどんどん変化していく中で、従来の顧客層のみに頼ったマーケティングでは不十分だと考えたのです。
MZ:にっぽん丸のターゲット顧客は、現状としては富裕層がメインなのでしょうか。
小出:はい。ご年齢を重ねられ、時間的な余裕もあるお客様ですね。富裕層向けホテルの泊数が1.8泊程度であるのに対し、我々のクルーズは4泊程度が多く、お金とお時間の両方に自由が利くお客様が基本的なターゲットです。
とはいえ、最近では小さなお子様連れのファミリーなど、今までとは異なる属性のお客様も増えています。新たな顧客層が出現しているにもかかわらず、データで実態を掴めていないジレンマは感じていました。