自社ターゲットと重なるカード会員のキャッシュレスデータに期待
MZ:Custella Analyticsの活用に至った背景や、三井住友カードに期待した点をご教示ください。
清水:にっぽん丸の運航を商船三井客船に任せる一方、我々は10年、20年先の客船事業を見据える上で、どのマーケットを狙えば収益に繋がるかを研究していました。
清水:客船事業には様々なタイプがあります。たとえば4,000人乗りの大きな船で、1泊1万円程度のリーズナブルなタイプや、人数を絞ってラグジュアリーなサービスを提供する1泊10~20万円のタイプ。我々は後者の利用者層へのアプローチを強化していくべきだと考えました。
富裕層をターゲットとするにあたり、そもそも富裕層とは何かを深掘る必要があります。大手コンサルティング会社が出す「金融資産3,000万円以上」「同1億円以上」のような定義があり、そこに当てはまる層が現状300万人いたとします。その層を占める方の属性が、今後どのように変化するかを予測する必要がありますが、このあたりのデータを取得するのは簡単ではありません。
その点、三井住友カードさんの場合は富裕層の会員様を多く抱えていらっしゃるので、我々がターゲットとしたい層のデータ分析が可能なのではないかという期待がありました。
富裕層の若年化や店頭接客の需要が浮き彫りに
MZ:商船三井と商船三井客船の抱える課題に対し、Custella Analyticsでは具体的にどのような支援を行われたのでしょうか。
平野:清水様と小出様が抱えていらっしゃった課題は「今後客船事業をどうしていくか」という、経営に近い方ならではのマクロな課題です。まずは前段として、富裕層の定義を明確にしました。
平野:弊社には過去の時間軸のデータを保有している強みがあります。たとえば、2010年3月末時点におけるカード会員様のうち、富裕層の占めるパーセンテージや性年代の構成比などがわかるのです。2010年の構成比が2015年、2020年とどのように変化していったかを分析しつつ、オープンデータとの比較を行いました。
その結果、2020年へ近づくにつれ40・50代における富裕層の割合が増えていることがわかりました。客船市場全体でも富裕層の若年化が進んでいた一方、お2人が予測されていた通り、商船三井客船様の顧客に60・70代の富裕層が多いことは我々のデータからも見てとれたのです。40・50代の層をもっと引き込めるのではと考え、その世代に受け入れられている旅行単価帯やアプローチに関する示唆をお伝えしました。
また、年代別の旅行代理店におけるオンライン・オフライン決済の傾向分析も行いました。コロナ禍の影響から、高年齢の方の間でもオンラインでの旅行決済比率は大きく増えています。一方、決済単価が高いパッケージの場合は「対面接客(オフライン)で直接話を聞いてから予約したい」と考える方も一定数いらっしゃるようです。単価と年代、店頭とオンラインとで注力すべきポイントやアプローチが異なる可能性を、データに基づいて提示しました。