スタートアップに注目を集めるセールスツール「CxOレター」
MarkeZine編集部(以下、MZ):手紙を活用して企業のリード・商談獲得を支援する「letable」は、髙橋さんのご経験から事業化されたサービスだそうですね。はじめに、「letable」のサービス内容と、サービスが生まれた背景を教えてください。
髙橋:「letable」では、CEOやCFOなど、企業の意思決定者に対する営業用のお手紙=CxOレターの作成と発送の代行、その後のフォローアプローチまで含めて、一気通貫でサービスを提供させていただいております。
私は新卒で金融機関の営業として、株式や投資信託、保険などを含む金融商品を扱ってきました。当時のお客様には中小企業の代表者様や上場企業のCxOに該当する役員の方々などが多数おりましたが、そういった方々に対しては、ただのテレアポではお話しするお時間すらいただけません。
そこでお手紙を書き始め、電話を組み合わせてアプローチするようになると、商談化や契約につながることが増え、数字としても明らかに上がりきました。そのときの経験をもとに事業化したのが「letable」というサービスです。
MZ:CxOレターは最近特によく耳にするようになりましたが、営業手法としてトレンドになっているのでしょうか。
髙橋:金融機関では以前から実施されている方が多い印象です。ただ最近はスタートアップ界隈でCxOレターが有効だということが浸透し、インサイドセールスの施策の1つとして行われているケースが増えています。
MZ:CxOレターを内製される企業もあると思いますが、御社があえてサービスとして展開されているということは、CxOレター作成にはかなり工数がかかるということなのでしょうか。
髙橋:手間はかかりますね。また内製ではそこまで多くのパターンはつくれないため、パターン別の反応率などのデータが溜まりにくく、検証がしにくいのも事実です。我々はある程度、どんな書き方であれば数字が出るかといったデータを持っているので、企業様にとっては外注するニーズはあると思っています。
効率化が進む時代だからこそ、“手紙”が目立つアプローチに
MZ:セールス・マーケティング現場においてはツールのデジタル化が進み、さらにコロナ禍でリモートワークなども増えています。こうした状況においてもCxOレターは強みを発揮できるのでしょうか?
髙橋:私はビジネスをする上で「逆張り」という考え方が大切だと思っています。市場の流れと逆行した施策を行うことで、逆にうまくいくケースがあるということです。特に今、加速しているデジタル化の目的の一つは効率化ですが、効率化が進めば進むほど、手紙のような工数をかけた非効率なアプローチが目立ち、刺さりやすくなる側面があります。ここに、あえてアナログで施策を打つ効果はあると思います。
髙橋:今、テレアポはリモートワークの影響を受け、電話をかけても「担当者は在宅勤務です」と断られてしまうケースが多くあります。ただ、手紙は形として残るので、担当の方の机にポンと置いていただくことで、次に出社したときにご確認いただける。そのためリモートワークでも効果を発揮できるのです。
コロナ前と比較すると、出社タイミングが減ったためにレター送付後に連絡が返ってくるまでの時間が少し長くなった印象はありますが、最終的な数字としては大きく変わっていません。
CxOレターは「送るタイミング」が鍵を握る
MZ:CxOレターが向いている企業や、より効果を発揮しやすいタイミングなどはあるのでしょうか?
髙橋:スタートアップには向いていると思います。スタートアップは、資金を調達して先行投資していく段階であり、マーケティングを行いながら、アウトバウンドアプローチもどんどんしていかなければならないフェーズ。まだ実績が多くない中でアウトパウンドセールスをするとなると、つくり込まれたアプローチをする必要があります。
また、CxOレターは大手企業とも商談が取りやすく、契約まで到達しやすい手法でもあります。大手企業の導入事例はスタートアップにとって強力なマーケティング要素となるため、その開拓に一役買うことができるCxOレターが重視されてきているのではないでしょうか。
効果が出やすいタイミングとしては、アプローチ先企業に変化があったタイミングです。たとえば人事異動があったタイミング、株主構成が変わったタイミング、当該部署に新しく予算がついたタイミングなど、いろいろな変化に合わせてうまくアプローチできるといいですね。
変化をトラッキングし、タイミングよく送付できる「letable」の新プラン
MZ:タイミングに合わせて内容を変えながら送付するというのは難易度が高いことのように思います。そこに対応するために2022年5月から新プランを開始されたとのことですが、どのようなプランなのか教えてください。
髙橋:まず既存のプランである「DMプラン」は、変化のタイミングを計るのではなく、300通のCxOレターを一気に作成し送付するものです。一方、5月から始めた「カスタマイズプラン」は、お客様側で100社ほど、しっかりとアプローチをしていきたい企業リストを作成していただき、その100社の変化のタイミングを当社で一定期間トラッキングしていきます。
効果が出そうな変化のタイミングが来たら、お客様にご提案させていただき、OKであればレター作成、送付を行っていくプランです。
MZ:DMプランとカスタマイズプランの使い分けはどうするといいのでしょうか。
髙橋:DMプランは300通を一気に送付し、その中から比較的早くリアクションがあるので、1ヵ月ほどで成果につながることも珍しくありません。
カスタマイズプランは、「変化のタイミングを待つ」という都合上、商談化までのスパンが長いのですが、東証プライムに上場しているような超大手企業に絞っていきますし、レターの内容もかなりカスタマイズしていくので質は良い。超大手に限定して確度高くアプローチしたいというニーズにはかなりハマると思います。
MZ:それぞれのプランの反響率はいかがですか。
髙橋:DMプランは平均で商談化率が1.1~1.3%。300通出すと3~4件商談化しています。新プランは送付後のフォローの精度にもよりますが、10%前後は出ています。
MZ:実際に「letable」を活用して成果が出ている事例があれば教えてください。
髙橋:カスタマイズプランはこれまでベータ版として既存のお客様に展開していました。その成果の1つが、費用削減コンサル会社の事例です。年商2,000憶超の大手企業100社を選定し、経営企画部や各部門長の人事異動が確認できた際にレターを送付しました。この時単純に異動情報を書くのではなく、その方が以前いた部署なども調べられる範囲で調べ、ご提案として文面に反映しました。
3ヵ月運用させていただき、実際にCxOレターを送ったのは11通のみでしたが、3社で商談が取れ、うち1社で2,500万円のコンサルティング契約が取れました。インパクトとしてはかなり大きいと思います。
質の高いリストを作成できる理由は「目視」にあり
MZ:実際に「letable」の新プランを活用する際の流れについて、それぞれのポイントとともに教えてください。
髙橋:DMプランは最初にお客様から商材資料をいただき、アタックしたい業界や企業をヒアリングさせていただいたら、その後はリスト作成からレター作成、発送、フォローまでもまるっと当社にお任せいただくイメージです。
カスタマイズプランのほうは、先ほど申し上げた通り、100社程度の企業リストをトラッキングし、変化に応じてご提案させていただきます。DMプランと異なるのは、事前に作成していたフォーマットに、アプローチ先の変化、たとえば人事異動の内容をうまく反映させた文面に差し替えて送付する点です。
また、カスタマイズプランではレター送付後のフォローはお客様にお願いしています。というのは、カスタマイズプランのレターには作成にじっくり時間をかけているので、その後のフォローはしっかり商材説明ができるお客様側で行ったほうがいいからです。
DMプランでは、リストの質がものすごく大事です。CxOレターは1通あたりのコストがテレアポよりもかかるため、しっかり質の高いリストを作る必要があります。カスタマイズプランは、その人に刺さる1to1の文面をしっかり書き上げることが大切です。
MZ:御社ではリストの質を高めるためにどういったことをされているのでしょうか。
髙橋:業界や従業員数、年商などの条件で引っ張ってくるのが一般的なリストの作成方法ですが、それだと抽出精度は高くない。当社でリストを作成する際は、お客様のサービスが刺さりそうかどうか、1つひとつ目視で確認しています。
たとえば、シリーズAの資金調達をしている企業や、中期経営計画の資料に「DX推進」という文言が入っている企業などは、リスト作成ツールでは引っ張ってこられません。目視することでこのような企業をリストに入れられる点が、当社の強い部分です。
BtoBにおいても“カスタマイズ化”が重要に
MZ:では最後に、今後の事業展開の展望をお聞かせいただけますか。
髙橋:BtoCサービスは既にカスタマイズ化が進んでいる印象がありますが、BtoBのサービスはまだそこまで進んでいません。ところがここ最近、BtoBでもカスタマイズ化が重要視され始めていると感じます。各企業でCRMやMAツールの導入はスタンダードになっていますし、SNSやウェビナーでは、顧客との1to1での関係構築や適切な情報提供の方法などが積極的に議論されている印象です。
また、コロナの影響でデジタル化が加速したからこそ、効率化の反対側にあるカスタマイズがどうしても弱くなり、その必要性を多くの方が感じ始めたということもあると思います。その流れを汲んで今回、新しいカスタマイズプランをリリースさせていただいたという背景もありますので、変化のタイミングに応じてカスタマイズした内容を送っていけるように、サービスの質をより高め、深みのあるものにしていきたいと思います。