「退会後のつながり」を維持するには?
MZ:ターゲット層を変えることで、意識する場所はどう変わっていったのでしょう?
伊野:そうは言っても、限られた予算の中で、大規模な宣伝PRをして新規のお客様を連れてくるのも難しいです。一方で、全国には多数の店舗会員様がいらっしゃいます。まずはこの方たちに目を向けました。
以前から店舗には「辞めた後のつながりをいかに維持するか」の課題がありました。弊社は元々50年前にスイミングスクールから始まっていて、生徒をNASっ子と呼んでいます。アルバイトの面接や商談でもNASっ子だった、という話題で盛り上がることもあります。つまり、スイミングをやっていた子供たちは辞めたらさようならではなく、ある意味で辞めた後もNASのお客様という意識を持っているわけです。
フィットネスでも同様の状況にできないかと考え、その方法を模索していました。もちろん、続けてもらうための工夫は重要ですが、たとえ辞めても再び戻ってきてもらえればいいと発想を転換し、戻る先の一つとしてNAS LIVEを位置付けました。
店舗に通っている期間中はNAS LIVEを使ってなかったとしても、忙しくて行けなくなったけど家ならできるかもしれない、というようになればと考えています。
倉岡:もはや、カスタマーサクセスの話ですね。
伊野:そうですね。店舗としてもNAS LIVEの役割は非常に重要です。NAS LIVEを利用されるお客様が店舗に戻ってきていただければ、理想です。
倉岡:戻る場所がフィットネスだけじゃない、というのはいいですね。

伊野:実はこの考え方は新しいものではないんです。西日暮里店を作った際も、今日はお風呂だけ、今日は飲むだけ、たまには運動しておこう。そんなふうに店舗を使ってもらえるといいと考えていました。
倉岡:それはおもしろいですね。我々が提供しているSTORESというサービスは、実店舗を持たずにネットショップで商品を販売するいわゆるD2Cで伸びてきたのですが、そのオーナー様がオフラインに進出する流れがあります。今後はもっとオンラインとオフラインが溶け合っていくと考えています。オンラインとオフライン、どちらかではないんですよね。
フィットネス以外のコンテンツで認知と継続を
MZ:サービスは継続利用してもらうことが重要ですが、NAS LIVEではどのようにされていますか?
伊野:フィットネス以外のコンテンツが継続に一役買っていると考えています。元々はスポーツクラブに行ったことがない、NASを知らない人にサービスを認知してもらうためにフィットネス以外のコンテンツ配信を始めました。キャンプや釣りの講座をはじめ、ミニ胡蝶蘭のアレンジメント教室など幅広いジャンルで、シリーズ化したものもあります。

取り組んでみたところ、フィットネスやヨガを受講されている方の参加も多いことに気づきました。今では新規のお客様作りだけでなく、継続していただく意味でもやっています。キャンプや釣りのように、利用される皆さんが関心のあるものを見ていただいて楽しんでもらっています。
倉岡:NAS LIVEの楽しみ方の幅が広がっているのですね。
伊野:そうですね。生活の一部にしていただけているのかなと思います。日常でNAS LIVEを楽しんでいただくことが定着していくといいなと感じているところです。
倉岡:さっき仰っていた西日暮里店のような使い方ですね。
伊野:まさにそうです。今日は運動じゃなくて見るだけにしよう、興味あるから見てみたいなというように使っていただきたいです。