クリエイターから見た「優秀なマーケターの共通点」
次に、「クリエイターと協働するとき、どのようにコミュニケーションを取れば良いのか?」という質問にお答えしていきます。これに関しても、「このとおりにすれば」というフレームワークはありませんが、クリエイター側にいる私が優秀だと思うマーケターの共通点を挙げることで、何かしらのヒントを提示できればと思います。
1.クリエイターを同じ船に乗せられるか?
優秀なマーケターは、人を巻き込む力が強い。クリエイターを自分たちのプロジェクトに巻き込むときは、「一緒にこんな変化を世の中に起こしていきましょう!」などと“健全な野心”を持って、彼らのモチベーションをいかに高めるかが重要です。
そのためには、ビジネスの源流のところからきちんと説明する必要があります。クリエイターが相手であっても、企業やブランドの存在意義やビジネスの戦略を説明することは、決して無駄にはなりません。クリエイターのマインドセットとしても、ビジネスの上流から掴んでおきたいという考えがあります。でないと、短期的で枝葉末節な思考になってしまい、本質を捉えたクリエイティブにならないからです。「あなたたちの才能をいかんなく発揮することで、私たちのビジネスを勝たせてほしい」と“同じ船に乗せる”ためにも、これらは大切です。
2.絶対評価のバーを持っているか?
クリエイティブ案を評価するときの明確な判断基準、私は絶対評価のバーと呼んでいますが、これを持っているマーケターあるいはチームだと、スムーズにプロジェクトが進みます。絶対評価のバーがあると、我々がプレゼンしたときに採用か採用じゃないか、どこを修正すればいいかが、その場ですぐに決まります。反対に、絶対評価のバーを持っていないマーケターや企業の場合、プレゼンの場で議論が始まってしまい、その場で答えが出ないことがあります。
この絶対評価のバーには、思考量の差が表れると思っています。そのプロジェクトに対する思考はもちろんですが、たとえば、「どこかの企業の広告が炎上しているけどどう思う? うちならどうするだろう?」というように、日頃からの議論や思考で作っていくものだと思います。
3.質問力があるか?
前提として、クリエイターにリスペクトの心を持つことは大事です。お互いに「自分には到達できないプロフェッショナルとしての領域がある」ことを認識できていれば、「クリエイターがどれほど真剣に考えた結果の提案であるか」という前提を忘れることもないと思います。

我々がプレゼンして、その案が100点とは言えないとき、「いや、なんでこうなるんですか?」みたいな返しをされる方もいるのですが、優秀なマーケターは「どうしてこの提案に至ったのか、もう1回教えてくれますか?」「これが一番良い策だと思った理由を教えてください」という聞き方をしてくる。要するに、質問力があるんです。もちろん、クリエイターは毎回100点満点を目指してプレゼンに挑みますが、プレゼンしたものがそのまま世の中に出ることはほとんどありません。具体的なクリエイティブアイデアの余地はプロであるクリエイターに任せつつ、一緒に100点に近づけていくのがベストで、このときの議論でマーケターの質問力や思考量が見えてきます。
ここまで、マーケターがクリエイティブないしクリエイターに向き合う時の「基本姿勢」についてお話ししてきましたが、マーケター、クリエイターに共通して言えるのは、「人の気持ちや行動に変化をもたらしたい」という想いを持ち、それが「世の中にインパクトを与えていく」ということをどれだけ信じ、実現に向けての戦略や戦術、具体的なアイディアを講じられるかだと思います。そこで絶対に不可欠なのは「好奇心」です。人に興味がある、色々な事象や出来事に興味がある。その好奇心をポジティブに作用させることによって、ハッピーな未来が創造されるのだと思います。