※本記事は、2022年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』78号に掲載したものです。
テレビCMを打つ企業なら知っておきたいMMM
──MMMとは、広告など様々なマーケティング施策や環境要因などのデータを分析し、それぞれの影響度を測る分析手法だと思いますが、どのような企業に適しているのでしょうか。
現在は、テレビCMを出稿できるだけの予算を持った企業との相性が一番良いと考えています。テレビCMをはじめとしたマス広告とデジタル広告の最適配分が求められるようになっています。その中でそれぞれの施策がどの程度売上に影響を与えていたのか把握する上で、MMMは効果的です。
ただ、MMMに関するツール・サービスなどが手に取りやすくなり、MMMの民主化が進めば予算がそこまで大きくない企業でも活用できる手法になると、私は考えています。たとえば、飲食チェーンでもMMMの分析モデルを店舗単位で作り、店舗ごとに分析をかけるというようなことも将来的にはできる可能性があります。
また、テレビCMを行っていない企業でも指名検索の影響度などをMMMでモデル化できれば、十分に活用できます。
──なるほど。MMMには工数も費用もかかる分、ある程度規模の大きい企業でないと導入が難しいのが現状なのですね。
そうですね。MMMによる改善で得られる経済価値と工数のバランスです。極論ですが、年商1,000万円の企業でもMMMによる改善で10%の年商100万円UPできる場合、工数を含めた費用換算でその金額以下で行うことができれば、見合うわけです。そのため、マーケティング投資規模が大きい企業のほうが恩恵を享受しやすい構造です。
最近では、後ほどコラムで紹介しますがMeta社がオープンソースで提供するRobynなど、手ごろに扱えるMMMの分析ツールも登場しているので、少しずつ現在の流れは変わってくると思います。
──小川さんがMMMの相談を受ける際、広告主からはどのような要望が多いですか。
チャネル全体の予算の最適配分、またクリエイティブの訴求軸の検証に悩まれている方が、MMMを検討していることが多いですね。広告などに投資する金額が大きくなればなるほど、その配分を間違えるだけで大きな損失につながってしまうので、全チャネルを横断で比較できるMMMを行いたいと考えるのだと思います。
特にテレビCMを多く出稿してきた企業にとって、これまでのテレビ主体の広告が通じなくなってきているという課題は大きいと思います。デジタルにシフトしたいものの、どこまでやるべきか判断するのが難しいので。