クッキーレス時代の新指標、コンバージョンリフト
では、実際にどのような取り組みを行ったのか。ヤフー側が特に強調したのは「コンバージョンリフト」という指標の重要性だ。
「広告のゴールとしては、当然CVR(コンバージョン率)やCPA(コンバージョン単価)を追求しなければならないと考えています。ただ、これらを追っていくだけだと成果は次第に縮小し、長期的なビジネスの拡大に支障をきたしてしまいます。そのため、ヤフーでは、広告接触によるコンバージョンリフトも評価すべきだと考えており、そちらをご提案しました」(三村氏)
これまでのCVRやCPAをKPIにした広告配信だと、広告に接触しなくてもコンバージョンしていた可能性の高いユーザーへの配信も行ってしまい、本来アプローチすべき、広告接触でコンバージョンリフトを示すであろうユーザー群への配信について、見逃しが発生してしまう。
そのため、コンバージョンリフトもKPIに加えて配信最適化を行うことで、CVRとCPAを改善しながら、ミドルファネルやアッパーファネルにいるユーザー群のリーチを拡大し、長期的なビジネス拡大を支援しようというのだ。
そして、コンバージョンリフトをKPIとしたときに重要なのが「コンバージョンリフトを示すユーザー群を見つける」こと。今回の取り組みでは、これまでのコンバージョンデータからコンバージョンの見込みが高いオーディエンスカテゴリーを分析。それをもとに広告配信を実施した。
また、関連性の高いターゲットが必ずコンバージョンリフトにつながるとは限らないため、事後分析も実施。ターゲットごとにコンバージョンリフト値を計測・評価することで、3つ目の課題だったBtoBの最適なセグメント探しにもつなげた。
とにかくシンプルで、すぐに始められる
今回の取り組みの提案を受け、石井氏は「とにかくシンプルで、すぐに始められると感じた」という。
たとえば、フルファネルでの広告配信を考えたとき、ファネルごとにオーディエンスを区切って施策・コストを設計するケースや、マーケティング・ミックス・モデリングなどの分析手法を用いて最適配分を導くケースが考えられる。しかし、前者であれば全体として最適化するプランニングが難しく、後者であればモデルの精度を高めるまで安定しないといったデメリットを抱えている。
石井氏は「もちろん他の手法にもメリットはありますが、早く軌道に乗せたい場合、デメリットの影響が重くなってしまう」と話した。その中で、ヤフーが提唱するコンバージョンリフトをKPIとした広告配信は「納得のいくものだった」という。
「われわれはダイレクトレスポンス目的のプロモーションの計測はラストクリック、ブランディング目的のプロモーションの計測はコンバージョンリフトで見ています。どちらもコンバージョンに関連した指標なので、成果の要因を解釈しやすいのです。何より、すぐに始められるというのはとても大きなメリットでした」(石井氏)
石井氏が高く評価する「導入のしやすさ」は、先ほど三村氏から説明のあった「コンバージョンデータから見込みの高いオーディエンスカテゴリーを作成できる」ことが理由となっている。コンバージョンデータをもとに最適なセグメントの仮説を考えられるため、しらみつぶしに施策を展開する必要がなく、導入後すぐ軌道に乗せることができるのだ。