いつでもどこでも購入体験を ユニファイドコマースとは?
──まず、ユニファイドコマースの概要について教えてください。
ユニファイドコマースは、オンライン・オフラインに関わらずいつでもどこでも買い物体験ができる環境を提供することを指します。そのためには、たとえばECで先に決済して店頭で受け取れるサービスや、One to Oneでのレコメンド、店舗とECの在庫連動など、様々な取り組みを行う必要があります。
そして、ユニファイドコマースを実現すると、購買体験が向上して顧客のロイヤリティ化・ファン化を促進できます。さらに、在庫の統合管理なども実現できるため、残在庫ロスや販売機会ロスが減少し、環境負荷の低減やSDGsの配慮にもつながります。そして何より、売上の増加と利益の創出に貢献することができます。
──これまでも、小売の購買体験ではオムニチャネルやO2O、OMOといったキーワードが登場してきた歴史がありますが、それらのキーワードとユニファイドコマースにはどのような違いがあるのでしょうか。
ユニファイドコマースでは、オンラインとオフラインの間に違いを設けず、地続きで捉えています。たとえばOMOはオンラインがオフラインを取り込んでいくという考え方ですし、O2Oはオフラインからオンライン、もしくはオンラインからオフラインへ送客するという考え方です。これらの場合は、オンラインとオフラインは別々のものと捉えられています。
しかしユニファイドコマースは、オンライン、オフライン統合して捉えて購買体験を提供する考えです。ある意味、これまでの出てきた概念を包括しているとも言えるでしょう。
DXに取り組む企業の約8割がユニファイドコマースを認知
──御社では2022年3月、ユニファイドコマースに関する調査を行っていますね。
DXに関する取り組みを実施・検討中の企業の担当者300人に対し、ユニファイドコマースの現状を調査しました。たとえば、「ユニファイドコマースという言葉を知っていますか?」と聞いたところ、約80%の方から「ユニファイドコマースを知っている」と回答があり、約半数は「内容の詳細まで知っている」と答えていました。
また、自社でユニファイドコマースの取り組みを行っている企業は約6割となりました。これらの企業は会員・ポイント制度の共通化や実店舗とネットショップを横断した顧客行動の把握など、オンライン・オフラインで分断されてしまった情報の統合に力を入れていることもわかりました。
ユニファイドコマースを実現する上で、オンライン、オフラインを問わない一元的な在庫管理、そして一元的な顧客情報の管理は欠かせません。
今回の調査ではすでにDXに取り組んでいる企業や検討中の企業の担当者が調査対象だったため、ユニファイドコマースの考えに近い形で購買体験を提供できている企業はまだ少ないと感じています。
ユニファイドコマース実現のために必要なこと
──ユニファイドコマースを実現していく上で重要なことはなんだと思いますか。
調査で上位に挙がっていたポイント制度や会員制度の共通化はもちろんですが、在庫の統合管理も外せないポイントだと思っています。
たとえば、アパレルなどの物販の場合、店頭とECでの在庫管理が統合されている企業は少なく、進んでいても店舗の在庫情報がECにも掲載されているだけというのが現状です。
店舗の在庫情報が載っているだけでは、ECに在庫がない場合、店頭に向かわなければなりません。一方、店頭に商品がなくECへの購買を促すと、購入機会を逃してしまう可能性もあります。
オンラインとオフライン両方で自由に購買ができる体験を実現するには、情報の共有だけでなく在庫の共有もできる、これまでよりも一歩踏み込んだシステムが必要なんです。
──欲しいと思ったときに、余計なアクションをせずとも買えるのは嬉しいですね。その他にはいかがでしょうか。
取り組みが進んでいるクライアントから聞いた話で重要だと感じたのは、社内制度の整備です。たとえば、いくら在庫を統合管理できても、EC部門と店舗部門が対立していれば各部門が売上を奪い合う形になってしまうため、店舗は店舗の売上を、ECはECの売上を追ってしまいます。
そのため、部門の再編成を行い、さらには店頭でご案内しECで購入された際に店舗スタッフの評価に加点されるようにするなど、社内の仕組みを変えることで店舗・ECの両部門のスタッフがどちらで買ってもらってもいいと思ってもらえるようにすることが大切です。
ユニファイドコマースを進めていくには、システム周りの統合と組織・制度の再設計が求められると考えています。
ユニファイドコマース実現を支えるTIS MARKETING CANVAS
──在庫や顧客情報の統合管理など、ユニファイドコマース実現には様々な条件が必要なことがわかりました。御社では、TIS MARKETING CANVASの提供を通じてユニファイドコマース実現の支援をしていると思いますが、どのようなサービスなのでしょうか。
TIS MARKETING CANVASは、顧客コミュニケーションからデータ統合・利活用、そしてコマースの3つの領域をソリューション群でカバーする全社統合型マーケティング基盤です。これまで話してきた在庫連動や顧客の情報管理に関しても、オムニチャネルOMS(オーダーマネジメントシステムの略)やデータ統合利活用プラットフォームサービスを活用し実現します。
また、特定のソリューションに縛られず、最適なソリューションを組み合わせて各社にカスタマイズした形で提供できることが魅力の1つです。
マーケティングの中でもプロモーションや商品など顧客の目に見える部分に集中してしまうケースが多く見られますが、それと同じくらい物流や在庫、データ基盤などバックエンドのシステム構築が欠かせません。ここを整備すれば、プロモーションなどで得られるパフォーマンスをさらに引き上げることができます。
TISだからできる、小売企業へのサポート
──古井戸様は過去にスポーツメーカーのEC事業の構造変革に携わっていた経験もあると伺っています。事業会社のマーケター目線で見たときに、TIS MARKETING CANVASの魅力はどこにあるとお考えでしょうか。
各種ソリューションのつながりを意識できる点が一番の魅力です。事業会社にいたとき、様々なベンダーさんから提案をもらっていましたが、ソリューションについては熱心に説明してくださるものの、現在導入しているソリューションとの連携などについては説明がありませんでした。仮に機能がよくても、その後の連携につながらなければ導入・活用は進まず、全体最適も難しくなってしまいます。
一方、TISはSIerが母体ということもあり、様々なソリューション導入・活用を支援してきた実績があり、すでに導入しているソリューションとの連携やカスタマイズにも対応してきました。
TIS MARKETING CANVASも同様に、SalesForceやTealiumなど様々な企業のソリューションに対応しています。また、すでに保有しているデータとの連携なども対応可能です。この複雑化したシステムに対する対応力は、他社との差別化につながると思います。
──デジタルに関するソリューションは、新しいものが続々登場することもあり、結果その連携に苦心されている企業が多いと思います。そのような状況を打破するサポートが、TIS MARKETING CANVASであればできるわけですね。
そうですね、基本的には、いかに既存のソリューションを有機的につなぎ合わせ、商売の土台を作っていくかを提案しております。もちろん、ゼロからシステムを一斉に入れ替えられれば一番クリーンですが、現実には難しいですから。
今後はXR、メタバースなどにも対応
──最後に今後の展望について聞かせてください。
TIS MARKETING CANVASは1つのサービスやシステムではなく、TISが扱うマーケティングソリューションを統一したブランドになります。そのため今後も、扱うソリューションは変化すると思っています。しかし、軸にある「ユニファイドコマースの実現をサポートする」コンセプトからはブレません。
具体的には、近年注目を集めるXRやメタバースのサポートも検討しています。まだ実用段階まで来ているとは言えませんが、今後技術が発達していけば、いずれ購買体験にXRやメタバースが活用されることもあるでしょう。そのときもデータ連携などが必ず必要になってくると思うので、そういった取り組みにも対応できるようにしたいです。
TISの強みは、バラバラに導入してしまったソリューションを統合できる力です。今後もTIS MARKETING CANVASを通じて、様々な企業のソリューションを有機的につなげ、ユニファイドコマースの実現を支えていければと思っています。
ユニファイドコマース実現に向けて動き出したい方、現状を知りたい方におすすめ!
現在TISでは、ユニファイドコマース実現のポイントや小売業界のプロフェッショナルによるコラムなど、今後の小売業のマーケティングを考える上で役立つ情報がまとまった、TIS MARKETING CANVASのブランドサイトを展開しています。今回の記事でユニファイドコマースに関心を持った方は、ぜひご覧ください!
また、今回記事でも紹介した「ユニファイドコマースに関する調査」の詳細も同ブランドサイトで掲載しています。現在の小売業のDXに関する動向が知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。