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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MERY Z世代研究所 所長が説く「Z世代マーケティング論」

「発信する消費者」をいかに巻き込むか?Z世代攻略の鍵を握る「インフルエンシューマー」とは

情報発信は「分散型」から「散乱化」へ

 話がそれますが、私は個人的に副業でカフェ(Instagram:@tribecca_cafe)を経営しています。ここでたまに売上のベースラインがグッと上がる時がある。瞬間風速というよりは、やや低減はしつつも、平均値が前より上がる、という感覚です。その原因を調べると、たいがいマイクロインフルエンサーが登場します。その手のことに詳しいスタッフに聞くと「あの人がついに来てくれて、インスタにあげてくれた!」と言ったりしていて、そうこうしていると数日後にインスタ上で「あの人がたまに行っているカフェに行ってみたら、ついに会えました! 嬉しい!」と別の人がアップしていたりする。

 ここで言う“あの人”というのは、その界隈ではフォロワー数が多く、信頼性も高いインフルエンサーのことです。「会えるアイドル」は48人どころか数十万人規模に急増しています。

 商品やサービスを無料で提供してSNSで情報をアップしてもらう手法「ギフティング」が流行っていますが、その背景にあるのもこうした事象ですし、最近では「ギフティングする相手の質」も重要だと言われ始めています。「自社のブランドファンに、事業をドライブするほどのインフルエンサーが相当数内在している」。このことを念頭においてマーケティングする必要があります。

 インフルエンス力の高い希少なインフルエンサーの情報に耳を傾ける、という数年前の構造から、膨大なマイクロインフルエンサーとフォロワーという構造へと変化してきています。マスメディアからデジタルメディア、SNSメディア、インフルエンサー、そしてマイクロインフルエンサーへ。さらに、マイクロインフルエンサー一人ひとりの信頼性(質)への着目へ。広義の意味でのメディア論は、分散どころではない散乱化へと移ってきているのです。

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MERYを例に考える、インフルエンシューマーのコミュニティの有効性

 MERYは、ライフクリエイターとMERY MATEという2つのインフルエンシューマーコミュニティを持っています。ライフクリエイターとは、コンテンツの共創ユーザー。自分の好きな物事がすでにあり、それを探求し、SNSでも発信しているマイクロインフルエンサーたちです。中身はヨガだったり、食だったり、ライフハックだったりと様々ですが、自分のライフをクリエイトするためにコンテンツもクリエイトする人たちです。MERYのコミュニティでは、それぞれの探求ジャンルに応じて、InstagramのリールやTikTokなどの短尺動画を一緒に情報発信しています。

 また、MERY MATEは、情報発信するきっかけをMERYと一緒に作りたいと思ってくれているユーザー代表でもあります。MERYとして発信していきたいことのテーマを投げかけ、それぞれのカタチで一緒に発信してくれていて、ときにはMERY MATEがアップしてくれたコンテンツや画像を、MERYで活用させていただいたりもしています。MERYを好きでいてくれるからこそ、ともにコンテンツをつくり、情報発信をしてくれる。MERYブランドの消費と情報発信を同時にやってくれる方たちを巻き込んでいます

インフルエンシューマーを巻き込んだプランニングを

 このように、実は知らず知らず膨大に抱えている「情報発信したいと思っているブランドユーザー兼マイクロインフルエンサー」をどれだけ多く巻き込み、そのフォロワーたちを動かしていくか? がZ世代を動かすマーケティングのひとつの鍵になってきています。

 たとえば、ある企業とともに行ったキャンペーンでは、ブランドファンを募集し、商品利用をして感想や自分なりの変化を定期的にアップしてもらうアンバサダープロジェクトのようなものを実施しました。「〇〇チャレンジ」の類のキャンペーンは、やり口としては既視感がありますが、前述のとおり情報発信の行動層が少ない時代を経て、今改めて設計するとより強い効果を発揮します。募集定員はすぐに埋まり、非常に高いモチベーションの投稿が日々なされ、一つひとつの投稿の質もお金では買えない熱量のあるものとなりました。

 キャンペーン的に囲い込むのか、継続的に囲い込むのかは個々のブランドのマーケティング環境にもよりますが、「ブランドユーザー兼マイクロインフルエンサー」たる「インフルエンシューマー」を巻き込むコミュニケーション設計は、今Z世代を動かす熱い手法になっていると考えています。

 今回は、「推しマーケティング」を「インフルエンシューマー」という概念から解説してみました。好きだからこそ投資する、そして好きだからこそ発信する、さらに好きだからこそ繋がり、結果として新たな人が好きになってくれる。推しが持っている構造そのものが、企業のマーケティング活動にもそのまま派生し、転用できる環境となっています。

 次回は、「推しマーケティング」を「ブランディング」の観点から読み解いてみたいと思っています。Z世代にもっと好きになってもらう、もっと「推し」てもらうブランド作りとは? その背景や構造と秘訣について書いてみたいと思います。

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この記事の著者

斉田 裕之(サイダ ヒロユキ)

株式会社MERY 執行役員 CBO(チーフブランドオフィサー)/クリエイティブディレクター 斉田裕之

2007年に博報堂入社。2021年4月から現職。MERYの事業イノベーションとリブランディングを行いながら、同時に様々な企業のマーケティング/クリエイティブにも携わっている。新聞広告賞大賞、JAAA広告...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39511

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