仮のKPIツリーが重要なワケ
フェーズ1の取り組みを説明する際に「仮のKPIツリーを作成することが重要」と強調した酒井氏。その理由について、医者と患者の例を使って次のように説明する。
「たとえば、ある人が健康診断を受けたとします。医者が『この患者は血圧が高めだな』と判断した直後に降圧剤を処方するかといえば、そうではないでしょう。まずは『タバコは吸うか』『睡眠時間は十分確保できているか』といった質問を重ねるはずです。“科学的根拠”や“医者の経験則”に則り『普段の食生活に原因がありそうだ』とわかれば、まずは食生活に関する指導を行うのではないでしょうか」(酒井氏)
多くのビジネスパーソンは「この施策を行うことでどれだけの売上効果があるのか」など、単一の施策と成果を結びつけようとしがちだが、酒井氏は「必ずしもひとつの施策で売上が拡大することはなく、様々な要因が成果の背景にはある」と指摘。マーケターも前述の経験則を養うために、仮であってもKPIツリーの中身を運用できるレベルの粒度で、自分たちなりに考えて作ることが重要なのだという。
マーケティング施策を行う上で注視すべき「メンタル指標」
酒井氏は仮のKPIツリーにおいて、売上に影響する要因を大きく2つに分類した。それが「メンタル指標」と「フィジカル指標」だ。
フィジカル指標は、買いたい時にどれだけ買いやすい状態にあるのかを示す指標で、代表的な例が小売店舗における自社商品の採用率だ。メンタル指標は、消費者の頭の中にカテゴリーニーズが生まれた際、ロッテのブランドが候補リストに入り、競合を含めた複数のブランドリストの中から選んでもらえる確率をいかに高められるかを示す。酒井氏は「メンタル指標こそが、マーケティング施策を行う上で注視すべき重要なポイント」と語る。
では、メンタル指標を上げるために何が必要なのか。酒井氏は「知名度」と「選好性」を挙げる。ロッテでは定期的なマーケティングリサーチで認知度の変化を確認しつつ、リアルタイム性や施策との直接的な関係の見やすさを鑑みてSNSの投稿数なども参照し、知名度の測定に活用しているという。選好性については、指標がさらに分岐する。それが「カテゴリーエントリーポイント(以下、CPE)の浸透度・数」そして「パーセプションの変化」だ。
CPEの浸透度・数は、自社の社名や商品名が検索される際の複合キーワードの数で見るという。たとえば「ガーナミルクチョコレート」の場合「ガーナ バレンタイン」「ガーナ 母の日」「ガーナ クリスマス」など、検索に使われる複合キーワードの種類が多ければ多いほど、候補リストに入る頻度が上がる。また、その複合キーワードがどのくらい消費者に浸透しているかも、検索数から確認する。
パーセプションは「施策のメッセージが消費者に正確に伝わっているかどうか」を意味し、その変化をTwitterのテキスト解析で確認している。たとえば、バレンタイン施策で「手作り」をコアメッセージに据える場合、Twitter上の投稿に「手作り」というワードが並んでいるかどうかを見てパーセプションの変化を捉えるそうだ。
このように、メンタル指標の向上を目指すにあたって「SNSの投稿数」「指名検索の複合キーワード」など、複数の指標を確認しているのだという。