補完し合うGoogleとMicrosoftのミッション
Googleのミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」だ。
私がGoogleに在籍していた10年以上前は、多くのGoogle社員がこのミッションに感動し、このミッションを誇りに、より良い世界を作るために、一生懸命に働いていた。おそらく、その魂は、今のGoogleにも残っていると信じている。
今のMicrosoftのミッションは、「Our mission is to empower every person and every organization on the planet to achieve more.」(我々のミッションは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ことだ)。
実は、この2つの企業のミッションを見ていて思ったのだが、私はどちらのミッションも好きなのだ。そして、この2つのミッションは、補完し合っていて、2つで1つになっているようにも見えるのだ。
「世界中の情報を整理して、すべての人にアクセス可能にする」と私はそらんじている。情報が国家官僚や警察・公安組織などに集中すると警察国家になり、暗い世の中になる。そうではなくて、すべての情報をすべての人に届けるのは、まずもって、民主主義の基本だと考えている。Googleのミッションは、その理念としては、極めて崇高な人類史を画するものだった。
すべての情報をすべての人にアクセス可能にして、何がしたいのか? それは、もちろん、すべての人に、自律的かつ自立的に、自由に生きていく力をつけてもらって(empower every person)幸せになって欲しいのだ。
「Knowledge is Power」だと信じているし、「Intelligence is Weapon」だと思っている。すべての人に、「この地球に生まれてきて良かった」と感じて欲しい。より多くのことを成し遂げて(to achieve more)、人生の意味を充分に味わって欲しい。
だから、GoogleとMicrosoftのミッションは、私には、補完関係に見えるのだ。Googleの検索エンジンに対して、Microsoftの検索エンジン(Bing)が、きちんと互角に競争できるようになったら、すべての情報をすべての人にアクセス可能にする検索エンジンが二つできて、かつ、それぞれ、すべての人を幸せにできるように、切磋琢磨していけばいい。
Microsoftで働く理由
ユーザーは、検索エンジンに選択肢が増えたほうが嬉しいし、GoogleとMicrosoftが競い合うように、便利なサービスを世の中に提供し続けてくれれば、ユーザーや社会にとってのメリットは大きい。
だから、Microsoft Bingはチャレンジしなければならない。そこには、社会的意義があるのだ。これは、お金のためではない。これは、ビジネスのためでもない。これは、自由と民主主義のためなのだ。これは、社会のクオリティのためなのだ。そして、これは、人々の笑顔のためなのだ。
すべての人に「この地球に生まれてきて良かった」と思って欲しい。その目的のためなら、私は努力を惜しまない。だから、Microsoftに入社させてもらった。
Bloombergの「The David Rubenstein Show」で、Microsoft CEO, Satya Nadellaが「あと何年、CEOを続けたいと思っていますか?」と質問されて、次のように答えている。
「I think the thing that I feel that gives me that source of energy is really that sense of purpose of company」
(意訳: CEOを継続していけるほどのエネルギーを私に与えてくれる、その源になると感じているのは、本当に、会社のパーパス、その目的に意味を感じるかどうかなんだ。)
Microsoft CEOが、Satya Nadellaに変わってから、Microsoftが変わったという人は多い。
「Our mission is to empower every person and every organization on the planet to achieve more.」というミッションに、私は魅せられて、引き寄せられてしまったのだ。
なぜなら、私は、すべての人に、「この地球に生まれてきて良かった」と思って欲しい。それが私の生きる意味だからだ。