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リゾームマーケティングの時代

なぜ、今、Microsoftで働くのか?


 2022年8月末、日本マイクロソフト株式会社 Regional Vice President Japan, Microsoft Advertising に就任した有園雄一氏。10年以上前にGoogleに在籍していたこともある有園氏は、なぜこのタイミングでMicrosoft Advertisingにジョインしたのか? その理由を告白する。

個人情報を取り巻く危機をどう乗り越えるか?

 「我々はどんな世界に住みたいのか?(What kind of world do we want to live in?)」

 2018年のその日、Apple CEOのTim Cookは、聴衆に問いかけた。場所はブリュッセル、「第40回ICDPPC」の会場だ。ICDPPCとは「International Conference of Data Protection and Privacy Commissioners」のこと。同じ場所で、2018年に「General Data Protection Regulation(GDPR)」が導入されたのも偶然ではないだろう(参照:Everything you need to know about a new EU data law that could shake up big US tech)。

 この年のヨーロッパは、GAFA批判で盛り上がっていた。Facebookのケンブリッジ・アナリティカの事件などもあり、Google・Facebookを中心に、個人の明示的な同意もないのに勝手に個人情報を販売して儲けていると散々叩かれていた。(参照:世界最大級のプライバシー事件「ケンブリッジ・アナリティカ問題」とは何だったのか

 このような背景で、個人データ収集は一般市民に対する”武力攻撃”(Personal data collection is being ‘weaponized against us)であるという刺激的な表現を織り交ぜながら、Tim Cookは、この危機を乗り越えよう、みんなで一緒にチャレンジしていこうと呼びかけていた。

「This crisis is real. It is not imagined, or exaggerated, or crazy. And those of us who believe in technology’s potential for good must not shrink from this moment. Now, more than ever — as leaders of governments, as decision-makers in business and as citizens — we must ask ourselves a fundamental question: What kind of world do we want to live in?)」

(意訳:この危機は本物である。空想でも誇張でもクレージーでもない。そして、テクノロジーを信じている者たちは、ここで怯んではならない。今こそ、かつてないほどに、政府のリーダーや企業の意思決定者、あるいは、一般市民である我々であっても、この基本的な質問を自らに問わなければならい。その問いはこうだ。我々は、どんな世界に住みたいのか?)

(出典:Tim Cook: Personal data collection is being ‘weaponized against us with military efficiency’

GAFAを「パノプティコン」にしないために

 「我々はどんな世界に住みたいのか?(What kind of world do we want to live in?)」という問いは、確かに、ファンダメンタルな問いだ。

 個人情報が政府や大手IT企業の手に渡り、中央集権的なデータ監視社会が到来する。それが、中国に出現しつつあるのではないか。自由と民主主義を信じている我々は、そこに脅威を感じる訳だ。いつの間にか、中国共産党政権と同じようなデータ監視社会になってしまったのではないか、と。

 そんな世界に住みたいのか? GAFAは、「パノプティコン」になってしまったのではないか? そんな危機感を払拭するために、Tim Cookは立ち上がったように見えた。

 フランスの思想家、ミッシェル・フーコーは、『監獄の誕生―監視と処罰』で、国家権力の集中機構としての監獄を論じ、その特徴と本質を抽出した。ジョージ・オーウェルが『1984』で描いたことで有名になった「パノプティコン」(一望監視施設、全展望監視システム)を例に、フーコーは、中央で情報をコントロールし、人を監視する権力の本質を論じた。

 監視する権力とその監視装置「パノプティコン」の恐怖は、ヨーロッパ人にとってはもちろん、我々人類全体の問題としても、ナチス・ドイツや旧ソ連などの全体主義への恐怖と重なる。

 だから、GAFAが個人情報を無断で勝手に収集するならば、一般市民を敵に回すことになる。我々日本人も、おそらく、そんな全体主義の社会を望む人はいないはずだ。GDPRに反する行為や日本の個人情報保護法違反をする企業は、市民生活を武力で脅かしているに等しいということだ。人権侵害をしていることになるのだ。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2022/10/03 13:19 https://markezine.jp/article/detail/40064

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