※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。
BtoBのテレビCM施策においてターゲットを拡張する方法
株式会社TOKIUM ビジネス本部マーケティング部 鎌倉 知紗氏
1990年生まれ、高知県出身。立教大学卒業後、2013年に新卒で読売広告社に入社。BtoB領域を中心にマス広告のプランニング・制作、イベントの企画運営など統合コミュニケーション支援に従事。2016年より畜産IoTスタートアップで一人目の広報・宣伝として奮闘。2022年3月より現職。
経費精算クラウドや請求書受領クラウドを提供しているTOKIUMでは、2022年7月より、請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」において初めてのテレビCMの放送を開始しました。昨年11月ごろから準備を始め、文字通り紆余曲折ありながらもチーム一丸となってやり遂げた約8ヵ月の道のりを、ほんの一部ですがご紹介します。
TOKIUMでは、今回テレビCMを実施した請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の他に、ペーパーレス経費精算クラウドと、電子帳簿保存法に準拠した文書管理クラウドを提供しています。いずれも法人支出管理分野に分類されるサービスで、経費精算や請求書管理に関するサービスです。
ここまでの情報で、読者のみなさんは、TOKIUMのマーケティングターゲットとして企業の経理部や情報システム部などを想像されるかもしれません。それも正しいのですが、マス広告、特にテレビCMを検討するにあたっては、視聴者をセグメントして「ターゲット」と定義して狙い撃ちする手法だけではうまくいきません。
経費精算の申請、請求書の受け取り、見積書や納品書の保管、こうした仕事は外回りの営業や店舗の販売スタッフ、エンジニアや経営者も関わることがあり得る業務です。この視点を抜きにして、経理の人だけに伝わればいいと割り切ったテレビCMで勝負するのは、一見効率が良いように思えても、中長期的な視点でTOKIUMのファンを作ることはできません。
BtoB商材では、消費財などBtoC商材と比較すると、企業(ブランド)広告とサービス(製品)広告のそれぞれに潤沢なメディア予算と制作予算を使うことができないケースが多いでしょう。だからこそ、多くの人の目に触れるテレビCMではターゲティングしてコミュニケーションする相手を絞るのではなく、欲張って両方を獲得しうるクリエイティブを用意する必要があると考えています。
また、テレビというメディアの特性上、視聴者はテレビCMを見るという目的で、テレビのスイッチを入れるわけではありません。そんなことをしているのは企業の宣伝担当者くらいでしょう。好きなタレントが出るから、ドラマの続きを見たいから、今日のニュースやスポーツの結果を見たいから、といった具体的な目的もなく、ただなんとなくテレビをつけているという方も多いと思います。
視聴者のそんなひとときに、一方的に企業が言いたいことを詰め込んだテレビCMが入り込むのはむしろ、邪魔もの扱いされ、酷い場合にはブランド棄損にもつながりかねません。事実、番組の途中でテレビCMが流れ始めると別のチャンネルに変えた経験はほとんどの方に覚えがあると思います。見られなければ意味がないのです。そのため、テレビCMでは企業側の伝えたいメッセージや明確な訴求軸と、視聴者にとってのエンタメ性や公共性を兼ね備えている必要があると考えています。