「3COINSらしい」イメージを1度忘れることにした
1つ目は、「商品」のバージョンアップだ。
コアターゲットを30代後半と再設定したことにより、30代後半の消費者のライフスタイルの深い理解と、その中で求めているものを商品企画に反映させる必要が出てきた。そこで、今まで「3COINSっぽい」「3COINSらしい」と自社で形容していた商品イメージを「1度忘れることにした」という。
「“3COINSでいい”から、“3COINSがいい”と思えるような商品に変えていこうと考えました」(肥後氏)
以前の商品ラインアップには、色つきや柄のあるものが多かったが、現在の商品は30代後半を意識したシンプルで落ち着いたデザインが多くなっていることが見て取れる。目指したのは「この商品が300円で買える」という驚きだ。狙い通り、実際にその驚きが消費行動につながっていることを実感しているという。
3COINSは低価格のブランドであるため、いかに何回も店舗に足を運んでもらえるかがカギとなる。そこで肥後氏が取り入れたのが「4週間MD」という施策だ。4週間ごとに商品が入れ替わるという施策で、消費者から見れば「行くたびに新しい商品に出会える」と新鮮味を感じられる。
「既にアパレルブランドのほうではこの施策を行っていました。一方で、3COINSのような雑貨業態では難しいのではないかと思い込んでいて、なかなか取り組めていなかったところでした。そこに挑戦しようと、人員を増強し、4週間ごとにいろいろな商品が店頭に並ぶ状況をつくれるようにしました」(肥後氏)
商品のバージョンアップにおけるもう1つの軸が「コラボ企画」だ。コラボ企画で商品を生み出すことで、それまで3COINSを知らなかった層にもリーチする機会となる。
コラボにおいて肥後氏が注意したのが、「特別感」である。商品やデザインには、必ず「3COINSでしか買えない特別感」を取り入れた。結果的に、「3COINSのブランド価値向上に貢献している」という。
数ある企業とのコラボの中で、JAXAとの取り組みは特徴的だ。JAXAが企画した「国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が使用する生活用品のアイデア募集」において、3COINS が提案した、「自在にカスタマイズでき、持ち歩くこともできる壁面収納」が搭載候補品の一つとして採択されたのだ。現在は、23年以降の国際宇宙ステーション搭載を目指してJAXAとのすり合わせ段階に入っているという。
あえて店舗の大型化を目指し、ブランドイメージを一新
2つ目は、店舗のバージョンアップである。
肥後氏は「商品の価値はそれを手に取る空間で大きく変わる」と考え、300円以上の価値を感じてもらうための空間づくりを考えたという。そして、「内装・什器の見直し」「ビジュアル・販促物の見直し」「店舗のサイズの見直し、大型化」をテーマに進めていった。
「既存の3COINSは白をベースとしながら明るい黄緑色が目立つイメージの店舗でした。これも、やはりターゲットとなるお客様がゆっくり買い物をして、商品をより良く感じていただける店舗を目指そうということで、より洗練されたイメージの内装・什器、ビジュアル等へと見直しをしました」(肥後氏)
さらに注目したいのが店舗のサイズだ。現在3COINSでは大型化を急ピッチで進めているという。2018年頃までは50坪程度が標準サイズだったが、今では100坪を超える店舗は当たり前、150坪を超える店舗も10数店舗運営、今後は200坪レベルの大きな店舗も構想しているようだ。
また、2021年11月には原宿・明治通り沿いに、「3COINSのフラッグシップストア」として原宿本店がオープン。「これまでの内装などを一切全部忘れて、ここだけの3COINSを作ろうという設計にしている」と肥後氏が言うように、ブランド全体を牽引する存在を目指す店舗となる。