日本はキーマーケットだった
アダストリアは「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」など30以上のアパレルブランドを国内外に1,400店舗も展開している。20~30代向けのヤングカジュアルファッションを得意とし、2023年に創業70周年を迎える老舗企業だ。
一方のFOREVER21は、1984年にアメリカで創業。2009年に日本へ上陸し、外資系ファッションブームをけん引した。しかしながら2019年、連邦倒産法第11章の適用を申請。それにともない日本からも完全撤退した。
ところが2020年、アメリカのファッションビジネス専門管理会社であるオーセンティック・ブランズ・グループ(以下、ABG)がFOREVER21を買収。ABGは国際的な知名度を持っていながら財成苦に陥るブランドの復活請負人として知られ、これまで「バーニーズニューヨーク」「ブルックスブラザーズ」「エディーバウアー」などの再起を手掛けてきた。
FOREVER21の再生を図るにあたり「日本はキーマーケットだった」と語るのは、ABGのバイスプレジデントを務めるケビン・サルター氏だ。「日本はファッション業界において強大な影響力を持っているため、日本での成功を他のマーケットにも広げていけると感じた」と続ける。
再上陸を手掛けた理由
ABGはFOREVER21のマスターライセンスを保有する伊藤忠商事からアダストリアの紹介を受け、サブライセンスを提供。アダストリアは新会社のGate Win(ゲートウィン)を設立し、ライセンス事業の展開に備えた。
アダストリアがライセンス事業に取り組むのは今回が初となる。「グローカル」を海外戦略のコンセプトに掲げ、展開先となる地域と顧客に合わせた商品企画や店舗運営のローカライズを得意とするアダストリア。「当社の編集力を強みに、自社ブランドの展開とは異なる新しいスタイルを確立したい」と語るのは、同社の代表取締役・木村治氏だ。将来的には日本だけでなく、アジア全体におけるライセンス事業の展開も視野に入れているという。
なぜアダストリアはライセンス事業の第1弾としてFOREVER21の日本再上陸を手掛けることにしたのか。木村氏がその理由を語る。
「アダストリアが持つ強みと、FOREVER21が持つファッション性および知名度。これらを掛け合わせることにより、FOREVER21を日本のマーケットで再び強いブランドにできると確信したからです。トレンドとハイクオリティが共存するブランドとして、ファッションの楽しさを日本の多くのお客様に届けられると考えました」(木村氏)