PHOEBE BEAUTY UPに学ぶ「ユーザーファースト」の姿勢
磯山:メディアに集まったファンの声をもとにプロダクトを開発するという話がありましたが、具体的にはどのようにしてプロダクトを作り上げたんですか?
尾﨑:メディアのコンテンツ作りの過程で、ユーザーの悩みを聞いたほうが圧倒的にファンにとって価値の高いコンテンツができることはわかっていました。だからPHOEBE BEAUTY UPのプロダクトも、「自分たちが作りたいものを作るのではなく、お客様が欲しいものを作る」、ユーザーファーストの姿勢が前提でした。
その頃にはメディアのフォロワーが数十万人いて、エンゲージメントも高かったので、様々な切り口から何度もアンケートを行い、第1弾のプロダクトであるまつ毛美容液を作りました。
磯山:本連載で話をうかがっている経営者の皆さんが、ユーザーの声を聞くことの大切さを語っています。尾﨑さんのSNSの投稿でも、店舗に行ってお客さんと対話しているのを拝見しました。

尾﨑:メディアに露出するようになってから、いい意見も悪い意見もお客様から直接いただけるようになりました。BtoCビジネスを行う社長がメディアに出ることの是非は意見が分かれますが、ファンの方たちがブランドのペルソナと近いので、良い結果につながっていると思っています。
経営にコミットするとどうしてもお客様から離れがちになってしまうので、原点回帰できる場ができたのは本当に良かったと思っています。
磯山:クレームでも提案のご意見でも、文字の報告書を読むだけでは熱量が伝わりづらいんですよね。経営者やブランド責任者が顧客の熱量に直接触れるのは非常に重要だと思います。
複数のユーザー接点でトンマナを統一
磯山:SNSやECサイト、実店舗など、多くの顧客接点を持っていらっしゃいます。それぞれで大切にしていることや顧客層の違いはありますか?
尾﨑:最近の女性はSNSで情報収集をする方が多いので、Instagramで情報を探して、良いと思ったものをInstagram内で買う流れができています。友達や他ユーザーのおすすめなどのリファラル(紹介)が購入に効くのがSNSの特徴です。
また、利便性を求める人はECモール、実際に手に取りたい人は実店舗で買う傾向が強いと思います。実店舗の中でも直営店にはスタッフがいるので、商品の良さやブランドの世界観をより体験していただける場作りを意識しています。
磯山:行動範囲も興味を惹かれるポイントも異なる顧客に対して、適切な接点を作ってコミュニケーションもできているんですね。
尾﨑:そうですね。一番大事にしているのは、ブランドのトンマナをすべて揃えることです。店舗とECの印象がまったく違えばブランドの印象がぼやけてしまうし、おしゃれなインフルエンサーがおすすめしているのにLPのクリエイティブが洗練されていなければ、残念な結果につながると思うので。
磯山:私もユーザーとブランドのタッチポイントにおける体験の一貫性は、ブランド体験(BX)においてとても重要だと考えています。一貫した体験がブランドの記憶となり、ブランドを作り上げていきますから。トンマナを大事にするようになったのには、何かきっかけがあるんですか?
尾﨑:広告に注力していくと、クリエイティブがユーザー目線ではなくなってしまうときがあります。お客様のズレを感じる機会が増えて、それを機に改めてトンマナの統一を意識するようになりましたし、使うカラーやフォントを明確に定義したブランドブックを作って、社内全員にインプットすることにしました。