旧世代の「プロダクト価値」を、現世代へ再定義する
MarkeZine編集部:今日はミレニアル世代・Z世代(以下、MZ世代)に強いクリエイティブ・ディレクターとプランナーの皆さんにお集りいただきました。博報堂/SIXの藤平さん・蔵敷さんとgrass.Incが共同で進めているMZ世代向けのプロジェクトや、MZ世代にどう向き合うべきかについて色々なお話を聞いていこうと思います。はじめに、プロジェクトを組成しようと考えた背景や取り組みの概要を紹介いただけますか?
藤平:ここ数年、ややバズワード的な感じもありますが、MZ世代はこれまで以上に「新しい価値観を持った若者」として、ビジネスやマーケティングで特別視されていると思います。実際、MZ世代は世界人口の約30%を占めていて、3年後には全労働人口の75%を占めると言われています。つまり、「MZ世代を中心に見据えてブランドをリデザインする/つくること」は、ビジネスの成長を考えても確かに重要です。
感覚的にわかっているこの話ですが、チャートを見るとより明らかです。これは世代別の人口比が今後どのように推移していくかをgrass.Incチームがまとめたものです。これを見ると、かなり近い将来、MZ世代が消費のメインを担うようになることがわかると思います。
MarkeZine:おもしろいですね。こうして見ると、次の時代が迫ってきていることを改めて実感します。
藤平:世代の変化は連続的に起きていますが、ここにもうひとつ、テクノロジーの変化を掛け算すると、赤色のポスト団塊ジュニア世代とオレンジ色のミレニアル世代の間で大きな価値観の変化が起きたと認識しています。テクノロジーの変化とは、スマートフォンを起点にした大変革です。
つまり、「MZ世代に向けたブランドの再設計」は、世代の変化のみならず、時代の変化も加味しながら行う必要がある。経営者やCMOと話していると「第二創業」といった言い方をされる方もいらっしゃいますが、それくらい言わば“オオゴト”としてしっかり向き合わないと、MZ世代が好むルック&フィールにブランドを衣替えするだけの、小手先の施策に陥ってしまいます。
私たちはそこに危機感を持っており、「MZ世代を深く理解しながら、ブランドを本質的にトランスフォーメーションしていこう」と、プロジェクトを立ち上げました。今まさにインプットをしながら、いくつかの事例が進行中です。
MZ世代は、どうやって理解したらいいの?
MarkeZine:ではここからは、みなさんがMZ世代のインサイトをどのように捉えているのか、MZ世代を対象にした本質的な価値をどのように作っていくか、といったテーマで対談を進めていきたいと思います。まず、みなさんはMZ世代のインサイトや本音をどのように探していますか?
齊藤:私は、もうZ世代の気持ちにはなれないし、感情移入もできない! と割り切っていて。彼ら彼女たちが日ごろSNSでどんな情報を得て、どんなコンテンツを見て聞いて、その結果どんな感情になっているのかを、第三者の目線でSNSから細かく収集しています。特にInstagramはいつもこわいくらい見ています(笑)。
蔵敷:れなさんは感覚的にインサイトを見つけているように見えますが、そうではなく、その土台としてめちゃくちゃインプットしているんですね。
齊藤:そうですね。Z世代に関しては、「わかる」とも「わからない!」とも思わず見ています。マイカは年齢的にはギリギリZ世代に含まれるけど、どう?
飯村:私は半々ぐらいですね。Z世代だと自覚する部分もあれば、ザ・Z世代の子たちはそういう感じなんだと客観的に見ている部分もあります。たとえば、私はニュースを調べる時にSNSを使うことはしませんが、ザ・Z世代の子たちはインスタとかTikTokとかで情報をキャッチアップしていたりする。一方で、社会問題とか環境問題に敏感で、興味関心のある物事にはのめり込んで勉強する、みたいなところはZ世代の特性として共感できます。
蔵敷:私も世代的に「Z世代の価値観と自分はすべて一緒ではない」と思っているので、とにかく話を聞くことを大事にしています。けれど、Z世代ど真ん中の子たちと、インサイトやトレンドなどの“Z世代あるある”について話していても、意外と「それは自分はわからないかも」と言われることが多くて。Z世代とひとくくりにしないで、その中でも誰に向けて伝えていくのか、ターゲットをより細分化してコミュニケーションすることが大事なんだな、と思っています。
それと、気をつけないといけないのが、「オトナが分析・言語化した“世代全体に対するあるある”を鵜呑みにして、わかった気になること」。忙しいとWeb記事でインプットを済ませてしまいがちですが、分析されている情報が、MZ世代ではすでに終わったトレンドだったりもします。生の声を大切にして、知ったかぶりにならないように気をつけないと、と思っています。
藤平:知ったかぶりをしないというのは、とても大事ですよね。久しぶりに世代論が流行りすぎて、なんでもかんでも「MZ世代だから~」になってしまっている気がするのですが、ぼくは、正確には、価値観(インサイト)やトレンドは「世代」「年代」「時代」の3つの視点に分解するべきだと思っています。
MarkeZine:世代、年代、時代ですか。
藤平:「世代」は、その世代だけが、極論すれば、生まれてから死ぬまで持つ特性・特徴。「年代」は、〇〇歳くらいになったら身体のどこそこが気になるみたいなことや、ライフステージに関する希望や悩みなど、世代に関係なく一定の年代になるとよく出てくる観点。もう1つの「時代」は、最近で言えばコロナ禍とか、あとはスマホの浸透、テクノロジーの発展などその時代特有の事象の話ですね。
全部別モノなので、たとえば「MZ世代は恋愛に無関心」と世代だけで決めつけず、「年代効果・時代効果はゼロなんだっけ?」「どういう掛け合わせでそうなっているんだっけ?」と考える必要があると思います。