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“いかにも”なMZ世代向けリブランドの危うさ 流行で消費されずに愛される、本質的なブランドの作り方


 世代論は古いというマーケティング論調もある一方で、ここ数年「ミレニアル世代」「Z世代」に注目が集まるケースが増えている。これにともない、彼ら/彼女たち向けのリブランディングが多く進行しているが、デザインなどの単なる“若返り”になってしまっていることも多い。しかし、MZ世代に向けたブランドのリデザインは、表面的なものにとどまらず、もっと本質的に実行されるべきではないだろうか? これまであまり指摘されてこなかった、「ミレニアル・Z世代マーケティングが陥りがちな罠」を探りながら、今後の取り組みにおけるいくつかのヒントにたどり着きたい。

旧世代の「プロダクト価値」を、現世代へ再定義する

MarkeZine編集部:今日はミレニアル世代・Z世代(以下、MZ世代)に強いクリエイティブ・ディレクターとプランナーの皆さんにお集りいただきました。博報堂/SIXの藤平さん・蔵敷さんとgrass.Incが共同で進めているMZ世代向けのプロジェクトや、MZ世代にどう向き合うべきかについて色々なお話を聞いていこうと思います。はじめに、プロジェクトを組成しようと考えた背景や取り組みの概要を紹介いただけますか?

株式会社博報堂/株式会社SIX ストラテジック・クリエイティブ・ディレクター 兼 UXデザイナー 藤平達之氏

株式会社博報堂/株式会社SIX Strategic Creative Director/UX Designer 藤平達之氏
神奈川県出身、1991年生まれ、2013年博報堂入社。クリエイティブブティック・SIXにも所属。パーパスと生活者発想の両視点から設計したコアアイデアを、様々な手法で形にする。広告/統合コミュニケーションにとどまらず、サービスやプロダクトの開発、番組制作やアーティストのクリエイティブパートナーなども手掛ける。
自身のプランニングを「PJMメソッド」 として体系化し、著書『クリエイティブなマーケティング』(現代書林)として出版。 これまでに「2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 総務大臣賞/ACCグランプリ」などを受賞し、as:tech tokyo 2020などセミナーや講演も多く実施。フィナンシェと炭酸水とジンが好き。

藤平:ここ数年、ややバズワード的な感じもありますが、MZ世代はこれまで以上に「新しい価値観を持った若者」として、ビジネスやマーケティングで特別視されていると思います。実際、MZ世代は世界人口の約30%を占めていて、3年後には全労働人口の75%を占めると言われています。つまり、「MZ世代を中心に見据えてブランドをリデザインする/つくること」は、ビジネスの成長を考えても確かに重要です。

 感覚的にわかっているこの話ですが、チャートを見るとより明らかです。これは世代別の人口比が今後どのように推移していくかをgrass.Incチームがまとめたものです。これを見ると、かなり近い将来、MZ世代が消費のメインを担うようになることがわかると思います。

GENERATION MAP(All Age)/総務省統計局による人口推計データを基にgrassが作成
GENERATION MAP(All Age)/総務省統計局による人口推計データを基にgrass.Incが作成
GENERATION MAP(All Age)/総務省統計局による人口推計データを基にgrassが作成
GENERATION MAP(15~34歳にフォーカスを当てたもの)/総務省統計局による人口推計データを基にgrass.Incが作成

MarkeZine:おもしろいですね。こうして見ると、次の時代が迫ってきていることを改めて実感します。

藤平:世代の変化は連続的に起きていますが、ここにもうひとつ、テクノロジーの変化を掛け算すると、赤色のポスト団塊ジュニア世代とオレンジ色のミレニアル世代の間で大きな価値観の変化が起きたと認識しています。テクノロジーの変化とは、スマートフォンを起点にした大変革です。

 つまり、「MZ世代に向けたブランドの再設計」は、世代の変化のみならず、時代の変化も加味しながら行う必要がある。経営者やCMOと話していると「第二創業」といった言い方をされる方もいらっしゃいますが、それくらい言わば“オオゴト”としてしっかり向き合わないと、MZ世代が好むルック&フィールにブランドを衣替えするだけの、小手先の施策に陥ってしまいます。

 私たちはそこに危機感を持っており、「MZ世代を深く理解しながら、ブランドを本質的にトランスフォーメーションしていこう」と、プロジェクトを立ち上げました。今まさにインプットをしながら、いくつかの事例が進行中です。

MZ世代は、どうやって理解したらいいの?

MarkeZine:ではここからは、みなさんがMZ世代のインサイトをどのように捉えているのか、MZ世代を対象にした本質的な価値をどのように作っていくか、といったテーマで対談を進めていきたいと思います。まず、みなさんはMZ世代のインサイトや本音をどのように探していますか?

齊藤:私は、もうZ世代の気持ちにはなれないし、感情移入もできない! と割り切っていて。彼ら彼女たちが日ごろSNSでどんな情報を得て、どんなコンテンツを見て聞いて、その結果どんな感情になっているのかを、第三者の目線でSNSから細かく収集しています。特にInstagramはいつもこわいくらい見ています(笑)。

grass株式会社 CCO 齋藤澪菜氏

grass株式会社 CCO 齊藤澪菜氏(Instagram:@rena62s
2015年大日本印刷のグループ会社に入社。Webメディアの編集長や新規事業を担当。2018年にgrass.Incに入社。大手クライアントのリブランディング戦略責任者として従事。その影響力により自身の取材も多く、ライフスタイルが若者から注目を集めている。

蔵敷:れなさんは感覚的にインサイトを見つけているように見えますが、そうではなく、その土台としてめちゃくちゃインプットしているんですね。

齊藤:そうですね。Z世代に関しては、「わかる」とも「わからない!」とも思わず見ています。マイカは年齢的にはギリギリZ世代に含まれるけど、どう?

飯村:私は半々ぐらいですね。Z世代だと自覚する部分もあれば、ザ・Z世代の子たちはそういう感じなんだと客観的に見ている部分もあります。たとえば、私はニュースを調べる時にSNSを使うことはしませんが、ザ・Z世代の子たちはインスタとかTikTokとかで情報をキャッチアップしていたりする。一方で、社会問題とか環境問題に敏感で、興味関心のある物事にはのめり込んで勉強する、みたいなところはZ世代の特性として共感できます。

grass株式会社 Concept Planner 飯村茉唯華氏
grass株式会社 Concept Planner 飯村茉唯華氏
2020年grass.Incに入社。大手クライアントのリブランディングを担当。日本語、英語、中国語の3ヵ国語を使いこなし、グローバル視点での企画に定評がある。

蔵敷:私も世代的に「Z世代の価値観と自分はすべて一緒ではない」と思っているので、とにかく話を聞くことを大事にしています。けれど、Z世代ど真ん中の子たちと、インサイトやトレンドなどの“Z世代あるある”について話していても、意外と「それは自分はわからないかも」と言われることが多くて。Z世代とひとくくりにしないで、その中でも誰に向けて伝えていくのか、ターゲットをより細分化してコミュニケーションすることが大事なんだな、と思っています。

株式会社博報堂 クリエイティブコンサルティング局 坂本チーム クリエイティブストラテジスト コミュニケーションプランナー 蔵敷夏実氏

株式会社博報堂 Communication Planner/Creative Strategist 蔵敷夏実氏
愛知県出身、1992年生まれ、2016年博報堂入社。リサーチから発見し、ブランドと掛け合わせてストーリーを作り、ミレニアル世代・Z世代にエンゲージメントしていくようなプランニングが得意。コンテンツ開発やパーパスを起点とした組織開発など、広告領域にとどまらず、広く「心と身体を動かす体験づくり」に取り組んでいる。大学講師なども務める。

 それと、気をつけないといけないのが、「オトナが分析・言語化した“世代全体に対するあるある”を鵜呑みにして、わかった気になること」。忙しいとWeb記事でインプットを済ませてしまいがちですが、分析されている情報が、MZ世代ではすでに終わったトレンドだったりもします。生の声を大切にして、知ったかぶりにならないように気をつけないと、と思っています。

藤平:知ったかぶりをしないというのは、とても大事ですよね。久しぶりに世代論が流行りすぎて、なんでもかんでも「MZ世代だから~」になってしまっている気がするのですが、ぼくは、正確には、価値観(インサイト)やトレンドは「世代」「年代」「時代」の3つの視点に分解するべきだと思っています。

MarkeZine:世代、年代、時代ですか。

藤平:「世代」は、その世代だけが、極論すれば、生まれてから死ぬまで持つ特性・特徴。「年代」は、〇〇歳くらいになったら身体のどこそこが気になるみたいなことや、ライフステージに関する希望や悩みなど、世代に関係なく一定の年代になるとよく出てくる観点。もう1つの「時代」は、最近で言えばコロナ禍とか、あとはスマホの浸透、テクノロジーの発展などその時代特有の事象の話ですね。

 全部別モノなので、たとえば「MZ世代は恋愛に無関心」と世代だけで決めつけず、「年代効果・時代効果はゼロなんだっけ?」「どういう掛け合わせでそうなっているんだっけ?」と考える必要があると思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/14 10:43 https://markezine.jp/article/detail/40225

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