DXビジョンの全体像を描いた「Cosmo’s Vision House」
──DXを進め、データドリブンな組織にしていくため、今日までどのような取り組みを?
DXを進めるときは、会社として進む方向性を戦略として定めることがまず重要です。また、パーツごとにある程度区切らないと動きづらい部分もあります。そこで、DXのビジョンの全体像を描いた「Cosmo’s Vision House」を策定し、DXを自分ごと化するための意識改革として「Cosmo’s5C」も定めました(図表1)。
この「Cosmo’s Vision House」には、コーポレートDX戦略部の思いやこだわりが詰まっていて、一字として無駄なものが入っていません。重要なエッセンスが凝縮されていて、素晴らしいものができたと自負しています。
戦略を描いたら、次はそれをみなさんに丁寧に説明していくことが大切です。「DXフォーラム」という名のもと、「なぜDXが必要なのか」「コスモエネルギーホールディングスが考えるDXとはどのようなものなのか」を現場のみなさんに説明してきました。本当に数えきれないほど現場に足を運んでいて、こうしたコミュニケーションは徹底してやっていますね。
もう少し詳しく「Cosmo’s Vision House」を見ていくと、中央にある「デジタル・ケイパビリティ」「チェンジマネジメント」の部分は、組織的に動く必要があるところです。特に、チェンジマネジメントについては、日本企業が不得意なところだと感じています。たとえば、DX人材の育成や組織改革についてお話しすると、よく「何人データサイエンティストを育成しますか?」と聞かれます。ですが、私は人数はあまり関係ないと思っています。データドリブンな組織にしていくとき、全員がデータを扱えるようになる必要はありません。自分ができるところでみんなに参加してもらえるようにすること、携わるみんなが楽しめるようにすることが大事だと考えています。
──コスモエネルギーホールディングスの規模で、全社員を巻き込むのは相当に大変そうです。どのように働きかけているのですか?
「データとかDXとかよくわからない……」と思ってしまう気持ちを和らげるところから始めました。そのために最初に行ったのが、全社向けのアンケートです。ここで「どのくらいデータについて知っていますか? スキルを持っていますか?」とストレートに聞いても意味がないので、みなさんには「『Cosmo’s 5C』のうち直感的に自分に当てはまると思うものはどれですか?」という質問の仕方をしています。これは、みなさんの心的特性を明らかにするための質問ですね。その後に、普段の仕事の内容や進め方などを聞く質問も入れました。
ポイントは、データをあまり触ったことのない方たちにも「DXってなんか自分でもできそうだ」と感じてもらえるよう、ポジティブな内容や聞き方を徹底すること。海のものか山のものかもわからないことについて詳しく聞いてしまうと、みなさんこわがってしまうので、そんなことはしません。たとえば、データサイエンティストに興味があるとか、普段の仕事でデータを触ることが多いといった回答をしていた方だけドリルダウンする形で、細かい部分は聞いていきました。
全社員向けのアンケートとはいえ、ある程度スピード感を持って進めたかったので、大きく2回に分けて実施しています。1回目は2,000人、2回目は4,000人、計6,000人を対象に行いました。社員のみなさんがDXに対してどのような意識をお持ちか、全体的な傾向をつかむことができたので、このアンケート調査は重要な施策であったと思っています。
──アンケートで「Cosmo’s 5C」を投げかけて、全員の士気を上げたわけですね。
そうです。ここからが重要なのですが、データドリブンな組織にするためには、やはりある程度トレーニングも必要です。このアンケート調査をベースに、現在、DX人材の育成に向けたトレーニングプランを立てています。DX人材と一口に言っても、統計を勉強したい人やプログラミングを勉強したい人、Excelを専門的にやりたい人などいろいろです。グループ内のどこらへんに、どんな方が多いかがアンケートで見えてきたので、会社ごとに働きかけていこうとしています。みんなでDXを進めていくためには、1人のスーパースターを育成するのではなく、いろんな領域のプロフェッショナルを集結させることのほうがよほど大事です。重要なのは、グループ全体で網羅性を持つこと。自分の強みと言える領域やスキルをみなさん1つは持てるように、会社としてトレーニングの機会を提供できればと思っています。
