BtoCからBtoBまで、幅広いキャリアを持つ田岡凌さんを取材
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。
田岡:戦略マーケティングファーム「suswork」の代表をしております、田岡と申します。新卒でネスレ日本に入社し、「ネスカフェ」や「ミロ」のマーケティングを担当した後、フレキシブルオフィスサービスの「WeWork」にジョインし、責任者としてブランドマーケティングを統括しました。マーケティングSaaSのスタートアップ「リチカ」でCMOとして広報マーケティングの管掌も経験し、2022年にsusworkを立ち上げています。
MZ:susworkについてもご紹介いただけますか?
田岡:susworkは、企業の皆さんと一緒にマーケティング戦略を策定していくプログラム「Marketing 5OS」を提供しています。特長は、マーケティングに強いと言われている欧米企業出身のマーケターを含め、様々な業種業界で経験豊富なマーケターが伴走しながら戦略策定を支援すること。P&G、ネスレ、Amazon、ジョンソンエンドジョンソンなど、いずれの企業もそれぞれマーケティング戦略の立て方は異なりますが、共通している部分もあります。マーケティング先進企業の戦略とベストプラクティスを各企業の出身マーケターと一緒に研究し、議論しながら作った5ステップのマーケティング戦略策定プログラムと、そのほか20以上の戦略メソッドをもとに、戦略策定から実行までを支援しています。
また、susworkでは戦略と同じくらい“組織作り”が重要だと考えており、組織強化や人材育成の支援にも力を入れています。
戦略を実行するのは組織であり、その戦略を考えるのも組織である
MZ:組織作りを重視するのは、どういった考えからですか?
田岡:企業がマーケティングあるいはマーケティング組織に求めるものは、シンプルに言うと“事業成長”です。その事業成長に最も効くドライバーはやはり“戦略”で、戦略次第で結果は本当に大きく変わることを身をもって実感してきました。一方で、中長期的な視点に立つと、“組織”というドライバーも戦略と同じくらいもしくはそれ以上に事業成長に直結すると考えています。
というのも、一見当たり前のことなのに意外と着眼されることがありませんが、戦略を実行するのは組織であり、その戦略を考えるのもまた組織です。マーケティングに強いと言われる外資系先進企業も、元をたどると、優れた戦略を考え実行できるマーケターを生んできた組織の勝利であるとも言えます。
「戦略を実行できる組織」という観点も極めて重要で、良い戦略を作っても、なかなかそれをやり切れないケースが多々あります。良い戦略を立てられる優秀なマーケターが1人いても、チームでそれを実行できなければ事業成長は実現しません。
MZ:MarkeZineの記事も成功事例やフレームワークのほうに焦点を当てがちですが、この連載は結局は人と組織が大事であるという考えがベースにあります。
田岡:そうですよね。また、最後に一点付け加えるとすると、昨今は“組織の作り方”も多様化しています。これまでは、事業主の正社員/広告代理店/コンサル/メディアというようにはっきりとした区分がありました。ですが、最近は社外のパートナーを含めて、各々の企業や人が持ち合わせている特長や機能、肩書、データを軸に自由度高くチーム体制を考えられるようになっています。実は色々な選択肢があるのに、ここが思考停止してしまっている企業も多いように思います。これからの時代、さらなるポテンシャルを発揮するためのカギは、“組織作りの多様化”にあるのではないでしょうか。
MZ:なるほど。ちなみに、「上位概念として戦略があり、そこに組織作りが紐づいてくる」という考え方ですか? それとも並列で考えるべきですか?
田岡:これには色々な意見や議論がありますが、私は並列であるべきだと考えています。戦略ありきで、それを基にどういう組織を作るべきか考えるという流れが基本的だと思いますが、「今このチームで何をすべきか」「今このチームだからできることは何か」、さらには「今我々がすべき事業は何か」という具合に、組織が先行することもありますよね。ですので、戦略が先・組織が後という考え方は少し一元的かなと思います。どちらの選択肢もあって、状況に応じて選ぶのが理想だと考えます。