調査対象の約7割が睡眠不足
水野:まずは「みんなの眠ラボ」を立ち上げた背景を教えてください。
佐藤:Webサイトの開設は2021年2月ですが、検討開始時期は2019年まで遡ります。コーポレートサイトを担当していた当時の我々は、人口減少に加え、マス広告だけに頼ることのできない状況をどのように打破するか、頭を悩ませていました。そんな折に目に触れたのが「ヤッホーブルーイング」「スノーピーク」など、先行企業が取り組むファンコミュニティの事例でした。
佐藤:「健康」をテーマに掲げたコミュニティは、既に世の中に数多く存在していました。しかし「眠り」に焦点を絞ったものは存在せず、西川がコミュニティを作る意義があると考えたのです。そして2020年、我々が所属する営業企画統括部(現・マーケティング戦略部)にデジタル戦略担当チームが新設されたことをきっかけに、コミュニティの開設に向けて本格的に動き出しました。
水野:双方向でコミュニケーションを活性化するにあたって、テーマ設定は重要ですよね。
佐藤:そうですね。西川では毎年、日本人の睡眠実態に関する大規模な調査を行っています。「睡眠白書2022」によると「睡眠時間は足りているか?」という問いに「十分である」と回答した人は34.2%。つまり7割近くの人は睡眠時間が足りていないということになります。しかも6%の人は「まったく足りない、まったく眠れない」と回答しているのです。
水野:6%を日本の人口(1.2億人)で単純換算すると700万人。驚くべき数字になりますね。
佐藤:睡眠時間が足りていない人を年代別に見ると、20~50代の割合が特に大きいです。働き方をはじめ生活スタイルの変革が進む中、睡眠不足についても社会課題として取り組む必要があると西川では考えています。
睡眠不足は社会的でパーソナルな悩み
水野:現在のコミュニティの状況を教えてください。
春日:会員数は2022年11月時点で約8,000人です。来訪率は高く、投稿などのアクションを行うアクティブユーザー率も平均17%を維持できています。
水野:それは非常に高い数字だと思います。これほど会員の利用が活性化しているのはなぜでしょうか?
春日:会員アンケートでコミュニティ参加のきっかけを問うと、睡眠に何らかの課題や興味を持って入ってくる方が多いことが分かりました。みんなの眠ラボのように、睡眠に関するちょっとした相談ができる場が少なかったことも、好反応の背景にあるかもしれません。
水野:この連載で過去に取り上げたJALや三菱地所の事例でも、「旅」や「ラグビー」などの会員が共感するテーマを投げかけ、テーマへの理解を深めた会員が自ら発信することで、コミュニティの活性化と成長を促していました。みんなの眠ラボのテーマである「眠り」には、社会的な課題と同時にパーソナルな悩みも含まれるからこそ、共感や関心を生むのでしょうね。