生涯を通じて「自分らしい健康美」の実現を目指す
磯山:2022年に創業150周年を迎えた資生堂さんは、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」を企業使命に掲げていらっしゃいます。
スギモト:私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びや幸せをもたらす力があると信じています。資生堂は創業以来、人の幸せを願い美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造を行ってきました。これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。そのためには、化粧品事業の利益拡大だけではなく、様々なステークホルダーとの「共創」をベースに社会価値の創造を目指しています。
磯山:具体的に、資生堂さんが目指すブランドの姿とはどのようなものですか?
スギモト:当社では2023年に向けたVISIONに「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指しています。誰かが決めた画一的な美しさではなく、自分のものさしで「自分らしい美しさ」「自分が表現したい美しさ」を決められることをゴールにしています。
人の数だけ美しさがあり、一人の人間の中にも複数の面があります。それだけ美の表現のバリエーションがあるということなので、それを実現できる環境を提供したいと思っています。
磯山:2021年7月には、アクセンチュアとの合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー」を創立しましたね。どのような狙いがあったのですか?
スギモト:ビジョン実現のため、変化するお客様と市場環境に迅速に対応し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、日本の事業モデルを革新していくことを目的に設立した会社です。当社が長年培ってきたビューティー領域の知見と、デジタルサービスと先端テクノロジーの領域で多くの支援実績を持ち、そして人材育成のノウハウを持つアクセンチュアとの融合により、「Beautyをよく知るデジタル・IT専門家集団」として進化することを目指しています。
コロナ禍で失われた「買い物の楽しみ」を取り戻す
磯山:資生堂インタラクティブビューティーが提供する「新しい美容体験」について、詳しく教えてください。
スギモト:コロナ禍をはじめとする社会情勢の変化により、消費者のニーズや購買行動も大きく変化しています。未来の予測が困難な時代に、資生堂はどのような美容体験を提供すべきなのか。
その答えの一つとして取り組んでいるのが新しい美容体験、「テーラーメイドなオンリーワン体験(一人ひとりのニーズにあった美容体験)」の実現です。
磯山:コロナ禍は消費者の行動や価値観に大きな影響を与えました。
スギモト:実店舗での購入が制限されたことで、ECでの購入が増えたことはもちろん、多くの店舗を訪れずに1店舗で済ませたり、買い物の回数や時間をなるべく減らしたりする傾向にあります。予定外の購入を控えるため、衝動買いも減っています。
それと同時に、実際に店頭で商品に触れて試したり、予期せず欲しい商品に出会ったり、信頼できるスタッフに相談しながら選んだりという、買い物の機会が阻害されました。
磯山:特に化粧品という分野では、そういった体験は消費者にとってもブランドにとっても重要な要素だと思います。
スギモト:店舗でのパーソナルビューティーパートナー(以下、PBP)によるタッチアップ(お客様に直接メイクを施すこと)なども一部では現在も制限されています。それでも、「実体験で選ぶ楽しさ」を提供したいと思っています。
銀座の旗艦店であるSHISEIDO THE STOREでは、最新のバーチャルテクノロジーとリアル店舗のヒューマンタッチを融合させており、五感を使って試せるデジタルテスターや非接触で商品を試せるオートテスター、また日本初導入の先端メディテーション体験なども展開しています。
また、店舗に行かなくてもシームレスに活用できるクラウド対応の肌分析や3D技術による肌診断、PBPによるWebカウンセリングなど、様々な形でお客様一人ひとりのライフスタイルに合わせた美容体験を提供しています。