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WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ

正しい「ポジショニング」=WHATを定める。デプスインタビューから本質的なインサイトを探る方法

 現役でユニリーバのマーケティングから経営まで実行している木村元氏が、自身の経験をもとに開発したWHOとWHATを正しく設定していくためのフレームワーク「WHO/WHATの10ステップ」。本連載では、事例とともに同フレームワークの使い方を解説していく。今回は「ポジショニング」の中でも、コンセプト設計に必要なターゲットの思考・行動を発掘するステップ6~7を解説する。

ターゲットに訴求すべき便益を決める「ポジショニング」

 前回の記事ではWHOにあたる「セグメンテーション」から「ターゲティング」について触れ、有望な市場の見つけ方から、市場内における優先度の付け方まで説明しました。ターゲティングの次は、WHATにあたる「ポジショニング」(STEP6~10)の工程に入ります。

 今回はポジショニングにおいて、ターゲットの言語化できていないニーズに切り込み、インサイトを発掘するステップ6~7を解説します。

WHO/WHATの10ステップ

STEP1:セグメンテーション
STEP2:潜在ターゲットサイズ
STEP3:獲得難易度チェック
STEP4:ブランドセンスチェック
STEP5:優先順位付け
STEP6:デプスインタビュー(N1インタビュー)
STEP7:インサイト発掘

STEP8:タスクマップ
STEP9:コンセプトライティング
STEP10:コンセプトテスト&ロック

 具体的な説明に入る前に、ポジショニングとインサイトの関係を確認しておきましょう。

ポジショニングのプロセス

 ポジショニングはターゲティングで決定したターゲットに対して、自社製品やサービスの価値をどのように表現するかを決めていくプロセスになります。

 ポジショニングと聞くとポジショニングマップという単語を連想される方が多いかもしれません。たとえば家電のポジショニングマップを縦軸で値段が高い/安い、横軸で機能が多い/少ないという形で作っているのを見たことがあるかもしれません。ポジショニングマップを作ることが、ポジショニングの工程のゴールではありませんので、ご注意ください。ポジショニングマップはあくまでも、2つの軸を交差させた「4象限」の図の中で、自社と競合を比較検討するフレームワークであり、最終的なポジショニングを決める際の一つのヒントになるイメージです。

ポジショニングの目的

 ポジショニングをする目的は、狙うべきターゲットを定め、適切な市場に向けて勝負していく上で、商品の価値を狙うべきターゲットに伝えるためです。既にある商品、もしくはこれから開発する商品に多くの機能がある場合、どの機能をターゲットに伝えるべきか世の中のマーケターは悩んでいます。

 よくある失敗としては、すべての機能を伝えようとしすぎて、結局どういう便益があるか伝わらないパターンです。あれもこれも伝えようとすると正しいマーケティング施策を実行することはできません。

 狙うべきターゲットに対して、訴求する便益を決定するのがポジショニングにおける重要な役割ですので念頭においた上で以下の説明を読んでください。

ポジショニングの考え方

 ここでは、以前説明した低アルコール飲料向けブランドを例に説明します。

クリックすると拡大します
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 セグメンテーションとターゲティングのプロセスで、性別や飲酒頻度、飲むアルコール飲料の種別によってターゲットを分類します。

 30代女性

 お酒が好きで弱い

 週に3回以上、家で飲酒

 主にサワーを飲む

 仕事の疲れを癒すため

 上記のターゲットに対してポジショニングを考えていきます。

 たとえばこのターゲットに対して、年齢や職業といったデモグラフィックに加え、お酒を飲む目的の観点でターゲティングをします。上記の女性は、お酒が弱いという認識があるものの、週に3回以上家で飲酒しており、飲酒の目的は仕事の疲れを癒すことです。また現状は主にサワーを飲んでいることもあり、このターゲットに対して、自社製品にスイッチングを促すには、どのような価値提供をすれば良いか、つまりどのようなポジショニングが良いかを考えていきます。

 上記のターゲットの情報をシンプルに考えると、下記のようなアイデアが皆様の頭の中で浮かぶのではないでしょうか。

 きっとハードに働いている30代女性だから

 週3回飲んでいるサワーだと健康に良くないから

 仕事の疲れを癒せるようなハーブ&デトックステイストの健康アルコール飲料を出そう

 このようにセグメンテーションとターゲティングの工程を踏むことによって、ポジショニングの方向性はある程度、見えやすくなってきます。この工程を踏まずに、なんとなくのアイデアありきで製品開発を進めると、フレーバー系のビールがいいのか、ナチュール系のワインがいいのか、そもそもアルコール飲料でいいのか、と自社製品の価値提供の方向性がぶれてしまいます。

 一方で、上記で提示したポジショニングの方向性は、まだ定性インタビューによるターゲットのインサイト理解を行わず、あくまでも定量調査による表面的な情報をもとにした仮説にすぎません。ここからは、より顧客一人ひとりの顕在化していないニーズ、つまり顧客自身がまだ言語化できない奥深くにあるニーズを見つけ出していく必要があります。次のページから具体的なステップを解説します。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism代表取締役ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/03 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41005

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