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WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ

正しい「ポジショニング」=WHATを定める。デプスインタビューから本質的なインサイトを探る方法

STEP7:インサイト発掘

 インサイトについて説明をすると、それだけで複数の記事になってしまうほど、奥が深いステップです。今回はステップ6のデプスインタビューからどのようにインサイトのアウトプットに持っていくかのプロセスに特化して説明します。

 そもそもインサイトの定義ですが、様々なディスカションがあるので、定義に対するニュアンスも微妙に異なっているようです。私の定義では、インサイト=「消費者の既成概念によって隠れている、まだ言語化、顕在化されていない顧客ニーズ」と考えています。

 既に顧客自身が「~が欲しい」や「~に困っている」と表現するものは、顕在化しているニーズであり、インサイトとはみなしていません。そうではなく、市場の一般的な常識になっていない、顧客がまだはっきりと言語化できていないニーズ=顕在化していないニーズを、インサイトと定義しています。

 デプスインタビューを通じて、「何がニーズなのか」ではなく、「何が既成概念なのか」を見つけることです。

 繰り返しになりますが、インサイトとは、顧客の中では明確にそのニーズが言語化されておらず、顕在化されていないニーズです。なので、いくらインタビューで質問をしてもインサイトが直接顧客の言動表現されることは多くありません一方、顕在化しているニーズを基にした、消費者の既成概念というものはたくさん出てきます。

 たとえば、先ほどのアルコールのインタビューで、「仕事に疲れて、家に帰って飲む一杯で癒されたい」という発言があるとします。この言葉を率直に捉え、ベネフィットを設計していくと、前述した通り“仕事の疲れを癒せるようなハーブ&デトックステイストの健康アルコール飲料”のようなポジショニング設計になると思います。

 しかし、回答者の発言をよく深堀していくと、発言をそのまま鵜呑みにできないことがわかります。落とし穴は、仕事に疲れたことに対応する便益がハーブやデトックスであるという考えです。

 もちろん、一般的にも科学的にも、ハーブやデトックスを想起させるものが、癒しを与え、疲れを取ってくれることは間違いないでしょう。ただし、仕事に疲れた日に家に帰って、「まずは一杯」と飲むお酒に対して、多くの人は日常的に飲んでいるビールやレモンサワーの缶をプシュッと開けて飲むことこそに癒しを求めるはずです。その人にとって日常的に飲んでいる美味しいと思うアルコールこそが癒しであり、ハーブやデトックスのアルコール飲料は求めていない可能性があります。

 また別の方の意見として、「せっかくお酒を飲むのに、低アルコールだと何だか物足りない気がする」という発言があるとします。この意見を正面から捉えると、せっかくお酒を飲むのに、低アルコールだと酔えないから物足りないのでは、という仮説を持てます。

 しかし、よくよくインタビューを聞いていくと、酔いたいというよりは、帰って疲れている時には冷えた美味しい飲み物を飲みたくて、低アルコールだとお酒としての「味」や「香り」のクオリティが低いという既成概念があることがわかりました。つまり、表面的なニーズや既成概念の奥にある本質的なインサイトとしては、帰宅後の時間を楽しむために酔ったりすることを求めているのではなく、お酒の「日常的な美味しさ」を求めている、ということがわかります。

 下記のようなシンプルな1ページのフォーマットに沿って、ターゲットの表面的なニーズ、既成概念、インサイト、そしてそれに対応するベネフィットを、デプスインタビューを通じてまとめ、どのインサイトが本質的かを是非チームで議論してみてください。

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 次回記事はターゲットの思考や行動を整理し、コンセプトをアウトプットし、コンセプトを最終化するにはどうするか、詳細に解説します。いよいよ、「WHO/WHATの10ステップ」最後の3ステップです。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/03 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41005

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