トリプルメディアを戦略的に組み合わせながら、情報発信していく
タッチポイントについて解説してきたが、多くのマーケティング担当者は、商品そのものをいじったり、店舗や従業員をコントロールしたりすることが難しいだろう。コントロールしやすいのは、トリプルメディアを通した情報発信といえる。トリプルメディアとは、企業やブランドのWebサイト、企業SNSなどの「Owned Media」、新聞や雑誌などの「Earned Media」そして広告を購入する「Paid Media」の3つである。
「昔はエアコンを買ってもらおうとする際、テレビCMや新聞広告、雑誌の特集を出せば商品のことをわかってもらえましたが、今は皆さん、エアコンを買おうと思ったら、ダイキンのエアコンのテレビCMが流れているのを目にし、実際どうなのかとWebの比較サイトなどで確認するでしょう。友達がSNSで『ダイキンのエアコン、最高だった』と言っていたら、もっと説得力がありますね。その後Webサイトでスペックを見て、最終的に店頭に行って購入、もしくはECサイトでクリックする人もいるでしょう。このようにトリプルメディアの中を行ったり来たりしながら商品やサービスを購入しているのです」(片山氏)

トリプルメディアを戦略的に組み合わせながら、情報発信していくことが求められるだろう。
デジタルがブランディングに貢献する方法
様々なタッチポイントやメディアがあるなか、ブランドづくりにおいてデジタルの接点は、どのような役割を持っているのか。
たとえばクリック率やCPCなど、目先の数字に追われている状況がよくある。クリック率を高めることだけに目を奪われ、インパクトが強すぎる表現を使ったり、何度も広告を出したりして、消費者にうるさがられている、なんてことになってないだろうか。このいわゆるブランド毀損の観点を持つことが重要だ。「商品やサービスが売れる」「企業の事業活動に貢献する」というKGIに本当につながっているのか改めて考えておきたい。
このようにデジタル広告の隠れた一面をしっかり見ながら、ブランドづくりをしていくことが必要である。同時にこのことは、デジタル広告だけでブランドはできないということでもある。ブランドはタッチポイントやコンタクトポイントを含めたあらゆる接点からできており、デジタルのコミュニケーションはあくまでも一つの手段に過ぎない。
最後に片山氏はこうセッションをまとめた。
「ブランドは、デジタルという手段によってつくりやすくなったと感じます。勘と経験のある人や、優れたクリエイターだけができることではなく、着実に作っていくことができるようになりました。ただ、デジタルのデータでわかるのはあくまでも行動について、どう行動したかはわかっても『なぜそんな行動をしたのか?』という人間の“心理”はわかりません。そのため、デジタル時代のブランドづくりにおいては、消費者心理の理解がコミュニケーションには重要です。仮説にもとづき、行動やデータから心理を推測することが求められます。ここが皆さんの腕の見せ所です。本当に意味のあるブランドづくりを進めていただきたいと思います」
