ブランドづくりの目的を正しくする
「私は本やセミナーを参考にしても、ずっとブランドづくりがうまくできませんでした。ようやく自分の間違いに気づけたのが25年目。あまりに悔しいので、失敗した25年の経験をできるだけ皆さんに使っていただこうと本を出版しました」
本セッションは、片山氏の著書『実務家ブランド論』(宣伝会議)のなかから、ブランディングの秘訣を紹介することから始まった。
片山氏によると、あらゆる企業・商品・サービスのブランディングにおいて必要な考え方は、大きく4つある。「ブランドづくりの目的を正しくする」「ブランドとは何かを理解して、しっかり定義する」「自分たちがどんなブランドをつくりたいかを決める」「ブランドを作るための情報発信をする」である。
まず、「ブランドづくりの目的を正しくする」について片山氏は説明した。現代はモノからコトへと変化する時代。機能的価値よりも情緒的価値が評価されるため、ブランド戦略は重要な経営課題の一つであるとして、ブランドプロミスを定義したりロゴマークを新しくつくったりしている企業もあるだろう。
しかし、これらのアクションは、本当に経営課題の解決につながっているのだろうか。あるいは、「この商品に足りないのはブランド力」と考えブランド広告を実施するものの、商品を売るための販促広告ではなく、イメージ広告になっているケースもあるだろう。ブランドサイトも同様で、なんとなくかっこいいけれど、商品の詳しい説明がほぼないこともある。
このようなことが起こるのは、「ブランドづくりの目的があいまいなまま取り組んでいる」「本来は手段であるはずのブランドづくりが目的になっている」ことが背景にある。ブランドづくりの本来の目的は、商品やサービスが売れることであり、企業活動に貢献することということを忘れてはいけない。
ブランドとは何かを理解して、しっかり定義する
続いて説明したのは、「ブランドとは何かを理解して、しっかり定義する」について。
そもそもブランドとは一体何なのか。「生活者との約束」や「差別化」など、教科書に書かれているような内容を信じている人もいるだろう。しかし、なんとなくわかるけれど、ビジネスの現場では使いにくいと感じることがないだろうか。
ブランドとは何かを考えるため、具体例を紹介しよう。ここにシワのある赤い梅の写真があるとする。多くの人は写真を見て梅干しと思い、「すっぱそう」と思うのではないか。しかし、実際写っているのは梅を甘く煮たお菓子であり、すっぱくはない。この「“思い出すきっかけになるもの”にふれたときに“頭の中に自然に浮かんだイメージ”こそがブランドの正体である」と片山氏は語る。
つまり「すっぱい」は妄想であり、自然につくられたもの。そもそも外国人など梅干しを知らない人は、なんの妄想も出てこない。また、なかには梅干しに対して「塩分が多そう」と思う人もいるだろう。しかし最近は塩分が多い梅干しはあまり売られていない。このことからわかるのは、必ずしも正確な妄想(ブランド)、自身にとって都合のよい妄想(ブランド)が構築されるわけではないということだ。
ここまでのことをまとめると、「知らないものは、ブランドではない」「ブランドは自然にできる」「ブランドは勝手にできる」ということになる。