2022年はデータ活用が進化 DOOHで今できること
MZ:DOOHに関しては、2022年特に技術的な開発が進んだ印象があります。今、LIVE BOARDが展開するDOOHでは、何がどこまでできるようになっていますか?
櫻井:まず面の拡大についてお話しすると、LIVE BOARDで連携するDOOHのスクリーンは、現在国内で19,200超にまで拡大しています(2023年2月時点想定)。我々は「Out of Home領域のあらゆる生活導線上を捉えるネットワークとなる」ことを目指していますが、2022年はOOHの中でも特にリーチの大きい鉄道各社との取り組みを強化しました。面の数だけでなく、リーチやフリークエンシーなどその価値を可視化する取り組みも進めており、面の量と質、両方の観点からさらに強いメディアポートフォリオを作っていきたいと考えています。

そして何より、2022年は「DOOHにおけるデータ活用」が技術面で進化しました。LIVE BOARDで2022年4月にデータチームを新設しており、そこから一気にデータの活用が進んでいます。
現在LIVE BOARDでは、NTTドコモのユーザーデータなどを活用し、DOOHのプランニングからターゲティング、効果計測までをワンストップで行うことができるようになっています。たとえば、プランニングの段階では、NTTドコモユーザーの位置情報データなどと会員データを掛け合わせて、キャンペーンのターゲットがどのエリアにどのくらいいるのかを可視化することができます。また、効果計測においても、NTTドコモユーザーに対するアスキング調査に加え、IDデータを用いたログ検証により、ターゲットの来店率やアプリのダウンロード率を計測することが可能です。

日本マクドナルドのACC受賞作など事例も多数
MZ:実際に、DOOHの活用も活発になっているのでしょうか?
櫻井:はい。活用事例についても、様々なおもしろい事例がたくさん出てきています。
たとえば、ACC広告賞のシルバーを受賞した日本マクドナルドの「ランダムマック」というキャンペーン。これは、DOOHのスクリーンにハンバーガー型のQRコードを表示させ、そこからユーザーアクション=購買につなげるというものでした。ユーザーがQRコードを読み込むと、マクドナルドのメニューがランダムで表示され、ユーザーはそのメニューをそのままモバイルオーダーすることができます。ちなみに、接触者のアクションを起こすことができるという点から、OOHでQRコードを用いるというアプローチは、今世界的にも改めて見直されており、DOOHでも有効な手法の一つです。
さらにこのキャンペーンでは、スクリーンの場所やその日の天候、気温、時間帯などにあわせて、表示するメッセージを変えています。データを用いた柔軟な配信ができるからこそ実現したキャンペーンです。
ほかにも、ワーナーブラザーズが展開した『マトリックス・レザレクションズ』のキャンペーンは、DSP経由で世界数ヵ国へ配信されました。実はOOHの海外での買付は非常に複雑で大変です。DSPを経由して、簡単にグローバルでDOOHを展開、そしてレポーティングまでできるというのは素晴らしい進化なのです。
MZ:デジタル広告と近い世界まで進化しているんですね。
櫻井:以前は、OOHを時間帯別に配信するという発想すらありませんでした。そこから進化し、今は色々なデータに基づいて柔軟に配信をすることができる。これはLIVE BOARDの大きな強みでもあります。たとえば、少し前まで交通広告の枠は1週間単位で販売されていました。それが今は、6時間×3ブロックに区分された形でプランニングすることができるようになっています。
データに基づいたプランニング→ターゲティング→効果検証というDOOHのモデルが、2022年からのここ1年でかなり完成形に近づきました。私は海外のフォーラムに出たり、最新事例を見聞きしたりと、海外のDOOHの事情に日々アンテナを張っていますが、LIVE BOARDのDOOHのモデルは世界でもトップレベルにいると自負しています。「テレビ×モバイル×DOOH」がトリプルスクリーンとしてセットでプランニングされるよう、データ基盤の整備は引き続き進めていきます。
DOOHの概念を広め、OOH市場の成長に貢献していく
MZ:さらなる機能拡充として、2023年に考えられているアップデートはありますか?
櫻井:DOOHにインタラクティブ性・リアルタイム性を持たせ、クリエイティブの表現の幅をより広げていくというのが2023年の技術的な目標です。たとえば、2022年12月に、スカパーJSATさんとの協業でLIVE BOARDの自社スクリーンでライブ配信ができるスキームを開発しました。これにより、1つのスクリーンだけでなく、複数のスクリーンで同時多発的にライブ配信を行うことができるようになります。このようなテクノロジーを活用したクリエイティブの向上に、さらに注力していく考えです。

MZ:続けて、LIVE BOARDの中長期的な展望もお聞かせください。
櫻井:まずは「データドリブンなOOHとは何か?」という、DOOHの概念や考え方を広告業界に啓蒙していかなければいけません。最近は広告主様から直接DOOHについてお問い合わせいただくことも増えていますが、広告業界内での伝播力を考えると、やはり広告会社様に理解いただくことが非常に重要だと考えています。
日本の広告費の中で、現在OOHが占める割合は約6%。コロナ禍の前は約8%だったのが、2%下がった状況です。しかし、データドリブンにOOHのアカウンタビリティを証明できるようになれば、本来OOH市場には10%くらいまで拡大するポテンシャルがあるだろうと、OOH業界の主要各社で話しています。一つの業界として正しい努力をすれば、そこにたどり着けるはずです。業界に貢献し、盛り上げる形で、LIVE BOARDのミッションを果たせればと思います。