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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

困難を突破するには、効率の追求だけでなく「人に寄り添うリテール・エクスペリエンス」が重要

 NRF(全米小売業協会)が開催する世界最大規模の小売の祭典「NRF 2023 Retail's Big Show」が米国ニューヨークで1月15日~17日の3日間にわたり開催された。完全なリアル開催だった今回は、世界約75カ国35,000人以上が参加し、350人以上のスピーカー、175以上の様々なセッションが繰り広げられた。全3回の連載でNRF2023の主要セッションや展示の様子と、複数のブランド旗艦店舗を実際に筆者が訪れた体験から、小売業界へのヒントをお伝えする。

テーマはBreakthrough、困難の突破口を探し続けるには

 「昨年は歴史的に困難な年でした。」

 オープニング挨拶をつとめた米小売最大手ウォルマートCEOのジョン・ファーナー氏は昨年の状況をこう述べた。パンデミック以降、ようやく経済活動が再開したことで期待が高まったが、戦争によるエネルギー・原材料価格の高騰、急激な需要回復によるサプライチェーンの混乱、人件費高騰、インフレーションなど、小売業界は様々な課題に直面した。ファーナー氏は厳しい状況に触れ、その中でも「こうした難局に立ち向かった世界中の小売業者を誇りに思うべきです」と激励の言葉を述べる。

 続くファーナー氏とハーバード大学のジェームズ・キャッシュ博士の対談もシンボリックなものだった。

ウォルマート CEOジョン・ファーナー氏(左)とハーバード大ジェームズ・キャッシュ博士(右)(参照元:NRF)
ウォルマート CEOジョン・ファーナー氏(左)とハーバード大ジェームズ・キャッシュ博士(右)(参照元:NRF)

 キャッシュ博士は黒人初のハーバード大学の教員となった人物であり、ウォルマートやマイクロソフトなどの役員も務めてきた。一方で、出自に由来する経済状況や人種ゆえに様々な困難を経験した。そうした経験から困難な状況でも、あえて勇気を持って立ち向かい、変化し続けようとする努力することで、新しい景色が見えることを語った。

 NRF 2023のテーマは"Breakthrough(突破)”。世界が険しい状況に直面しているが、それに対する「突破口」を見出し続けることと重なる応援のメッセージを送った。

企業としての姿勢、人にフォーカスしたセッションが中心

 NRFの会場は広大な敷地面積を持つジャヴィッツ・コンベンション・センター。リテールに関する最新テクノロジーが展示される会場(その数1,000社超え!)とセッション会場にわかれている。巨大ホール・会議室で開催されるキーノートセッションは名だたる有名企業のCEOや役員がスピーカーだ。

 各セッションで語られた主要テーマを分類すると世界や米国の「リテール2023年の動向」のような全体的なテーマを扱うものの他、「メタバース」「Web3/NFT」「ドローン」といった最新テクノロジー系のセッションももちろんのこと、「パーパス」「サステナビリティ」「リーダーシップ」「働き方や従業員に対する取り組み」など企業としての存在意義、姿勢をテーマとして扱かったり、セッションの中で言及する場面が多かった。その他「ミレニアル世代/Z世代/α世代の消費」「リセール」「データドリブン」「リテールメディア」など各個別のテーマが話された。

 本稿では中でも人間的要素・エクスペリエンスに着目したテーマをピックアップしてお伝えしたい。

テクノロジーの進化と人間的要素とのバランス

 ユーロモニターインターナショナルのグローバルリード ミシェル・エヴァンス氏のセッションでは、2023年の小売業界においてカスタマー動向を左右する大きなトレンドのキーワードとして「オーセンティック・オートメーション」を提言した。

ユーロモニターインターナショナル グローバルリード ミシェル・エヴァンス氏(参照元:NRF)
ユーロモニターインターナショナル グローバルリード ミシェル・エヴァンス氏(参照元:NRF)

 オーセンティックとは「本物の」「信頼できる」といった意味を持つ。2023年はさらなる効率化や自動化に向けてテクノロジーの発達が予想されるが、その上で「テクノロジーはどこで活躍するべきか、人間的な要素とのバランスを見つけることがより重要」とエヴァンス氏は指摘する。

 人間的な要素とのバランスとはどのようなものだろうか。NRF展示会場に目を向けると様々な興味深い最新テクノロジーが展示されていた。

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この記事の著者

西 湧太(ニシ ユウタ)

 電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CXUXデザイン事業部 リテールエクスペリエンスグループ兼グローバルビジネス部門CXグループ

 電通デジタル入社後、小売・金融・製薬・通信などの幅広い業界の国内クライアントおよびグローバルクライアントにてUXデザインに必要な、リサーチ(定量/インタビュー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/27 11:48 https://markezine.jp/article/detail/41234

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