リアル店舗への再注目―統合エクスペリエンスの一層の強化
大手高級スーパー ホールフーズ・マーケットのCEO ジェイソン・ビューチェル氏はテクノロジーやデジタルビジネス領域を専門にしてきた人物だ。そんな同氏は、店舗販売の成長可能性について言及した。

パンデミック以降、実店舗の拡大について懸念するような質問を受けることについて、「私たちは今後も店舗を増やしていく可能性があると、とても強気です。」と述べる。具体的には、1年に3店舗以上オープンし、現在の約50店舗から最終的に100店舗まで拡大するという。店舗の価値として「お客様が気軽に足を運べ、働くチームメンバー(従業員)とつながり、食にまつわる楽しい体験を目指しています」と語る。
筆者がNYで体験したホールフーズ・マーケット

実際に筆者もNYにあるホールフーズ・マーケットの店舗に足を運んだ。店舗内に入った瞬間に思わず目を惹くような色鮮やかなオーガニック野菜やフルーツの棚はどの店舗でも変わらない。オートミールの巨大バイキングがあったり、バラエティ豊かなローカルプロダクトが選べる空間は、買い物自体が楽しい気持ちになる。
それに加え生鮮食品売り場では鮮魚コーナー、精肉コーナー、ピザやケーキ等それぞれのセクターにプロの職人が配置されており、相談しながら購入をすることができた。買い物自体の気持ちが高まる体験ができるスーパーだが、利便性も良い。一部の店舗にはファストレーンが設けてあったり、レジに並ぶ列の上にモニターが表示され空いているレジを教えてくれる。
慣れていない私は袋の場所がわからず(実際はセルフレジ下にすぐにあった)店員に聞いたが、その場には置いていない「スモールバックは必要ですか?」と親切に尋ねてくれた。また店奥にはAmazonで注文した商品の受け取りや、リターンができる専用カウンターがあった。

ビューチェル氏は店舗の位置づけを「お客様の声を聞く、いわばテストラボ」であり、「お客様は両方のチャネルで買い物をされるので、最終的には私たちが望むように、両方のチャネルでお客様を驚かせ、喜ばせることができるようにすること」が重要であると、より統合されたエクスペリエンスの重要性を語る。筆者が訪問した店舗はまさに、便利な体験と人に寄り添った体験が共存していた。