特定の人が特別扱い、ではなく“誰もが”が重要
――ケラッタでもDE&Iを浸透させる働きかけをされているのでしょうか。
はい。私もDE&Iの考え方をことあるごとにメンバーに話していますし、制度作りにも注力しています。ケラッタは8割が女性で子育て世代も多いので、できるだけ残業せず、どうしても必要な際は上長確認を取るといった仕組みにしています。特にMOON-Xと統合してからは、MOON-Xのメンバーには「こういう状況があるから夜や土日にはなるべく連絡を控えてほしい」とお願いしたりしています。業務時間外にメールやSlackが届いたら気になってしまう人がいる、という共感力・想像力が大切です。

――ケラッタの場合、子育て世代が多いことは事業において大きな強みかと思います。
その通りです。皆、ベビー&マタニティ向けの事業に親和性を感じて入社しているので、商品部以外のメンバーにも開発に関わってもらっています。ヒアリングや試作品のモニターは日常茶飯事ですし、皆のリアルな経験から、商品開発の種も育てられています。新商品に自分のアイデアが採用されていたら、ブランドへの思い入れも高まります。
ただ、働く女性をサポートする文脈でお話をするときにいつも添えているのですが、ワーキングマザーに限らず、誰か特定の人たちが特別扱いされるのは、やはり違うと思います。時間に制約がある人の業務のしわ寄せが、比較的自由が利く人に偏っていたらフェアではないですし、誰にでも自分や家族が病気になって休む可能性はありますよね。
誰もが能力を生かして働きながら、困ったときは助けてもらえる、周囲にも手を差し伸べられる環境作りが重要です。
――子育て当事者としての経験を事業に生かせる、そんな仕組みや雰囲気があることで、メンバーの方とのエンゲージメントを深められているのですね。
まさに、そうですね。それをもっと強めていきたいと思っているところです。
顔を合わせて現場をともにする大切さ
――MOON-Xとケラッタは、事業内容がそもそも異なりますよね。MOON-Xは「ブランドと人の発射台」というミッションを掲げ、年齢や性別などに関係なく世界で活躍できる人材の輩出を目指されています。多様性を大切にしながら活躍の機会を作るために、MOON-Xではどのような働き方をしているのでしょうか。
MOON-Xは創業時からスーパーフレックス制度を導入しています。どこにいてもいい、各自の仕事をまっとうして結果を出して走り抜けよう、という企業文化があり、それがうまくワークしています。たとえば共同創業者でCTOの塩谷(えんや)はベトナムに移住していて、よくヨーロッパにも行っていますが、私とはほぼ毎日話していますし、距離や不都合を感じたことはありません。
しかし、どの会社でもこれが有効かというと、違うでしょう。ケラッタは根幹の事業がものづくりで、しかもベビー&マタニティの領域ですから、皆で集まって実物を触り、徹底的に品質を確かめて安全性をレビューすることが何より重要です。ですから、リアルな出社が基本です。
――それぞれのビジネスによって、皆がどう動けるかを考える視点が大事なのですね。ちなみに、ケラッタでは出社が難しいときの対応は整えているのでしょうか。
もちろんです。お子さんの発熱などの際は、上長の承認で在宅ワークができますし、保育園からの呼び出しも最優先です。私も、子どもが小さいときは周りに支えられてきたので、お互い様ですね。