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【特集】次の10年をつくる、組織と人材

老舗企業として有する資産を輝かせる 小林製薬の組織と人材の強みを活かすDX戦略

なぜ、エージェンシー/ベンダー側に人材が寄ってしまうのか?

――人材の獲得や強化については、どのように取り組まれていきますか?

石戸:DX戦略の中にデジタル人材の育成も掲げていますが、各人の実情に即した形で会社全体としてデジタルリテラシーを上げていくことを目標にしています。必要な方にはデータサイエンスや機械学習に関するトレーニングを支援しますし、普段の業務でそこまで必要としない方にはデジタルを活用した業務効率化を支援することもあるでしょう。こうして会社全体のトップラインを上げながら、底上げもしていきます。

――事業主側におけるデジタル領域に経験のある人材の獲得は、まだまだ発展の余地があるように見えます。石戸さんは以前、デジタル領域に経験のある人材が広告代理店/ITベンダー側に寄っている状況を指摘されていましたよね。

石戸:ええ。小林製薬を含め多くのメーカー企業が、広告代理店やITベンダーで経験を積んだマーケティング人材、デジタル人材を求めているのは間違いないと思います。反対に、広告代理店やベンダー側にも、事業主側で働きたいと思っている方はたくさんいらっしゃいます。お互いのニーズが一致しているのに、あまり人材の流動が起きていないというのは、非常にもったいないことです。

 原因としては、事業主側が採用領域におけるマーケティングや広報をやり切れておらず機会や情報が行き届いていないこと、メーカー企業のマーケティング職は狭き門だと思われていること、メーカー企業でマーケターとして活躍するのは難しいと思われていることなどがあると見ています。ですが、特に当社のようにデジタルシフトを起こしているメーカー企業には、デジタルに特化した広告代理店やITベンダーでキャリアを積んだ方が活躍できるチャンスが多くありますし、それぞれが協業する場面で価値が生まれる瞬間もたくさんあります。

 Googleで働いていたときに実感していましたが、アメリカでは、メーカー/ベンダー/エージェンシー間で有機的に人材が流動しています。それゆえに業界内でみんなが共通言語を持って仕事ができるし、デジタルマーケティングもどんどん進化していくのです。こういった雰囲気が日本でももう少し高まっていくといいなと思っており、小林製薬でも組織や企業文化の多様化を進め、透明性があって働きやすい環境づくりに向けて取り組んでいるところです。経営としても、多様性をもってイノベーションを起こすことを推進しているので、新しい仕事のやり方や違う価値観・カルチャーを持った方を受け入れ、いかに良い形で組織に融合させていけるかが、これから重要なポイントになってくると考えています。

既存の枠組みを越え、組織と人材を多様化させていく

――最後に今後の展望をお聞かせください。

石戸:私もそうですが、就業する人のほとんどは、何かしらの組織で働いている“組織人”です。組織人には“枠組み”と“ルール”があるはずで、私は「ルールを破らない範囲で枠組みを超え続けていく」ということが、とても重要だと思っています。

 たとえば、私は10年程前サイバーエージェントで働いていたときに育児休暇を取りました。実はこのとき、サイバーエージェントの男性社員で育児休暇を取ったのは私が初めてだったんですね。当時を振り返ると、育児休暇を取るのは非常に難しい環境でしたが、次第に「自分も取りたかったんです」と後に続く社員がどんどん出てきて、組織文化が変わっていきました。男性は育児休暇を取ってはいけないなんてルールはないはずなのに、透明のアクリル板のように存在する枠組みを越えられていなかったのでしょう。枠組みを少し越えるだけで、そこには新たな価値が生まれます。大きな組織になればなるほど規律の中で動くようになってしまいますから、枠組みを越え続けるという概念は大企業にこそ必要だと思うのです。

 あくまで私の個人的な解釈ですが、小林製薬は私を採用した時点で、これまでの枠組みを少し越えたのではないかと感じています。私からすると当たり前のことを小林製薬でも当たり前のことにしていけば、従来の枠組みを越えた良い文化やルールを形成することに繋がるかもしれません。さらに、小林製薬の現場には、自ら枠組みを越えようとする主体性と行動力のある方々がたくさんいます。そうした個の力を活かすためにも、「個の主体性をさらに高め、組織力にも昇華させること」「柔軟なルールメイキング」が、小林製薬がさらにパワーを発揮する上で重要になってくると思っています。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41915

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