電通 天野彬さんのおすすめ
本年3月に出版されたばかりの本書は、いまマーケターが最も注目するテーマのひとつ「ショート動画」について余すことなく説かれた珠玉の一冊となっている。
まず前半のショート動画隆盛にいたる現代の情報環境についての読み解きから、中盤のショート動画の具体的かつ詳細な使い方までのつなぎの上手さ。そして視座を上げてSNSマーケティングがこれからどう進展していくのかを産業論的に論じた後半に至るまで、同領域で仕事をする評者としても驚かざるを得ない密度で論が展開される。その意味で、12万字のボリュームなのに「タイパが良い」のだ。
また明石ガクト氏の文体の特徴は、ビジネスパーソンとしてのクールな筆致と、界隈を盛り上げるための檄文とのミクスチャーである。読者を励まし、若い人・新しいことにチャレンジする人に資するよう書かれていることがわかる。動画のパイオニアが説く、まさに大全にして教典。読めば読むほど勇気が湧いてくる一冊だ。
電通メディアイノベーションラボ主任研究員 天野彬氏
東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(M.A.)。SNSのマーケティング活用や若年層のトレンドについての研究開発やコンサルティングを専門とする。最新著に『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる―ショートムービー時代のSNSマーケティング―』。日経Think! エキスパートコメンテーター。明治学院大学非常勤講師
GiftX 飯髙悠太さんのおすすめ
昨今サステナビリティという言葉は一般化されてきており、ESGやSDGsの実現へと世界の企業が動き出しています。一方で個人としてその影響を感じることはほぼないのではないでしょうか。
以前は大量生産、大量消費を行うことで企業は利益を得てきていましたが、その流れは終わりに向かっています。そして、未来に優しくないビジネスは淘汰されていく中で、個人の力はどうあるべきか。村上誠典さんの『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』は、社会を動かす5%の消費者の一人になるには、ということを考えさせられる書籍となっています。
株式会社GiftX Co-Founder 飯髙悠太氏
2014年株式会社ベーシックにて、マーケティングメディア「ferret」を立ち上げ、執行役員に就任。2019年株式会社ホットリンクに入社し、執行役員CMOに就任。2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftX共同創業。自著は『僕らはSNSでモノを買う』、『BtoBマーケティングの基礎知識』、『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』。
Brandism 木村元さんのおすすめ
「あなたの会社やブランドがあることで世界はよりよくなっているだろうか?」
働く上での、究極の問いを筆者は投げかけてきます。
ユニリーバのCEOとして10年間連続トップラインとボトムラインを伸ばし続けたグローバルリーダーの経営論は、「より良い社会」と「収益性の高いビジネス」は共存できないという旧来の資本主義思想を真っ向から否定し、グローバル規模でのより良い社会作りを実現しながら、驚くような営利成長を実現するためのマインドセットと具体的な方法のヒントを与えてくれます。
経営者はもちろん、ブランドマネージャーや事業責任者にとって、自社や自身が存在する意義を再考するきっかけとなる、今の時代に必読の一冊です。
株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏
ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、2020年1月より、ユニリーバ・ジャパンにおけるスキンクレンジングカテゴリーならびにダヴブランドを統括。2021年7月より同ユニリーバ・グループのプレミアムスキンケアを扱うラフラ・ジャパンの代表取締役に就任。また、2021年よりBrandismを創業し、BtoBからBtoCまで、幅広くマーケティングのサポートを行っている
才流 栗原康太さんのおすすめ
マーケティングの世界では、「ブランドが成長を続けるためには、新規のノンユーザー/ライトユーザーを獲得し続けることが重要である」と言われている。
直感的には、「ブランドに対する熱烈なファンが売上を支えるため、リピート購入や継続購入率を伸ばすべき」だと思いがちだが、実際には、ブランドの成長には熱烈なファンだけでなく、ノンユーザー/ライトユーザーの獲得も重要である。彼らこそが、売上と成長に大きく寄与するからだ。
新規ユーザー獲得の重要性は『ブランディングの科学』や『確率思考の戦略論』などの書籍で詳しく語られているが、”どうやって新規のノンユーザー/ライトユーザーを獲得すれば良いのか?”という疑問への言及は少ない。『クソコンテンツを爆売れさせた ハリウッド流マーケティング術』には、その「新規のノンユーザー/ライトユーザー獲得方法」が具体例とともに数多く紹介されており、ブランドの成長戦略に役立つヒントが得られる。
株式会社才流 代表取締役社長 栗原康太氏
東京大学卒業。2011年に株式会社ガイアックスに入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。「メソッドカンパニー」をビジョンに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。著書に『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)、『新規事業を成功させる PMFの教科書』(翔泳社)など。
LINE 佐藤将輝さんのおすすめ
伝統的な書籍は、多くの方がすでにお読みになっているかと思いますので、最近の話題書から『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』をご紹介したいと思います。
本書は「顧客が見えなくなると、事業成長が止まる」という書き出しから始まります。私は、普段事業開発やPdMといった役割を担うことが多いのですが、取り扱うテーマが大きいと、どうしても主語となる顧客のイメージも大きくなってしまいがちです。
大きくなってしまった顧客像は抽象度が高く平均的で、解像度が低い。この大きくなってしまった顧客像を実際の顧客に近づけるための具体策が本書に書かれています。
マーケティングを広義に捉えると「顧客が商品やサービスを自然と手に取る仕組みを作ること」と表現することもできますが、この「顧客」を改めて考えるきっかけとして、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
LINE株式会社 マーケティングソリューションカンパニー プランニング統括本部 ビジネスデザイン室 室長/デジタル庁プロダクトマネージャー 佐藤将輝氏
新卒でデータベースマーケティングの支援会社に入社し、マーケティングセールスや事業企画を経験した後、2018年にLINEに入社。ビジネスデザイン室の室長を務めながら、副業でデジタル庁や地方自治体のアドバイザーとしての活動もしている
良品計画 篠原佳名子さんのおすすめ
マーケティングは直感的に感性でアイデア創出をする右脳と、ビジネスジャッジを論理的かつ現実的に検討する左脳のどちらも必要とする職業だと思います。
その中で、広告・コミュニケーション領域からキャリアを積み重ねた方は、高確率で左脳=ロジカルシンキング側をご自身の課題と捉えることが多いように思います。チームメンバーからロジカルシンキングについて学習する手段を聞かれた時に様々提案したのですが、"シンプル・イズ・ザ・ベスト"な本書が、最も本人の頭の中にインストールしやすいノウハウだとその後の反応で感じています。
本をあまり読まない方でもわかりやすい図や絵の解説があり、自分の頭の中にピラミッド構造を作れるきっかけになるかと思います。
株式会社良品計画 EC・デジタルサービス部 企画課 篠原佳名子氏
2022年より良品計画 EC・デジタルサービス部にて、“顧客視点のOMO”をテーマにサービスデザイン・コミュニケーション設計・UI/UX改善に取り組む。社外では公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構 幹事にも就任し、デジタルが当たり前になった世界でのマーケティングの実践研究やセミナー運営を行う。これまではTwitter、トリドールホールディングスにて、マーケティングコミュニケーションの領域で戦略立案と実行を推進
Tinder Japan チョウ・キョさんのおすすめ
SF小説をたくさん読んできた中でも、かなり衝撃を受けた作品です。
作者の劉慈欣氏の本業は作家ではなく発電所のエンジニアで、物理学のコンセプトや専門用語が頻繁に出る「ハードコアSF」系とは言えますが、理系出身のため華やかな描写や文学的なテクニックがほとんどなく、淡々とわかりやすい言葉を並べて物語りを広げていくスタイルです。「小学生の作文みたい」と言われるほど飾らない極シンプルなランゲージで宇宙規模の壮大なストーリーを語っていきます。
時間や空間のような「不変なもの」に対して、人間の考え、命の儚さ、未知への恐怖のような「無常」がいかに絶望的に無力か、そのシンプルな言葉だからこその力強さを感じさせられました。ストーリーテーリングがとても特徴的でユニークな作品なので、マーケターの皆様には“表現のバリエーション”という視点でぜひ読んでいただきたい作品としておすすめします。
Tinder Japanカントリーマネージャー チョウ・キョ氏
2012年にWeb開発の会社を立ち上げ、法人向けコミュニケーションツールの開発、販売事業を行う。2017年には、世界最大級のライブ配信プラットフォームBIGO LIVEの日本法人代表就任。2019年、同社の東アジア・パシフィックの地域代表に就任。2021年にTinder Japan入社、日本と韓国の事業統括を行い、現在に至る。友人と旅を楽しむなどアクティブに過ごすことが大好きな一方で、実はインドア派。休みの日には料理に没頭したり読書したり、映画やNetflixを見て過ごすことが多い
ブランドジャーナリズム 林亜季さんのおすすめ
小手先のノウハウ本や、安易な成功譚に辟易していませんか? まとまった時間がある時にこそ読みたい、稀代の起業家の一代記をご紹介します。
本書にはリクルート創設者である江副浩正氏の野心と志から、一代で築いた繁栄と栄光、政財界の大物を巻き込んだリクルート事件による挫折、突然の最期に至るまで、清濁併呑の挑戦のすべてが詰まっています。
緻密な取材に基づいた圧倒的な情報量とストーリー、筆力に痺れながら一気読み3回。ビジネスとは、成長とは、組織とは、経営とは、情報とは、広告とは、メディアとは、権力とは、正義とは、時代とは。本気で仕事をするということは、真に価値を生み出すということは、一体どういうことなのか──考えるところ多し。
読了後、不思議と爽快感があり、勇気と反骨心が湧いてきます。起業や挑戦を志している方、仕事人生の岐路にある方にこそおすすめします。
株式会社ブランドジャーナリズム 代表取締役 林亜季氏
東京大学法学部卒。2009年に記者として朝日新聞社に入社し、新規事業創出部門、経済部記者を経て同社を退社。2017年、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンに入社。ハフポスト日本版の広告事業を統括し初の黒字化に貢献。2018年、Forbes JAPAN Web編集部副編集長 兼 ブランドボイススタジオ室長に就任。2020年7月からNewsPicksの法人部門NewsPicks for Businessと企業内新規事業創出を手がけるAlphaDriveのコンテンツプロデュースを統括。2022年に企業やブランドのジャーナリスティックな発信を支援するブランドジャーナリズムを複業として設立。文部科学省の大学教育デジタライゼーション・イニシアティブ ステアリングコミッティ委員も務める。
プラスクラス 平地大樹さんのおすすめ
『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』は、形式上のリーダーはWhat(=結果)を語り、本物のリーダーはWhy(=理念と大義)を語る、という内容で、人を動かすにはWhyを語れるリーダーになろう! という内容ですが、これは目指すべきリーダー像という話なだけではなく、マーケティングやブランディングにおいても同じことが言えるのではないか? と読みながら脳内変換できるマーケター向けの内容になっています。
ブランドや企業は、Whyを語ることで、ファンや支持者を生み、それがサービスや商品への愛を生む。企業は、インスパイア型リーダーになることで長らく愛されるブランドになれる(=ブランディング)と確信しました。モノではなくコト、そしてパーパス経営などということが語られるこれからの時代の経営者、そしてマーケターは、Whyを語るトレーニングをしなければなりません。
アップル、サウスウエスト航空、スターバックスなどの事例からもブランドにおけるWhyの必要性は大いにとらえられ、ケーススタディも多い本著はイメージが湧きやすい良著になります! 著者サイモン・シネックのTEDでの動画も合わせてご覧いただくとよりイメージも湧くかもしれません。
プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社 代表取締役 平地大樹氏
元バスケ選手。渡米し、プロを目指すも挫折。引退後、人材、WEB業界を経て2011年にウェブコンサル会社で起業。2016年に念願のスポーツコンサル会社も設立し、現在118のクラブと20を超えるリーグ・協会をご支援中。ビジョンは『スポーツに関わるすべての人がハッピーになる』。ミッションは『日本のスポーツ全会場を満員にする』。知的障害者チアリーディング協会理事。スポーツ庁スポーツ産業潜在分野検討委員会委員。全国のクラブに足繁く通い、ついでにご飯とサウナを巡るホテル暮らし。4児の父。
グロースX/インサイトフォース 山口義宏さんのおすすめ
『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』は人の話を「ジャッジメントする気持ちを持たず、自分が次に何を話すかを考えながらではなく、真摯に耳を傾ける」ことで得られる気づきや共感の豊かさが説かれています。この書籍はマーケティング本ではないのですが、この話を読んだときに「これは顧客インサイトを見出す人の極意だ」と思いました。どれだけヒヤリングの項目や聞きかたを学んでも、ジャッジメントする気持ちを手放さないと、本当に相手の真意や気持ちに向き合って理解することができないからです。
この書籍は、人生や人間関係を豊かにする知性やヒントに満ちているのですが、同時に「形式知を学んでいるのに顧客インサイトを感じ取る力が弱い人が持つべき心構え」の全てが詰まっていると感じました。相手をジャッジせずに話を聞いて、まずは受け止める。これができたら人生、人間関係、マーケティングのすべてがうまくいきそうです。
株式会社グロースX 取締役COO
インサイトフォース株式会社 取締役
山口 義宏氏
メーカーで戦略コンサルティング、コンサルティング会社でブランドコンサルティングのデリバリー統括等を経て、2010年にインサイトフォースを設立。BtoC/BtoB問わず、100社以上の企業のブランド~マーケティング/組織開発支援など戦略コンサルティングに従事。2022年6月にグロースX取締役COOに就任。著書に『マーケティングの仕事と年収のリアル』、『デジタル時代の基礎知識 ブランディング』『マーケティング思考 業績を伸ばし続けるチームが本当にやっていること』など。
JAL 山名敏雄さんのおすすめ
新年度になり、就職や異動ではじめてデジタルマーケティングに携わることになった方も多いのではないかと思いこの本を選びました。
初心者向けに概要をざっくりと網羅した書籍があまりない中で、本書ではオールカラーの図や表を用いてわかりやすく全体像が解説されています。それだけでなく、様々な企業の実例も豊富に紹介されており、「概念はわかったが、じゃあ実際どんなことをすればいいの?」という疑問へのヒントも提示されています。特に顧客の発見から出会い、関係を深化させてファン化するまでの幅広い領域が網羅されているので、この分野に注力したいマーケターにも参考になると思います。
著者が事業会社のマーケター出身ということもあり、御自身が取り組んでこられた実体験をベースに書かれているので、既にデジタルマーケティングに取り組まれている方にとっても自身の頭の整理に役に立つはずです。新人への指導や、デジタルマーケティングにあまり明るくない上層部への説明にも使える、おすすめの一冊です。
日本航空株式会社 Web販売部 山名敏雄氏
新卒で日本航空に入社。IT企画部門、成田空港での接客業務、ECサイト企画運営部門を経験した後、広報部Webコミュニケーショングループを統括し、企業コミュニティ運営の他、SNSを活用した各種コミュニケーション施策の企画などを担当。現職では、JAL航空券予約、購入サイトの企画、運営全般における特命担当。
MarkeZine編集長 安成のおすすめ
『Buyer Personas: How to Gain Insight into your Customer's Expectations, Align your Marketing Strategies, and Win More Business』は、高広伯彦氏が主催している「デジタル時代のB2Bマーケティング講座」に第7期生として参加した時に、参考図書として紹介いただき、読み進めている本です(原書なので、英語の勉強にもおすすめ)。
著者はBuyer Persona Institute CEOのAdele Revella氏。2015年に刊行された本ですが、「顧客起点」「ペルソナ」「カスタマージャーニー」といった言葉が巷に溢れている今こそ、本書から学ぶべきことは多いです。「どうやって売るか」という企業本位の視点ではなく、「なぜ買うのか」という買い手の視点からマーケティング施策を描けているのか。本質的な顧客起点の発想をするために、ぜひMarkeZine読者のみなさんに手に取っていただきたい本です。
株式会社翔泳社 MarkeZine編集長 兼 ECzine編集長
安成蓉子
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。2023年4月、現職。プライベートでは2児の母