顧客起点マーケティングで、意思決定の土台から変わっていった
第3回は、アソビュー社が顧客起点マーケティングのフレームを活用し、どのようにPDCAを回してきたかお話しします。
顧客起点が装着される前、私の事業運営における意思決定の土台は、いわゆるデータドリブンでした。Howである施策を一定の回数試行し、得られたデータからどう舵を切るかを判断していました。たとえば、コンテンツSEOであれば100本記事をリリースし、その動向から集客や販売の見込めるコンテンツを定義する。新しい広告チャネルなら、まず100万円を投資し、どの変数が最も改善しやすく、目標のCPAに到達するかを判断するといった具合です。
ですので、プロダクト改善においても、今ある機能を中心にA/Bテストを繰り返していました。「数字に貢献しているもの=正しい判断」という価値観・考え方が染みついていたように思います。もちろん、「データドリブン=有効ではない」と言いたいわけではありません。「なぜ対象の施策では数字が出なかったのか?」という問いを立てる習慣を持てていなかったのが、過去の自分の反省点です。
では、顧客起点マーケティングのフレーム導入後、どのようにして施策を振り返ってきたのか? その方法は、ずばり「顧客に直接聞く」。つまり、N1インタビューです。
KPIではなく、顧客の声/心理状態に向き合う
Webサービスの強みである多様なデータを収集し、それを分析するというプロセスを止めたわけではありません。新しい機能、キャンペーン、メルマガ、何でも良いのですが何かしら施策を実施した際、以前の私たちは顧客の行動の結果(KPI)しか見ていませんでした。そうではなく、実際のその施策を体験した顧客にどんな心理的変化が起き、その結果どのような行動を取ったのか、その顧客の心理状態に向き合うようにしていったのです。
具体的には、対象となる施策を体験した人を計測できる状態で施策を行い、私たちが期待する行動をした人・していない人のそれぞれにN1インタビューの打診を行います。そこで、休日の過ごし方に関する全体の話を伺いつつ、各論で対象の施策をいつ認知したか、なぜ行動を起こしたか(起こさなかったか)、アソビュー!の印象は変化したか否かなどを聞いています。
これにより、施策の評価に深さが生まれました。「この施策は顧客の心理に影響を与えられているが、まだ伝わり切っていないため、コミュニケーションアイデアの再考が必要である」だったり。「この施策は成果は出ているが、顧客心理上マイナスの効果を生むので今すぐ停止する」だったり。今までにない、顧客に寄り添った意思決定ができるようになりました。
このN1インタビューは現在も週1回から隔週程度で続けています。最終的な成果に繋がっていない苦しい時期にも、「顧客には伝わっている。あとはこれを愚直に継続できるかだ」と、顧客の声が事業を運営していく上での心の支えになっていました。