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イベントレポート

読売ジャイアンツのファン分析でわかった、LTVを上げるトリガーとは?施策反映のポイントとともに解説

 日本のプロ野球球団として長い歴史があり、強力なファンコミュニティを持つ読売ジャイアンツ。公式サイトのリニューアルにあたり球団ファンの調査を行ったところ、同社も把握していなかった意外な実態が判明した。2023年4月6日に行われた「JapanマーケティングWeek春」では、読売ジャイアンツのマーケティング担当・読売新聞東京本社の鳥羽渉氏と、サイトリニューアルを支援したWACULの垣内勇威氏が対談。本記事ではその様子をレポートする。

サイトリニューアルにあたり、ファン分析に注力

鳥羽:読売ジャイアンツの公式サイトにはチーム情報や最新情報を掲載しており、他にもファンクラブサイト・ECサイト・チケットサイトがあります。今までそれぞれのサイトが別で動いていたため、思うような効果が出ていない状況でした。そのため、リニューアルが必要だと考えました。

読売新聞東京本社 事業局デジタルコンテンツ部 部長 鳥羽渉氏
読売新聞東京本社 事業局デジタルコンテンツ部 部長 鳥羽渉氏

垣内:WACULはデジタルマーケティングのコンサルティングを提供しています。ジャイアンツとの今回の取り組みは、鳥羽さんから「公式サイトをリニューアルしたい」というご相談が寄せられたことからでしたね。

 まず前提として押さえておかなければならないのが、サイトリニューアルは手段でしかありません。そのため、相談をいただいた際に「サイトの目的とKPIは何ですか?」と尋ねたところ、球団側からは「ファンに喜んでもらうため」と回答が返ってきたんです。

WACUL 代表取締役 垣内勇威氏
WACUL 代表取締役 垣内勇威氏

鳥羽:おっしゃる通り、当初は目的がなくリニューアルありきでしたね。リニューアルさえすればPVも増えてECサイトやチケットサイトでの売り上げも増えるだろう、といった理論でした。

垣内:「ECでモノを売る」「資料請求してもらい営業する」といった、ゴールが明確なサイトは運営の目的もわかりやすいです。一方で、ジャイアンツのような企業はサイトの目的が曖昧になりがちです。そこで、ファンがどういう存在であるのかを解き明かすことから始めました。

「ファンに甘えるマーケティング」から脱出せよ

垣内:まず「人はどのようにジャイアンツファンになるのか?」を明らかにするべく、デプスインタビューと定量アンケートを実施しました。インタビューではファン約30人に対してリモートでヒアリング。そして結果をもとに「ファンレベル」を区分けしていきました。

 ジャイアンツファンおよびファン経験者は、日本の全人口のうち1割強にのぼります。これだけの人が、1回でもファンだった経験を持つというのは驚きのデータです。この1割強に的を絞った戦略を立てるのが、マーケティング的に考えると適切だといえます。

 ファン経験者をレベルごとに区分けすると「初心者ファン」「特定選手ファン」「熱狂的ファン」、そしてボリュームゾーンでありカギを握るのが「熟成ファン」と「離脱ファン」になります。

 まずは「初心者ファン」について深掘りしていきます。昔は家族ぐるみでファンになっていくケースが多かったですが、最近は違うようですね。

鳥羽:そうですね。YouTubeやテレビ番組で見た選手の素の姿・人柄に惹かれ、ファンになる人が増えています。

垣内:野球の試合とは関係ないところでファンが生まれているんですね。こうした初心者ファンの課題は、球場に行っていないことです。ファンのレベルが引き上がるのは、実際に球場で熱狂的な雰囲気の中で野球観戦を味わってこそ。しかし、初心者ファンは球場に行くまでのハードルがとても高いようでした。

鳥羽:初心者ファンは球場でのふるまいがわからず、「どんな服で行けばよいのか」「どのシートを買えばいいのか」「チケットの買い方がわからない」と悩みを抱えています。球団はそのファンに適切な案内が出来ていませんでした。

垣内:そこで公式サイトをリニューアルする際、「観戦ガイド」を追加しました。サイトの一番上の項目に設置し、試合当日の服装や座席の選び方などを丁寧に案内しています。

 何もしなくてもファンが増えていた時代は、サイトがわかりづらくてもファンが見つけくれるので、「ファンに甘えるマーケティング」でもOKでした。しかしこれでは初心者には通用しないので、ケアが必要ですね。

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この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42185

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