ポイントは「見たい情報」を「見たい場所」に置くこと
垣内:2023年1月に実施したサイトリニューアルで、意識した点は何でしょうか?
鳥羽:サイト上のコンテンツの拡充です。これまで選手ページで紹介されていたのはプロフィールと成績くらいでしたが、リニューアルでアンケートや応援歌、YouTubeの動画、グッズ販売サイトへのリンクなどを追加。「ファンが見たい情報」をいかに「見つけたい場所」に追加・関連付けしていくか、に注力しました。また選手プロフィールに同年代や同郷の選手も掲載し、特定選手から箱推しになってもらう工夫も行いました。

垣内:今後は「仲の良い選手」などのさらなる関連付けを実装できれば、さらにファンレベルが上がる可能性もありますよね。リニューアルオープン後の数ヵ月で、成果はありますでしょうか?
鳥羽:1人当たりのPVや関連ページへの遷移率がアップしました。今後より長い目で見れば、さらに効果が見えると思います。今回、事前にファンの分析をしたので非常に有意義なリニューアルになったと考えています。
ECサイトの目的は売り上げだけなのか
垣内:また公式サイトの訪問分析をしてみると約7割が、2年間1度も訪問しなかった新規ユーザーであることがわかりました。これだけのファンビジネスの規模で新規が7割もいる原因は、調査の結果「他球団(特に阪神タイガース)のファン」でした。
鳥羽:確かに、阪神ファンも東京ドームの試合のチケットを買うために巨人のサイトに訪れます。チケット購入は外部サービスとつながっていて複雑になりがちなので、他球団ファンにとってもわかりやすいよう導線を整理しました。
垣内:最後に「グッズのECサイトの目的を、売り上げのみにするのはもったいない」という話にも触れさせていただければと思います。
鳥羽:熱狂的ファンや特定選手ファンは、新商品や在庫切れ商品のチェックを常に行います。ECサイトはそういったファンが必ず見に来るところなので、エンゲージメントを高める役割もあると考えています。
新しいグッズを出せばファンがサイトを訪問してくれるため、エンゲージメント向上だけでなくチケットの購入につなげられます。つまり、ジャイアンツのECサイトの目的はグッズ売り上げだけでなく、チケット購入につなげることにもあるのです。
垣内:他のビジネスでも同様に、「ECサイトの目的が売り上げではなく店舗への送客」というケースは多いのではないかと思います。このように、今一度自社の各種サイトの目的や役割を整理し、施策の効率化を図ることが重要だといえますね。