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第106号(2024年10月号)
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「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来

インサイトの解像度が一気に上がる。消費者の「欲望(Desire)」を軸にインサイトを発掘する方法

 ニーズよりも、さらに心の奥に潜んでいる「欲望」を可視化・体系化することを目指している電通の消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN(DDD)」。本連載では、その研究の過程で得られた発見と研究成果を紹介してもらっています。第2回では、DDDが定期的に行っている「心が動いた消費調査」を例に、欲望を軸に消費者インサイトを深掘りする方法の有効性を解説いただきました。

難易度の高い「消費者インサイトの発掘」に再現性をもたらす

 本連載の1回目では、「11の欲望」発見のプロセスとその結果についてお話ししました。今回は、マーケターの皆さんが常日頃あらゆる手を尽くして考えている「消費者インサイト」をテーマに、“欲望”という視点で消費者インサイトを捉えるヒントについてお話ししたいと思います。

11の欲望
11の欲望
11の欲望
11の欲望(クリックして拡大)

 消費者インサイトとは、顕在化されたニーズの奥にある潜在的ニーズの、さらに奥に存在する消費者の深層心理を解明することです。消費者本人が自分でも気づいていないような“ホンネ”であり、論理的に説明できない“何となくの感覚”といったところでしょうか。

 その人、その人の心情や感情に近い部分であるからこそ、インサイトの解明はとても難しいですよね。一介のマーケターとして、私もこれまでデプスインタビューやラダリング、エスノグラフィー、違背調査など、様々な手法で消費者の心のうちに分け入ろうとしてきました。

 そんな消費者の心の奥底にあるインサイトを見つける一つの手段として、私たちは「欲望」に着目。インサイト発掘の再現性を高めるために、欲望を可視化・定量化し、ある程度フレームワーク化することを目指しています。欲望は、無意識的に、かつ確実にその人の行動に影響を与えており、欲しい、買いたいといった消費行動においても、人を突き動かす原動力になっていると考えているからです。

 心の奥底で(今は達成されていないけれど)「何かをやってみたい」「こんなふうになりたいと」と思っている、人間の情動=欲望である。ならば、その「欲望」を明らかにすることは、まさにインサイトそのものなのではないでしょうか。

 一般的に、インサイトの発掘には、想像力や経験値など、ある種、職人技的な鍛錬が必要だと思われがちです。ですが、欲望を明らかにできれば、インサイトはより発見しやすくなり、またその解像度も一気に増すということになります。

定性調査から欲望に迫るには? 調査の特徴、行っている工夫

 我々が行っている消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN(DDD)」では、『心が動く消費調査』を定期的に行っています。この調査では、大量の定性情報を収集しており、パイロット版から合わせると、実に約15,000件もの消費者の生声が蓄積されています。

 調査の目的は、消費者の欲望を定量化すること。そこで、欲望が充足された消費体験を「心が動く消費」と定義し、論理的には語れない、または本人も気づかないインサイトの発見に役立つよう工夫を凝らしています。

 たとえば、「何を購入したのか?」「それをどうして買ったのか?」と質問しても、対象者が深層心理を語ってくれることはなかなかありません。そこで、『心が動く調査』では、「この1ヵ月間に、お金を払って買ったり/利用した体験で、心が満たされたり、テンションが上がったり、感動・刺激を受けたりなど、良い気分・気持ちが得られた買い物や消費体験はありましたか?」というように、購入したものの中から「心が動かされた商品やサービス」を聞いています。

 その上で、購入理由を直接的に聞くのではなく、『どんな気持ちや、どんな自分になりたくて、購入・利用しましたか。こんな気持ちや欲求が満たされたい、こんな自分になりたいと期待したなど、できるだけ詳しくお知らせください』と、心が動いた消費体験について自由に詳細に語ってもらうようにしています。これによって、対象者は進んで「自分語り」をして下さるようになりました。

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購買データからいきなり推察すると、インサイトを見誤ることも

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この記事の著者

大竹 徹太郎(オオタケ テツタロウ)

株式会社電通 ソリューションクリエーションセンター チーフ・ソリューション・ディレクター/電通デザイアデザインメンバー1992年電通入社以来、マーケティング部門に所属。流通、飲料、食品、自動車、家電、製薬、金融、化粧品など多岐にわたる企業のマーケティング戦略やプランニングに携わる。また、ヒット商品開...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/06 12:17 https://markezine.jp/article/detail/42221

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