タイパの反動?ストレス緩和市場の拡大に
高齢化が進む日本では、認知症予防対策としての「脳のパフォーマンス向上」への関心が一定のボリューム存在し、認知機能サポート市場(食品・飲料)も年々拡大傾向にあります。令和6年版高齢社会白書によれば、2025年の認知症有病者数は471.6万人という推計もあり、「脳のパフォーマンス向上」は今後も一定のニーズがある分野とされています。
一方、「脳パフォーマンス」とは別の文脈で「脳疲労」というキーワードが出現、「脳の休め方」に関する情報や書籍も多く見られるようになりました。「脳疲労」は、スマートフォンが普及し始めた2010年頃から、ゆるやかに関心が高まっているようです。

24時間スマホに常時接続できる時代、副業で土日も働いたり、移動時間・スキマ時間も無駄にせずにスキルアップする人が増え、“タイパ”を意識すればするほど、“脳”は常にフル回転で休む暇がないという状況が生まれた結果、「脳を休めたい」という意識が高まっているのではないか? その結果、「マインドフルネス」まではいかずとも、ぼーっとすることができるような効能「ぼーっとフルネス」を消費者は潜在的に求めているのではないかと、DDDでは考察しています。
「ぼーっとフルネス」に近い分野として、「気分・感情のコントロール」に関する意識も高まっています。Google社で「マインドフルネス」が研修として取り入れられたニュースは記憶に新しいですが、「アンガーマネジメント」がビジネスパーソンのスキルとして重要視されるなど、「気分・感情のコントロール」への関心は顕著になりました。
関連市場を見てみると、「ストレス緩和」についての市場は、サプリメント、食品・ドリンクともに拡大傾向で、特に食品・ドリンクは大きく伸長する予測です。
若者の間で定着している「チル」という言葉も「ぼーっとフルネス」に共通するところがあります。飲料では、日本コカ・コーラの「CHILL OUT」、伊藤園「お抹茶入り お~いお茶」サントリー「Chilling」などが好調です。
CBDについては、CBDオイルなど食品・飲料以外の分野も市場が広がっています。ちなみに、海外を見てみると、「アダプトゲン」や「ヌートロピック」といった物質を用いた飲料などが普及しており、この分野の可能性の大きさが伺えます。
ストレス緩和市場での頻出ワード
・CBD:「cannabidiol(カンナビジオール)」の略称でリラックス効果がある物質
・アダプトゲン:ストレスに対する適応力や抵抗力を高める天然化学物質(ハーブや生薬など)
・ヌートロピック:認知機能や記憶力を向上させる成分(合成と天然いずれもある)