ハルメク生きかた上手研究所所長の梅津順江氏が、「今どきシニアの消費行動」を読み解き、マーケティングのヒントを示す本連載。最終回となる今回は、「ファッション・美容」がテーマです。ハルメク生きかた上手研究所の調査によると、値上げ時代でもシニア女性のおしゃれ消費は縮小しておらず、重視するポイントが「きちんとして見えること」から「自分に合っていること」へと大きくシフトしていることがわかりました。なぜ、おしゃれに対する価値観が“他人基準”から“自分基準”へと変わったのか。その背景を読み解きます。
値上げ時代でも、おしゃれ消費は縮んでいない
値上げラッシュが止まらず、生活費の圧迫が続いています。では、40~80代女性のおしゃれ消費は縮小しているのでしょうか。「おしゃれは真っ先に削られる支出」と考える人も多いかもしれませんが、今回の調査からは、むしろそのイメージとは異なる実態が見えてきました。
40~80代女性のファッション・美容への月あたり支出は9,343円と、2年前と比べてもほぼ横ばいで、大きく落ち込みませんでした。シニアはおしゃれを諦めているわけではないことが分かります。
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ただし、中身は変化しています。象徴的なのが、おしゃれに対する価値観の転換です。
重視されるのは「きちんとしているか」よりも、「自分に合っているか」。シニアのおしゃれは、「他者に合わせる正解」から「自分や場に合わせる最適解」へと軸足を移しています。「きちんとして見えること」は2年前から18ポイント低下し、「場に合っていること」は13ポイント上昇しました。
これは単なる順位変動ではありません。「周囲に合わせ、社会的な正しさをなぞるもの」から、「自分自身やシーンに応じて調整するもの」へとシフトしたサインだといえるでしょう。
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おしゃれは“身だしなみ”から“感情調整”へ
その背景には、「自分のためにおしゃれをする」という意識の広がりがあります。おしゃれをする目的として自由記述に多く挙がったのは、「気分を上げる」「楽しい」「気持ちの切り替え」「自己満足」といった言葉です。つまり、おしゃれは単なる身だしなみではなく、自分の感情を整えるスイッチへと変わり始めているのです。
おしゃれ着の定義も興味深いものでした。「自信が持てる服」「自分らしさを表現できる服」「着心地が良い服」「自分が落ち着ける服」など、自分軸の言葉が中心です。また、「気持ちが明るくなる色を着たい」「好きな服を着ると背筋が伸びる」といった声も目立ちました。
“他人目線”より“自分との対話”を重視する姿勢が見えてきます。シニアにとっておしゃれは、若く見せるためだけのものではありません。気分を切り替えたり、自信を取り戻したり、自分らしく過ごすための“自己調整ツール”としての役割を強めていることがうかがえます。
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梅津 順江(ウメヅ ユキエ)
ハルメク 生きかた上手研究所 所長
2016年3月から現職。主に年間約900人のシニアを対象にインタビューや取材、ワークショップを行い、誌面づくり・商品開発・広告制作の糧になるインサイトをつかんでいる。時代や世代も捉えて、半歩先の未来も予測している。著書に「消費の主役は60代 シニア市場最前線」(同文舘出版)な...
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