見過ごされてきた「広告活動によるエネルギー消費」
デジタルサイネージ市場は世界的に拡大を続けている。駅、商業施設、空港、タクシー、ビル壁面。都市空間には無数のディスプレイが設置され、24時間に近い形で稼働している。
特にLEDビジョンは、高い輝度によって昼夜を問わず視認性を確保している。しかし当然ながら、その“明るさ”は大量の電力消費と引き換えだ。
ところが、このエネルギーコストはこれまでほとんど議論されてこなかった。企業は製造工程のCO2排出量には敏感になっている。サプライチェーンの可視化も進んでいる。一方で、「広告活動そのものがどれだけエネルギーを消費しているか」は、まだ十分に認識されていない。
広告は企業活動の“外側”にあるものとして扱われやすい。しかし実際には、巨大なLEDディスプレイを都市中で常時点灯させる行為は、決して小さくないエネルギー消費をともなう。しかも、デジタル広告は今後さらに増える。DOOH(Digital Out of Home)はプログラマティック化が進み、都市空間のあらゆる場所がメディア化されていく。つまり、広告が消費するエネルギー量も今後加速度的に増大していく可能性がある。
これまで私たちは、「広告は何を伝えるか」を議論してきた。しかしこれからは、「広告は何を消費するか」も同時に問われる時代に入る。
イタリアのエネルギー企業Plenitudeは、デジタル広告に“ダークモード”を導入する実証実験を開始した。LEDスクリーン上の広告を暗い配色へ切り替えることで、最大74%の電力消費削減を目指す取り組みだという。これは単なるデザイン変更ではない。広告のあり方そのものを問い直す試みである。
私たちはこれまで、「広告とは視認性を最大化するもの」と考えてきた。しかし、その視認性の裏側には膨大なエネルギー消費が存在している。Plenitudeの事例が示しているのは、広告もまた環境負荷を伴うインフラであるという事実だ。
