CTVの発展で課題となる2つの「断片化」
CTV広告への投資が今後も伸びていくことは、地上波の視聴率低下とストリーミング動画配信サービスの成長という市況からも明らかですが、一方で課題も存在しています。
その課題のキーワードは「断片化」です。
CTV広告市場の成長にともない、デマンドサイド(広告枠の買い付け・配信)、サプライサイド(広告枠の提供)双方で多数のプレーヤーが参入を始めています。
中でも、2022年に広告モデルを解禁したNetflixやDisney+を始め、複数のストリーミングプラットフォーマーが広告モデルを導入していくことが予想されており、この「S+AVOD化(※)」によってCTV広告の在庫は拡大すると同時に、分散していきます。
※定額モデルに広告モデルを追加し、低価格プランを提供すること。(S+AVOD…Subscription +Advertising Video On Demandの略。)
このような広告在庫の拡大が進むと、CTV広告の活用において2つの「断片化」の問題が発生します。
1つは「広告在庫管理の断片化」です。CTV広告でリーチを伸ばしたい広告主は、分散化した大量の広告在庫から適切な広告枠を選択する必要があります。そして、各プラットフォームのパフォーマンスを把握し、それぞれの規格に合わせて配信をコントロールすることが求められます。しかし、広告在庫が拡大すればするほど、それは困難になっていくのです。
2つ目は、「広告データの断片化」です。1つ目にもつながりますが、複数のプラットフォームをまたいで広告効果を測定することが難しくなっていきます。プラットフォームを横断してユーザーのトラッキングができないことや、評価指標の定義が異なることが背景にあります。
現状、国内におけるCTV広告のプラットフォーマーと言えば2つから3つに留まっており、広告在庫シェアもそれらに集中している状態です。今後、多くのプレーヤーが参入してくることで上記の問題が顕在化してくると考えられます。
プログラマティック化の流れは止まらない
断片化が進むほど、プログラマティック(データに基づき、プラットフォームを介して自動で行われる自動取引のこと)へのニーズは高まると考えられます。
プラットフォーマーの視点に立つと、S+AVOD化によってユーザーが増加すればするほど、広告在庫は増加し、これを収益化する動きが活発になります。SSP(Supply Side Platform)に接続し、広告在庫の流通先を広げる必要が出てきます。
また広告主の視点に立つと、CTVというデバイスを有効活用するために、プラットフォームを横断して適切なユーザーへ広告を届けたいというニーズは高まっていくでしょう。その結果、個別の買い付けではなくプログラマティック・バイイングを行う広告主は増えていくと考えられます。
これは、2010年代にWeb広告が辿った道筋と同じ構造です。メディアがロングテール化し、大量の広告在庫が生まれ、それらをネットワークとして一元管理するDSP(Demand Side Platform)が広告配信プラットフォームとして主流化したように、CTV広告でもプログラマティック化が加速していくはずです。
プログラマティック化の波が盛り上がると、いかにプラットフォームのアルゴリズムを理解し、効果的な広告運用ができるかが鍵になっていきます。品質スコアや学習期間に合わせた運用設計、適切なクリエイティブ開発、アドフラウド対策などが注目されるはずです。