利用者の半数以上がZ世代で、収益源の約9割が有料会員
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、Tinderについてご紹介いただけますか。
永野:2012年にアメリカで創業したTinder は、昨年9月に誕生から10周年を迎えました。世界190ヵ国、40以上の言語でアプリを提供しており、アプリのダウンロード数はグローバルで5.3億回を超えています。
Tinder ではユーザーのことを「メンバー」と呼んでいるのですが、現在、そのメンバーの50%以上をZ世代(18~25歳)が占めています。元々、Tinderは、メンバー同士の紹介や繋がりによって若者の間でオーガニックに広がり、現在に至っています。メンバーの大半をZ世代が占めているのにはそうした背景があり、実は我々が最初からZ世代をターゲットとして定めた結果ではありません。
ビジネス的な概況については、まず本社はアメリカにあり、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、ラテンアメリカと世界各地にオフィスを設けています。従業員数はグローバルで約800人(2023年2月時点)、2022年の収益は約18億ドルでした。Tinderを運営するMatchグループ全体の収益のうち95%はメンバーからの会費で、広告収入などの間接的収入は2%未満です。
MZ:収益源のほとんどが有料ユーザーなんですね。
永野:はい。Tinderでは、無料で利用できる「Tinder」に加え、Tinder Plus、Tinder Gold、Tinder Platinumの3種類の有料メンバーシップを提供しています。
MZ:この10年でTinderの使われ方に変化はありましたか?
永野:使われ方の変化というよりは、Tinderが世の中に受け入れてもらえるようになったという実感があります。特にコロナ禍によってTinderの受け入れが加速したように感じており、これは日本でも同様でした。「アプリやオンラインで、人と人が普通に出会う」という世界がいずれ来るだろうと考え、Tinderという一つのプラットフォームを提供してきましたが、コロナで時代の変化が早まった印象です。
出会いの形は人ぞれぞれ。Tinderが目指す「マッチング」とは
MZ:「Tinder=出会い系アプリ」というイメージも先行していますが、Tinderが言う「出会い」は必ずしも男女を対象にしたものではないと聞いています。
永野:そうです。元々、「出会い系サイト」と呼ばれるサービスが存在していたので、そのイメージで混同されることもあるのですが、Tinderはこうしたサービスとは異なります。
Tinderがなければ出会うことのなかった人たちと出会い、今まで知らなかった新しい価値観に触れることで、一人ひとりの可能性はもっと広がっていくのではないか。それによって、世界はより豊かになるのではないか。我々は、こうした考えのもとサービスを提供しています。つまり、Tinderにおける“マッチング”は、多様な価値観に触れるためのものであり、“男女の恋愛”という意味でのマッチングに限られたものではありません。
Tinderでの出会いやそこからの繋がり方にも、多様な形があってよいと考えています。もしかしたら友達になれるかもしれないし、もしかしたら全然違う形での付き合いになるかもしれない。その関係性は長期に及ぶものかもしれないし、短期的なものかもしれないし、もしかしたら一瞬の繋がりになるかもしれない。多様な人と出会い、多様な価値観に触れるというのは、そういうことだと考えています。