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「一言発想法」から学ぶ、ファンの心を動かす方法

「テコの原理」を使った体験設計 企業のイシで生活者のイヤを解決する

#靴のカロリー表示:allbirdsが仕掛けるファン化を促す体験

 このように、支点というメリットが生活者の気持ちに近いほど効率的かつ効果的になります。しかし、どんなに支点が生活者に近くても、力点での力がなければテコは動きません。この力こそが体験です。この体験の強さと、その力の強さを伝える支点の組み合わせによりファンになる気持ち(作用点)を大きく高められます

 そもそもこの体験自体が強くないと大きな効果を期待できません。そんな体験をつくる際に「一言」から発想することで大きな効果を生むことができます。allbirdsの事例から具体的に紐解いてみましょう。

 allbirdsでは、製品の販売までの工程全体で排出される二酸化炭素の量を示す「カーボンフットプリント」を表示し、これを「靴のカロリー表示」という体験にしてセットで販売をしています

画像を説明するテキストなくても可
靴のカロリー表示

 この一言の体験こそがallbirdsの本質的な活動をつくっていて、具体的に生活者に体験として新しい価値と意味を提供し、ファンになる気持ちを生み出しています。

 改めて図に落とし込んでみるとこうなります。支点(目的)の部分は、「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」です。この支点はブランドや商品・サービスによってイシ(パーパス)の濃さが異なります。allbirdsの場合は、商品・サービスの持つ意思が、大きな社会不安というイヤを包含しているためそのまま活用できます。

 そして、力点(体験)は「靴のカロリー表示」です。地球環境負荷を「靴のカロリー」と見立て、可視化することが、商品開発から提供までの体験設計の起点になっています。ここで再認識したいのは具体である力点の重要性です。この力点をつくる一言こそが具体的な体験を規定し、全ての設計における起点となります

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ファンになるポイントは、誰かに話したくなる体験

 今回のallbirdsの事例を物語視点でも分解してみましょう。

 物語視点で見る際に「ファンをつくる」上で効果的な物語かどうかを見極める方法があります。それは、生活者が、ブランドや商品について「じつは、〇〇なんだ」と人に話したくなるかどうかを確認することです。

 allbirdsも物語性が強い良い事例なので、当てはめてみると、

「じつは、ビジネスの力で気候変動を逆転する!と志している」

「じつは、全ての商品のカーボンフットプリントを表示している!」

とすることができます。

 この物語にできるものの特徴としては、パーパスに共感できる・ファクトがある・具体アクションが見える・評価がわかりやすい・独自の世界観がある、といった商品であることが多いです。

 こういった語りたくなる話材(ネタ)は、コト(コト付きのモノ)を売る時において非常に強い体験になります。

 そのため体験を設計する上では、パーパスと体験を行ったり来たりしながら、物語性があるか? このブランド「じつは、〇〇なんだ!」と話したくなる話材があるか? といった部分をチェックしながらプランニングを進めることが重要になります。

 今回は、テコの原理を使いながら、ファンの心を動かす体験設計について解説しました。次回の最終回では、1つの題材をベースに、発想〜設計のプロセスを解説していきます。

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この記事の著者

尾崎 徳行(オザキ ノリユキ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
1998年博報堂入社。以来、100を超える企業やブランドのブランディング、統合コミュニケーション、 商品・サービス開発などに従事。多様なクリエイティブ領域の経験を生かして、新しい体験価値の創造を実践している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

庄司 健一郎(ショウジ ケンイチロウ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 エクスペリエンスディレクター

2001年、大手ディスプレイ会社に入社。大規模イベントや商業施設の体験演出に携わる。
その後米国留学、外資系広告エージェンシー等を経て2019年より博報堂。
テクノロジーを活用した体験設計を得意と...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中島 優人(ナカジマ ユウト)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 エクスペリエンスプラナー
広告コミュニケーションの経験を活かしながら、生活者の思い出に残る体験づくりを目指す。公共空間、学習施設、アプリ、XRなどジャンルを問わず企画を行っている。
消費者が選んだ広告コンクール/Japan Brandin...

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/42305

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