「行動デザイン」で生活者とモノ・サービスの関わり方を発想する
前回の記事「4Pではなく4E? 体験価値を重視したフレームワークとこれからの視点」では、これまでの4Pフレームワークに代わる4Eの概念と、これまでにも説明してきた3つのレイヤーの体験価値においてメタファーがなぜ有効なのかを解説してきました。今回は、3つのレイヤーの体験をどのように発想していくのかを紐解いていきます。
まずは、「仕組み」の領域についてです。
仕組み領域は、行動メタファーを使用して発想する領域で、商品やサービス体験のコアの部分を発想する事業の根幹になる体験領域です。そんな仕組み領域を発想するためのアプローチである「行動デザイン」という考え方を紹介しながら、行動メタファーについて深掘りしていきます。
行動デザインとは、人とモノ・サービスは行動を介してつながっており、その間にある「行動」を考えることでよい関係性を発想するアプローチになります。この行動デザインを考える際には、ブランドと生活者は視線も立ち位置も違うことに注意しなければなりません。なぜなら、ブランドが持つパーパスや目的と、生活者の欲求やニーズが乖離してしまうためです。
それらを一致させるために行動までを見据えてパーパスなどに織り込むことが、今後のブランドづくりにとって大切な視点です。
では具体的にどのように行動デザインの考え方を、一言発想法に取り入れたら良いのでしょうか?
それは、体験を「動詞で考える」ことです。状態を言い表すのではなく、価値をイメージしやすい「行動を」言葉として添えることが重要です。例えば、京都や北海道などへの旅行商品があった時に、この旅行商品をモノ発想的に考えると「どこへいくか?=目的地」が軸になります。しかし、行動デザイン発想では、「何をするか?=そこで行う行為(動詞)」が軸になります。京都で舞妓さんになって写真を“撮る”、山の麓でロードバイクに“乗る”など、行動を軸にして動詞を入れると旅行商品が体験型の商品になります。
【事例】記事から株を買う:日興フロッギーから学ぶ、「行動デザイン」発想
動詞を一言に入れた事例としてSMBC日興証券が運営する日興フロッギー(記事から株を買える投資サービス)を紹介します。同サービスは、情報メディアと取引機能が一体化した投資サービスです。これは投資サービスを「記事から株を買う」と見立てており、動詞もしっかり活用した「行動メタファー」です。
このように、仕組みや体験を発想する時には、状態ではなく、その体験自体をイメージしやすい言葉として「行動メタファー」を添え、体験者の行動を「動詞」として言葉にすることが効果的な一言を作り出していきます。
さらに、「何を?」「誰が?」などの言葉との組み合わせが今までではないようなギャップのあるものになっているかが大きなポイントです。ここに意外性があるほど、新規性のある商品やサービスが生まれます。