小さなコミュニティの集合体 ライブコミュニケーションプラットフォームのPococha
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、これまでのキャリアや現在のご専門領域についてお話しください。
水田:大学3年生のときに起業してスマホアプリの開発を行っていました。その後、当時株主だったDeNAに新たなアプリを開発することを条件に事業の売却を行い、入社してから実際に開発したのが「Pococha」です。以来、現在まで6年間Pocochaのプロダクトオーナーとして従事してきました。開始当時は6人ほどだったメンバーも現在は200名を超え、私自身の役割も広がりました。プロダクト開発だけでなく、採用、ブランディング、グローバルでの組織づくりなど、事業部長としてトップマネジメントを担っています。
MZ:Pocochaの概要を教えてください。
水田:Pocochaは、ユーザー同士が雑談や応援を通じて関係性を深められる、スマホアプリベースのライブコミュニケーションプラットフォームです。2017年にローンチし、2023年3月時点で486万ダウンロードとなりました。
最大の特徴は、ユーザー同士が配信を通じて多数の小さなコミュニティをつくり、深いコミュニケーションを自発的に生み出している点です。
10人~20人程度のコミュニティが配信の度に生まれており、その数は日に1万~2万程度。日々の雑談とライバーへの応援を通じてファンとしての熱量を高め合っています。
配信ボタンを押すだけ 誰でも簡単に配信可能
MZ:現在では個人がライブ配信を行うカルチャーも浸透してきていると思いますが、ローンチ当時でPocochaに似ているサービスは無かったのでしょうか。
水田:6年前は、ライブストリーミング技術を活用したサービスがグローバルでいくつか出始めたタイミングでした。国内でもライブ配信と雑談を組み合わせたサービスはすでに多く存在し、「ニコニコ生放送」や「ツイキャス」など、PCでの利用をベースにサービスを開発・提供している企業は10年以上前からありました。Pocochaは、それをスマホネイティブにするという発想から生まれたサービスです。
水田:この時期は職業としてのインフルエンサーが盛り上がり始めていた頃でもあります。しかし、いわゆる“インフルエンサー”の枠組みに、先述した当時のライブ配信者はまだ含まれていませんでした。Pocochaはライブ配信で収入を得る「職業としてのライバー」を定義しようと、サービス設計をしました。
MZ:他のライブ配信プラットフォームとの違いはどのような点ですか。
水田:入り口のハードルが低いことです。これまでブロガー、YouTuber、インスタグラマー、TikTokerと様々な形態のインフルエンサーが生まれてきましたが、1本の記事や動画を投稿するためには企画から機材準備・撮影、編集まで何日も時間がかかってしまいます。一方で、Pocochaはスマホさえあれば、配信ボタンを押すだけでライバーとしての創作活動が始められます。
ユーザー間で日常的なあいさつが飛び交う
MZ:Pocochaではファンのエンゲージメントが非常に高いと伺いました。実際にそれを示すデータはありますか。
水田:ユーザー(2022年末時点でレベル10以上)の平均視聴時間は1日あたりで約2時間、コアユーザー(2022年末時点でレベル45以上)は3時間20分ほどとなっています。コメント数は1日あたり1,300万回投稿されています。
コメントの内容については、あいさつや共感する言葉が多く見られるのが特徴的です。「おはよう」「ただいま」「おかえり」「おやすみ」など、家族のようなやり取りが数多く投稿されています。これは他のSNSではあまり見られないやり取りで、Poocochaがユーザーにとってのサードプレイスとして親しまれていることがわかる結果になっていると思います。