PR従事者、広告代理店、事業主──3者ともにPR力を高めるべき
──日本企業の場合、その役割は誰が担うのがよいのでしょうか?
これまでPR業界人として人材育成には注力してきましたが、現状、その役回りができる人がニーズに対して圧倒的に足りていないというのは間違いないです。そんな中で、誰がPR視点を持ち込めばよいのかという問いに対しては、複数の回答があります。
まず、やはり一番には、今PR業界でPRに従事している人たちがスキルアップしなければなりません。現状、PR会社は人手が足りない企業の広報代理やメディア行脚をするに留まってしまっていることが多く、そこにはあまり戦略性がありません。戦略思考を持ち、高い精度でPRを行える人材を増やしていかなければと考えています。

次に挙げられるのは、広告代理店です。日本では広告代理店の力が強く、大きなマーケティングキャンペーンを組み立てるときは、中心に広告代理店がいることが多いですよね。つまり、統合マーケティングを仕切る立場にいることが多いのも彼らになります。広告の経験が長いと、なかなかPR視点を持つのは難しいものですが、最近はPR発想のあるクリエイターや広告プランナーも増えてきています。広告もわかるし、PRもわかるというストラテジストは貴重な存在です。これからもっと増えていくでしょうし、もっと活躍できるでしょう。
最後は、事業会社でマーケティングに従事している方々です。本来なら、統合マーケティングもキャンペーンも、ブランドマネージャーやマーケティングの責任者がコントロールすべきです。PRと広告が比較的バランスよく進んできたアメリカでは、両者を統合して考えるために、事業会社側でしっかりコントロールしているケースが多い。事業会社の中を変えていくのは時間がかかるでしょうが、最も重要なのはここです。外部の専門家の助けを借りながら、少しずつ変わっていくべきだと思います。
──最後に、読者へ一言メッセージをいただけますか。
PR会社、PR業界、PRパーソンと言われるように、PRは一つの業界であり、専門的な職業です。ただ、20年以上PRを専門にやってきて思うのは、PRというのは同時に一つの「リテラシー」でもあるということです。仕事でPRに従事している人だけがPRを極めればよいわけではありません。アメリカでは、法律家やファイナンスの専門家と同じレベルで、PRのプロフェッショナル性が広く社会に浸透していて、個人的には子供にもPRの教育をしたほうがよいと思っているくらいです。
マーケターはもちろん、スタートアップを含めた企業の経営者、広告代理店のプランナーやクリエイター、営業パーソンなど、多くのビジネスパーソンにとってPR=パブリックリレーションズは広く必要なリテラシーです。自分の視野を広げ、今ある能力をより発揮し、仕事をレベルアップさせる。そのために必要なリテラシーとして、PRを取り入れてほしいですね。