コスト回収を優先させる「マークアップ」戦略
24のフレームワークは、その特徴から図表3のようにマッピングができる。

図表3の横軸には「純粋」と「複合」という二つのカテゴリーがある。「純粋な価格戦略」は、商品の価格水準そのものを決める戦略なのに対し、「複合的な価格戦略」はブランディングやプロモーションといった、複数の要素を組み合わせた価格戦略のことを指す。
第3回ではまず、純粋な価格戦略の一つである「市場均衡型」の戦略を見る。このタイプには「マークアップ」「現行レート」「プライスリーダー追随法」「プライスカスタマイゼーション」「入札」「価格弾性値」「知覚価値価格」「ダイナミック・プライシング」があてはまる。
マークアップ
マークアップはコスト基準のフレームワークで、商品の原価に一定の利益率をかけて価格を設定する方法だ。マークアップをさらに細分化すると、利益を原価に加える「コストプラス」という方法と、目標とするROIを達成するために必要な金額を計算して原価に加える「ターゲットリターン法」が存在する。
マークアップに則ることで、コストを回収し利益を得ることはできる。だが、商品の価値や競争状況を考慮していないため、消費者に必ず受け入れられるとは限らない。マークアップは、販売者が強い交渉力を持つ寡占的な市場や公共サービスで主に使われることが多いほか、企業間における取引で、かつ予算上限が設定されないコンサルティングサービスやシステム開発などで一般的に使われている。
相場観の範疇で価格を設定する
現行レート
次に説明する現行レートは競争基準のフレームワークで、既に市場に存在する競合に合わせて価格を設定する方法だ。消費者の頭の中で、「この商品であればこのくらいの値段だろう」という一定の相場観がある商品などによく使われる。相場が形成されているという意味で「慣習価格」と呼ばれたりもする。
この戦略は、ガソリンスタンドの価格設定などによく見られ、「少しでも安いほうが良い」と考える消費者が多いため、相場とかけ離れた値段に設定しづらい特徴を持つ。

なお、相場観にはある程度の上下幅があることが特徴だ。その幅の中であれば、価格を上げても需要が下がりづらい。
たとえば、Yシャツ1枚のクリーニング代は意外と幅が広い。自宅の近くの競争環境にもよるが、150円でも200円でも需要に大差は生じにくい。この幅を過去の販売実績や顧客調査などから把握し、上限ぎりぎりに価格を設定することができれば、利益を増やすことができるだろう。
プライスリーダー追随法
これも競争基準のフレームワークだ。業界内または特定の商品のカテゴリーで高いシェアを占め、価格設定に大きな影響力を持つリーダー企業の価格に従って価格を設定する方法である。
リーダー企業は市場での存在感が強く、設定している価格に対して消費者の信頼を得ている。したがって、リーダー企業の価格帯に倣うことで、消費者は自社の商品が同等の品質であると認識し、安心感を得ることができるのだ。逆に、リーダー企業の存在感が圧倒的であるほど、大きな価格差を設けて販売することは難しくなるだろう。