プライシングにより、商品に独自性をもたらす
本連載の第2回では、マーケターがプライシングを実践するための第一歩は、持続可能な利益志向を経営者らに啓蒙することだと伝えた。
第3回では、価格戦略の策定に有効な24のフレームワークを紹介する。まず、価格設定には「範囲」があることを理解いただきたい。企業は利益を追求する組織であるため、「コスト(=原価)」が価格の下限となる。一方で、商品が持つ「価値」以上の金額を値段に設定すると、消費者からは受け入れられないだろう。そのため、その商品の価値に基づいた価格が上限となる。
そして、許容される価格の範囲内で、最終的に「●●円」と決まるまでには、競争相手や代替商品の存在が影響を及ぼす。たとえば、図表1のように、他の競争商品や代替品と比べて自社商品に独自の特徴がある場合には、価格は上限に近づく。一方で、独自性がない場合は、価格は下限に近づく。
つまり、独自性があって価値の高い商品は、価格を自由に決める範囲が広がるわけだ。この独自性は、決してプロダクトの独自性のみを意味するのではない。後述する価格決定基準や24のフレームワークという「プライシングの技法」を駆使することで、後天的に独自性をもたらすことができる。
3C分析と連動した四つの「価格決定基準」
価格を決定する基準(以下、価格決定基準)には「価値」「競争」「コスト」の三つがある。また、心理的な相場よりも高い価格では商品・サービスは売れづらくなるというものだ。そのため、広義には「消費者心理」を加えた四つの価格決定基準がある。
3C分析になぞらえると、価値基準の価格設定は顧客視点、競争基準の価格設定は競合視点、コスト基準の価格設定は自社視点と言い換えることができる。消費者心理基準の価格設定も顧客視点の一種にあたるといえる。以上を踏まえると、価格決定基準は4パターンで、図表2のように整理できる。
では次に、この四つの基準に紐づいた、価格戦略を策定する際に参考になる24のフレームワークを紹介しよう。