マーケティング理論を実践で活用するには?
今回紹介する書籍は『実施する順に解説!「マーケティング」実践講座』(日本実業出版社)。著者はSONYやサントリー、雪印などの商品開発や広告・販促キャンペーンを手掛け、「ノートパソコン」の名付け親でもある弓削徹氏です。現在は、大学でマーケティング論の授業を行う他、中小機構・中小企業アドバイザーなどを務められています。
マーケティング領域では、日々様々な知識・理論・フレームワークが提唱されています。
しかし、それらを断片的に学ぶだけでは、実際にそれぞれの企業が様々な状況で対面する「等身大の課題」の解決に活用するのは困難です。一方で知識や理論の土台なく経験や実践を重視した方針では、効率性や客観性に欠けたマーケティング施策にリソースを重ねるだけになってしまいます。
では、マーケティングの知識や理論を実践的なツールに変えていくためには、どのようにしたらいいのでしょうか。
マーケティング全体の流れをつかむ
本書で弓削氏は、マーケティング活動の大まかな流れをつかむことの重要性を説いています。初めに全体像を理解することで、デティールにこだわるあまり手段が目的化してしまう「木を見て森を見ず」な状態を避けることができるのです。
「マーケティング活動とは、終わることなくスパイラルに上昇しつづける連環のようなもの」と弓削氏は表現し、一連の流れを以下のように示しました。
フレームワークを使い「マーケティング活動の山」を登る
全体の流れを理解することができた後に、「事業全体の戦略」と「マーケティング活動の目的」を明確化し、各フェーズの戦略やより細かな戦術を練っていくことが必要です。その中で、様々な理論やフレームワークを活用していきます。
自社分析・顧客分析・市場分析など、課題やフェーズに合ったフレームワークを活用することで、マーケティング活動を有利に進めることができると弓削氏。商材やビジネスモデルによって多少の変動はあるものの、最適な活用ができれば大きな失敗のリスクを減らすことができるのが、フレームワークの価値であるといいます。
弓削氏はフレームワークの使いどころを、登山に例えて解説しました。「社会環境や市場などの外部」の登山道ではPEST分析(Politics:政治・法律的要因、Economics:経済的要因、Society:社会・文化的要因、Technology:技術的要因)や3C分析など、「自社」の登山道ではSWOT分析やSTP分析などが挙げられます。マーケティング活動の山を登りながら、やがて2つの道は合流。販路開拓を行い、ビジネスの成功である頂上を目指していくのだと語りました。
さらに本書では、マーケティング戦略の設定から商品・事業の企画開発、市場調査、プロモーション、販売、ブランドや企業価値の向上までの一連の流れを、順を追ってそれぞれ解説。マーケティング活動における全体の流れを捉えつつ、各フェーズで何をすべきかがわかる一冊となっています。
知識やフレームワークをどこでどう使うべきか迷っている方、明日から実務で活用できるマーケティング書籍を探している方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。