AI導入を加速させ、新たなステージへ進むZoom
キーノートセッションでは、ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘有氏が登壇。新たに掲げたビジョン「One Platform delivering limitless human connection(ひとつのプラットフォームが世界を変える 無限に広がる人とのつながり)」を挙げ、同社の取り組みを紹介した。
下垣氏はまず、昨今急速に普及し話題となっているAIの取り組みについて言及。Zoom が掲げている「Federated(適合する)」「Empowering(エンパワーメント)」「Responsible(責任感)」の3つのキーワードを説明した。特に「Federated」のアプローチでは、ChatGPTに代表されるOpen AIだけではなく、世界で先駆的にAIを実装したAnthropicとのコラボレーションも実現。顧客のインフラ上で、ZoomのAI機能を自由に組み合わせることもできるという。
下垣氏はZoomのAI基盤である「Zoom IQ」が進化することによって、ハイブリッドワークの生産性向上、人と人のつながりの強化、満足度の高い顧客体験(CX)の3つが実現できるとした。
「Zoomの始まりは社内会議と思われがちですが、国民一人ひとりの生活の身近に存在しています。国民のほとんどがZoomを経験されているがゆえに、社会のプラットフォームになるためにもAIを組み込んでいきたいと考えています」(下垣氏)
2023年7月6日にはオムニチャネルで顧客の問い合わせに対応できる「Zoom Contact Center」をローンチ。続いて、会話型AIチャットボット「Zoom Virtual Agent」の提供も開始した。コールセンターへの負担軽減と顧客支援の質の向上を図ることができ、Zoom Contact Centerと合わせての利用はもちろん、単体のソリューションとしても導入可能だ。
下垣氏は「Zoomは新しいステージに踏み出している」と述べ、次のように意気込みを語った。
「『使いやすくて、つながりやすく、切れにくい』というコンセプトはZoomの、どの機能・サービスにおいても共通です。我々はマーケットを大きく変えられると本気で考え、引き続き『Delivering Happiness(すべての人に幸せを届ける)』をカルチャーとして取り組んでまいります」(下垣氏)
優れた顧客体験を構築する6つの要素
次に、Zoom Video Communicationsよりセールス・GTM 責任者のスコット・ブラウン氏が登壇。ビデオコミュニケーションで変革する顧客体験(CX)と従業員体験(EX)の重要性を述べた。
ブラウン氏は、「EXの向上と生産性の高いサービスによるCXは非常に重要」だと強調。前述のZoom Virtual Agentは、海外ではローンチされており、既に約500もの顧客が活用しているという。こうした実績をふまえてブラウン氏は、「Zoomは一貫性を持って人のつながりを実現し、さらなるサービスのパーソナライゼーションと自動化を目指していく」と意気込みを語った。
Zoom Video CommunicationsでAPJ カスタマーエクスペリエンス部門の責任者を務めるフィリップ・ザミット氏は、Zoomが実現するCXとEXに関して解説した。
昨今はデジタルチャネル利用意向が高まるなど、市場と顧客の期待値も変わっている。このように目まぐるしく状況が変化していく中で、いかにCXを向上していけるかが大きなテーマだ。
ザミット氏はKPMGコンサルティングの「グローバルカスタマーエクスペリエンスエクセレンス(CEE)レポート2022」から、優れたCXを構築する6要素を紹介。その中で、顧客を知り適切な対応をする「パーソナライズ」、スムーズなカスタマー体験といった「利便性」、顧客に寄り添う「親密性」の3つに注目した。加えて、CX向上と生産性向上のためにはEXも切り離して考えるべきでないと述べた。
CXとEXのトータルな体験を、Zoomは1つのプラットフォームで提供できるとザミット氏は強調した。そこで必要となってくるのが、先ほど下垣氏が述べたZoom Contact Centerだ。
Zoom Contact Centerでは、顧客対応のオムニチャネル化やビデオ通話をベースとした各チャネルの最適化を実現。適切なタイミングでパーソナライズな体験を提供できるほか、チャネルが変わっても対応が途切れることなく、スムーズに顧客はサポートを受けられるのだ。
AIで変わる顧客対応、直近のトレンドは?
パートナーセッションでは、まずKDDIエボルバ 企画統括本部 副統括本部長 白川始氏が登壇。コールセンター代理業務を行う同社で、現場の最前線を見てきた視点から、AIを活用したツールでどのような変化が出てきたのかを紹介した。
コンタクトセンターのニーズとしては「コストの抑制」「顧客応対チャネル拡充による顧客体験の向上」「販売手法高度化による売り上げの拡大」がある。中でも電話からWebへの顧客誘導など、テクノロジーを活用することが昨今のトレンドだ。
白川氏はコロナ禍で盛況となったEC分野のトレンドについても掘り下げた。「ボイスボット(AI音声自動応答)」による顧客応対の自動化は、電話のサポートが必要な顧客への対応を、最小コストでカバーするために導入が進んでいる。
「ビデオ商談」は、画面を通じて製品やサービスを実演できることで、アップセルにつながりやすくなる。「リモートサポート」も、修理の事前問診など電話だけでは理解しにくい部分が多々あり、顧客のストレスにつながっていた。しかしビデオ通話を利用したテクニカルサポートをすることで意思疎通がしやすくなり、工数削減につながっている。
約7割がスムーズな顧客体験を提供するブランドを重視
同イベントでは、Zendesk社長の冨永 健氏も登壇した。同社は2007年にコペンハーゲンで創業した、カスタマーサービスソリューションを展開するSaaSのベンダーだ。
同社の調査によると、消費者の約7割が「スムーズな顧客体験を提供するブランドを優先で利用したい」と回答。また、52%が「たった1度でも不愉快な思いをしたら他社に乗り換える」と答えた。
「お客様が求めるのは『好きなツールを使って、好きなタイミングでコミュニケーションできる』体験です。お客様が利用するあらゆるチャネルを用意し、スムーズにコミュニケーションできること。またAIがオペレーターの仕事を奪うのではなく、提案する立ち位置でAI導入することで生産性を上げ、より丁寧なカスタマーサービスが達成できると考えます」(冨永氏)
CRMとの連携も!AI基盤のプラットフォーム「Zoom IQ」とは
技術セッションでは、サービス開発者らによるZoomの最新テクノロジーを紹介。AI基盤のプラットフォーム「Zoom IQ」について、ZVC JAPAN 技術営業部 ソリューションズエンジニア 面谷修平氏から詳しい説明がなされた。
同プラットフォームは、2022年の4月から商談のレコーディングデータを文字起こし・分析するサービス「IQ for Sales」を皮切りに、北米を中心にローンチしている。
「IQ for Sales が話題の切り替わりのタイミングにチャプターを設定して、チャプターごとの議事録を作成してくれるため、関係者間のキャッチアップの効率化につながります。参加者の話していた割合やスピードなどの統計情報も提供できるのがポイントです。現在はベータ版のご利用が可能となっており、日本語の精度をより向上させて正式にリリースをさせていただく予定ですのでぜひご期待ください」(面谷氏)
またCRMと連携し、IQ for Salesが作った議事録をCRM上で確認することも可能だ。営業のリーダーは、複数の担当者によるデータをレポートとして横断的に確認することができる。
今後は、通常のZoom MeetingsやZoom Team Chat、Eメール、ホワイトボードといった様々なサービス内で利用可能な Zoom IQ の機能をリリースしていく予定だ。「Zoom IQがグループチャットの概要を説明する機能やカレンダーサービスと連携し、チームメンバーの最適なスケジュール提案など、様々なコラボレーションを行っていく予定である」と面谷氏。日本でも英語版のトライアルは開始しており、本格導入が待たれる。
オンラインイベントも1プラットフォームで実現
最後にZVC JAPAN 技術営業部の安田氏が、オンラインイベントを管理する方法について、「Zoom Events」の特徴も交えて解説した。
「オンラインイベントを管理する方法として、複数のプラットフォームを調整することは簡単ではありません。Zoom Eventsでは、準備の簡易化からイベントクオリティの向上、そしてイベント後のコミュニケーション、効果測定までを1つのプラットフォームで提供。そのため、運用の手間を大幅に省ける点が特徴です」(安田氏)
たとえば「カンファレンス ロビー機能」では、参加者がリアル同様にイベント前やイベント中にコミュニケーションがとれる場を提供している。また「セッション チャット機能」は、セッションの前後や最中に参加者がチャットでトピックに関してやり取りすることが可能だ。他にも、ワンクリックでステージ画面と楽屋画面を移動できる「バックステージ機能」や、事前録画の配信設定といった人的リソースをコントロールできる機能も利用できる。
ステークホルダーとのコミュニケーション方法が多様化した今、AIの活用はより良質で精度の高いコミュニケーションの実現に必要不可欠となるだろう。Zoomのもつ新たなテクノロジーとともに、次世代のCXおよびEXを考えていくべき時だといえる。
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Zoomを活用し、さらなるCX・EX向上のヒントを知りたい方はぜひご覧ください。