SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来

心が動く消費調査から見えてきた「自分らしさ」の今 ビューティテックで加速するパーソナライズ欲求の背景

著しい進化を見せている、最新のビューティテック

 ここ数年、世界の美容業界ではビューティテックの進化にともない、「ハイパーパーソナライゼーション」というキーワードがトレンドになっています。遺伝子や顔立ち、肌色、肌質、また好みに合わせて、個人に最適な化粧品を提供する技術・サービスが日々開発されているのです。ビューティテックは、2026年には世界で14億ドル規模に成長すると言われている分野で、CES(Consumer Electronics Show)などの見本市でも最新技術やサービスに毎年注目が集まっています。

 たとえば、遺伝子解析でいうと、花王の「スキンポテンシャルアナリシス」では、あぶら取りフィルムを使って採取した顔の皮脂からDNAを抽出し、肌内部に存在する将来のリスクを予測、加えて角層を赤外分光測定器で測定し、分子レベルで解析するサービスが提供されています。資生堂の「Beauty DNA Program」にも、唾液DNAから生まれ持った肌の特徴を明らかにするサービスがあります。

2023年7月からスタートした資生堂の「Beauty DNA Program」。SHISEIDO THE STOREおよび化粧品専門店の一部店舗で、9月以降にはデパートの一部店舗で本格展開される。価格は税込12,000円、画像は検査結果のイメージ
2023年7月からスタートした資生堂の「Beauty DNA Program」。SHISEIDO THE STOREおよび化粧品専門店の一部店舗で、9月以降にはデパートの一部店舗で本格展開される。価格は税込12,000円、画像は検査結果のイメージ

 メイクの分野では、ARを活用したバーチャルメイクアップの技術やサービス開発が進んでいます。例を挙げると、コーセーでは、高速プロジェクションマッピングを用いて、3Dのリアルな顔面にバーチャルメイクができるシステムが開発されています。

ロレアル公式YouTubeチャンネルより。Maison KOSÉ銀座にてビューティアトラクションとして展開しているメイクシミュレーター「COLOR MACHINE」

 また、ロレアルでは、肌状態と温度・湿度などから計算された最適なスキンケア、好きな色のリキッドリップを自宅で調合して作ることができるホームデバイス「Perso Skin」が開発されています。スマホで作りたいリキッドリップの色を細かく選択することができ、ドレスやシューズの色とコーディネートした色を調合することも可能なのだそうです。

ロレアル公式YouTubeチャンネルより「Perso Skin」紹介動画。「Perso Skin」は2020年のCESで紹介されていた

 さらに、カネボウKATEの「KATE MAKEUP LAB.」など、AIを活用して自分の顔のパーツ比率など細かい特徴を測定できるサービスや、顔型診断アプリなど、日本でも身近に使用できるサービスが続々と登場しています。

2021年にカネボウが開設したLINE公式アカウント内サービス「KATE MAKEUP LAB.」
2021年にカネボウが開設したLINE公式アカウント内サービス「KATE MAKEUP LAB.」

これからのビューティは、セルフメイド&マルチトレンドに

 化粧品のカテゴリでは、「“理想の女性像”を提示して商品を売る」という王道のアプローチがありましたが、「自分に似合うこと」が求められている現代では、「理想の女性像」は必ずしも必要でなくなる可能性があります。最後に2つのキーワードを挙げて、結びたいと思います。

1.未来に消費者が求める美は「Self-Made Beauty」

 メディアが提案したロールモデルを目指したり真似したりする必要はなく、自分が持っている固有の「肌」「形」に合わせたベストバージョンを作り上げる“プロセス”がこれからは重視されるようになると思われます。テクノロジーの恩恵により、自分がなり得るベストバージョンを発見し、創造することがより求められるようになっていくでしょう。

 そうして生活者は、「あのモデルのようにならなければいけない」といった従来の既成概念や押し付けの脅迫感から解放されていくのかもしれません。

2.未来のビューティトレンドは「Multi-Trend Beauty」

 とはいえ、ビューティのカテゴリに、ロールモデルがまったくいなくなるということにはなり得ません。どの雑誌を見ても同じような顔をしたモデルが載っている時代は終わり、世界のあらゆる場所・メディア上で同時多発的に次から次へと様々なスタイルのビューティトレンドが生まれる。トラディショナルなビューティも、瞬時に流行するSNSやメタバース上のビューティも、その日の気分で自由に選択できる「マルチトレンドビューティ」の時代が来ているのではないかと、筆者は考察しています。

第5回 電通「心が動く消費調査」調査概要

・調査目的:変化し続ける社会環境により可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:20~74歳
・サンプル数:3,000サンプル(20~70代の6区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け。70代は70~74歳まで)
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:
パイロット調査:2021年5月18~21日
第1回調査 2021年9月3~6日
第2回調査 2021年12月16~19日
第3回調査 2022年5月12~15日
第4回調査 2022年11月2~7日
第5回調査 2023年5月10~15日
・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

小野 江理子(オノ エリコ)

株式会社 電通 ソリューションクリエーションセンター 未来インサイト部 未来事業創研所属 未来予測支援ラボ所属 
女性向けFMCG・耐久財・外食チェーンのブランディング・コミュニケーション戦略、グローバル領域のナレッジ開発業務を経験。現在は、電通未来事業創研メンバーとして2040~2050年の未来のマクロトレンド研究や、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/09/06 12:17 https://markezine.jp/article/detail/42892

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング