規制強化にまつわる対応。各社の取り組みは?
高橋(サントリーウエルネス):次のトピックは、各種の規制対応についてです。サードパーティCookieや媒体ごとの独自規制、法的な表現規制、さらにステマ規制への対応も迫られる中で各社のモラルが問われる時代になってきました。これらの規制対応や考え方をお話しください。
細川(カゴメ):規制の対応に関しては、最終決定の前にブレーキを踏む専門部門があります。それに加え、リアルタイムな環境変化や適切な対応方法などはチームでもアンテナを張って社内ルールを作っています。一方で規模の大きな企業だと、コンプライアンスチェックの観点や社内の説得すべき部門の多さやブレーキの強さから、逆に新しいことや特異なことをやりづらい状態になってきている面もあります。
兒嶋(Minimal):我々のようなベンチャー企業の場合は法律関連などの専門部門や担当者もおらず、実際に現場で回すチームでの知識や倫理感の影響が大きいです。たとえばこのキャンペーンは景表法に引っかからないか? といった観点からチェックができる知識を担当チームは持つ義務があると思っています。
吉野(アンカー・ジャパン):リーガル部門がある場合も、すべての部門や領域の法規制の細かい部分まで常にチェックできるわけではありません。現場で見つけて対応することに加え、世の中で話題になった事例を社内共有することで注意喚起しています。
高橋(サントリーウエルネス):法令遵守や規制対応を行う守りの部分と、問題ない範囲で踏み込んだ試みをする攻めの部分、この境目の判断が難しいところですよね。たとえば家族に見せられるのか、恥ずかしくないのかを常に自身に問いかけることで、コンプレックスを刺激する表現や逸脱表現などは、ある程度線引きできると感じています。

AI時代の、人の介在価値を考える
高橋(サントリーウエルネス):最後は、人の介在価値について伺っていきます。ChatGPTを筆頭に急速にAIの活用が進んでいる昨今、人の介在する価値は変わっています。それについて、皆さんのご意見はいかがでしょうか。
兒嶋(Minimal):広告や記事制作へのAI活用は、今後もっと質が上がりおもしろいものができるようになるでしょう。その時、人間のバリューがどこに出てくるかというと、事業の方向付けやコンテンツが自分たちの方向性に沿ったものなのかを判断するスキル、それを施策に落としていく意思決定スキルだと見ています。
吉野(アンカー・ジャパン):企業というのは、人の集合体です。携わる一人ひとりの色が、施策やアイデアなどに反映され、決裁などを経て最終的に会社のブランドとして世の中に出ていきます。ですから、企業の内部の人がどういう発想をし、どういう形でお客様に向き合っているかが、最終的に企業としての見え方につながってくるのです。こういった組織という観点も、人の介在価値なのではないでしょうか。
細川(カゴメ):いかに企業やブランドの色を作っていくかという考え方が、最近話題に上がるパーパスやビジョン、ミッションなどの策定につながると感じます。そうやって定義することで規範や雰囲気を定め浸透させていく組織作りに、近年は目が向けられるようになっていますね。